人材開発・教育

2024.08.20

リカレント教育とは? リカレント教育のメリットや導入のポイント、企業の導入事例などを紹介

  • #リカレント
リカレント教育とは? リカレント教育のメリットや導入のポイント、企業の導入事例などを紹介

ビジネス環境が急速に変化する中、企業は競争力を維持し、成長するために社員のスキルアップが欠かせません。そこで昨今、社員のスキル習得や企業の生産性を向上させる手段として、「リカレント教育」が注目されています。

この記事ではリカレント教育の効果や導入のために大切なポイントなどについて紹介します。

リカレント教育とは?

リカレント教育とは、社会人が新たな知識やスキルを習得するために学び直すことを指します。一度仕事から離れ、大学や専門学校などで学び直すことが一般的ですが、昨今では退職や休職をせず、働きながらリカレント教育を実践する事例も増えてきています。

リスキリングとの違い

リカレント教育と似た考え方に「リスキリング」があります。リカレント教育とリスキリングは、どちらも社会人の学び直しを促進するものですが、目的や方法に違いがあります。

まず、リカレント教育は、個人が自己啓発やキャリアアップのために自主的に学び直すことを指します。つまり、個人の人生を豊かにすることが目的となります。一方でリスキリングは、企業が主導となって、自社の社員に職務に関する新しいスキルや知識を習得してもらうことを指します。

リカレント教育が注目されている背景

キャリアアップや再就職を目指す人々にとって、リカレント教育は重要な役割を果たしています。以下に、リカレント教育が注目されるようになった背景を3つ紹介します。

  • 労働市場の変化
  • 技術革新
  • 少子高齢化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

労働市場の変化

従来の終身雇用制度が崩壊し、転職が一般的になっています。これに伴い、労働者は新たなスキルを習得してキャリアを再構築する必要があります。多くの人々がキャリアアップや新しい職業への転換を目指し、再教育の重要性が増しています。

技術革新

急速な技術革新によって、労働市場におけるスキルの需要が変化しています。企業は、AIのような最新技術に対応できる人材を求めており、これに応えるために社員の学び直しが求められるようになりました。

少子高齢化

日本では少子高齢化が進んでおり、労働力人口が減少しています。企業においては今後、労働者人口の減少によりスキルを持った人材の確保が難しくなることが予想されており、社員の学び直しによって自社内の保有スキルをどう拡張していくかが重要と考えられています。

これらの要因が重なり、リカレント教育は社員と企業の両方にとって重要な取り組みとなっており、注目が集まっています。

参照:グロービス経営大学院

リカレント教育のメリット

リカレント教育の導入は、企業と社員の双方にとって多くのメリットをもたらします。以下に、リカレント教育の実施によって期待できる効果を、企業と社員の視点から2つずつ紹介します。

企業のメリット

【競争力の強化】

技術革新や市場の変化に対応できる人材を育成することで、企業の競争力を維持・向上させることができます。また、多様なスキルや経験を持つ社員が増えることで、新しい視点やアイデアが生まれやすくなります。たとえば、異なる分野の知識を持つ社員同士がコラボレーションすることで、革新的な商品やプロジェクトが生まれることが期待できます。

【社員のモチベーションアップ】

キャリア形成を支援することで、社員のモチベーションやエンゲージメントが高まり、離職率の低減につながります。また、スキルアップの機会を設けることで、社員は長期的なキャリアプランを描きやすくなります。

社員のメリット

【職業の安定性】

時代の変化に対応できるスキルを持つことで、職業の安定性が高まります。たとえば、AIや自動化技術に対応できるスキルを持つことで、キャリアアップが期待できるとともに、将来的にも職を失うリスクが減ります。

【自己実現】

学び直しを通じて、自分の興味や関心に応じたキャリアを追求できるため、仕事に対する満足度が高まります。たとえば、趣味が仕事と結びつくことで、より充実した職業生活を送ることができるようになることが期待されます。

このように、リカレント教育は企業と社員の双方にとってメリットをもたらし、長期的な成長と発展を支える重要な取り組みと言えます。

政府による支援

厚生労働省が経済産業省・文部科学省等と連携し、リカレント教育を積極的に推進しています。政府によるリカレント教育の支援には、以下のようなものがあります。

教育訓練給付金制度:特定の教育訓練を受講・修了した場合、教育訓練経費の20%~70%を給付。

高等職業訓練促進給付金:ひとり親家庭の親が特定の資格取得を目指す場合、月10万円を支給。

キャリアコンサルティング:キャリアコンサルタントに無料で相談できるサービス。

公的職業訓練:各都道府県の職業能力開発施設で、無料または低額で職業訓練を実施。

人材開発支援助成金:企業が社員に対して行う教育訓練の費用を助成。

上記以外にも、文部科学省の提供する「マナパス」というポータルサイトがあります。マナパスは、社会人の学び直しを支援するためのサイトです。ここでは大学や専門学校など約5,000の講座情報が公開されており、分野や資格、受講形式(土日・夜間、オンライン)などの条件で検索ができます。また、費用支援やキャリア形成に役立つ情報も充実しており、目的に応じた講座を見つけやすくなっています。

参照:厚生労働省

リカレント教育導入におけるポイント

仕事をしながらスキルアップをすることは、社員にとって大きな負担となります。そのためリカレント教育を導入するためには、企業による制度の整備が求められます。以下に、リカレント教育を導入する上で意識するポイントを3つ紹介します。

  • 柔軟な働き方を支援
  • 教育プログラムの整備
  • 評価への反映

それぞれ詳しく見ていきましょう。

柔軟な働き方を支援

リカレント教育を導入するにあたり、企業は社員が働きながら学びの時間を確保できる仕組みを整える必要があります。たとえば、フレキシブルな勤務制度やオンライン学習の推進などが考えられます。また、長期休職が可能な制度や経済的支援を行い、復職時にはカウンセリングやトレーニングプログラムでスムーズな復帰を支援します。

教育プログラムの整備

学習の機会を設けると同時に、教育プログラムの整備も求められます。企業は自社の業務内容や将来のビジョンに基づき、必要とされるスキルや知識を特定します。教育プログラムにおいて、すべてを自社で完結させる必要はなく、外部の教育機関やオンラインプラットフォームと協力し、eラーニングなども用いてスキルを学べる環境を整えていくことも有効です。

評価への反映

社員がリカレント教育を通じて得たスキルや知識を評価システムに組み込むことも大切です。社員が新たに習得したスキルが具体的な業務成果として反映されることで、社員の学習へのモチベーションとなります。企業は学習成果を基にキャリアパスを明確にし、社員の成長を促進します。また、教育プログラムの進捗確認やフィードバックを行い、学習の効果を実務に結び付ける仕組みを整えることが重要です。

リカレント教育を導入するにあたり、企業の戦略的な計画とサポート体制の整備が不可欠です。上記の制度を複合的に用いて、社員の自主的な学習を促進させましょう。

リカレント教育の導入事例

日本国内でも大手企業を中心に、社員のスキルアップやキャリア開発を支援するための教育プログラムを導入し、リカレント教育に力を入れる動きが見られます。以下に、3社の取り組みについて紹介します。

  • キヤノン
  • ソニー
  • SCSK

それぞれ詳しく見ていきましょう。

キヤノンの場合

キヤノンは、知識・能力・技術レベルに応じた多彩な教育プログラムを通じて、社員のスキルアップのサポートを行っています。その一つが「プロダクショントレーニー制度」です。この制度では、新卒の事務系社員や経営工学系社員に対して、生産管理、調達、工場経理などの研修を行っています。また、デジタル関連のスキルアップのために、クラウドAIやプログラミング言語の講座を提供しています。さらに、終業後や週末にeラーニングで学ぶことができる環境を整えています。

参照:キヤノン

ソニーの場合

ソニーの「フレキシブルキャリア休職制度」は、社員が社外で経験を積むための休職制度です。たとえば、配偶者の海外赴任や留学に同行する場合に、最大5年間の休職が可能です。また、仕事に役立つスキルを身につけるための国内外での修学にも最長2年間の休職が認められ、初期費用は会社が最大50万円まで補助します。休職中も社会保険料は会社が負担します。

参照:CHANTO WEB

SCSKの場合

SCSKでは、リーダーシップ開発、専門能力の強化、キャリア開発に重点を置いて、社員の育成に力を入れています。具体的には、マネジメントスキル向上のためのリーダーシップトレーニング、技術や知識を深めるための専門教育プログラム、そして社員のキャリア形成を支援するための総合的なキャリア開発制度が整備されています。このアプローチにより、社員の成長と組織の競争力向上を図っています。

参照:SCSK

まとめ

リカレント教育は、個人が人生を豊かにすることを目的として、自己啓発やキャリアアップのために自主的に学び直すことを指します。これにより、企業は競争力を高め、社員はキャリアアップの機会を得ることができます。企業は戦略的な計画とサポート体制を整えることで、社員の学びを業務に生かし、企業全体の生産性を向上させることが可能となるでしょう。

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