人材採用
2024.08.29
2030年問題とは? 企業への影響や労働力不足にむけて実施しておくべき対策を紹介
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2030年問題とは、日本が直面する少子高齢化と、それに伴う様々な社会問題の総称です。2030年問題は、日本に様々な社会的・経済的危機を及ぼすと予想されています。とくに企業活動や国全体の経済に深刻な影響を与えると予想されており、今から適切な対策を講じることが求められています。
この記事では、2030年問題の詳細やその背景、企業が取るべき対策について詳しく紹介します。
2030年問題とは?
少子高齢化の進む日本では、2030年、800万人におよぶ団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)が50代後半から60代に達することで、大量退職が予想されています。また、少子高齢化により2030年には、生産年齢人口(15~64歳)が2020年の約7500万人から約6700万人に減少する見込みです。
このような深刻な人口構造の変化に伴う様々な社会課題を「2030年問題」と呼びます。2030年問題において、特に懸念されているのが労働力不足です。内閣府が発表した「令和5年版高齢社会白書」によれば、減少傾向にある総人口の中でも、とくに生産年齢人口(15~64歳)の減少が目立っています。
このまま高齢化が進めば、労働人口の減少により生産活動が制約され、経済成長率やGDPが低迷することが予想されます。また、少子高齢化に伴い、社会保険料の負担が増加し、介護や医療の経費も増加します。これにより労働者一人あたりの社会保険料負担が増大することが予想されます。
2030年問題による企業への影響
2030年問題は企業にも、多方面で影響を及ぼします。中でも深刻なのが労働力不足が及ぼす影響です。以下に、労働力不足が及ぼす悪影響を3つ紹介します。
- 生産性の低下
- 人件費の増加
- 離職率の増加
それぞれ詳しく見ていきましょう。
生産性の低下
労働力が不足すると、一人当たりの労働負担が増加し、納期の遅延や品質の低下が発生、顧客満足度が低下することがあります。とくに製造業や建設業では、必要な人手が確保できないために生産ラインが停止したり、建設プロジェクトが遅延したりすることが予想されます。その結果として、会社全体の生産性が低下してしまいます。
人件費の増加
労働力不足により採用競争の激化が進み、企業は人材を確保するために賃金を引き上げる必要に迫られます。採用コストや人件費の増加は、経営コストを圧迫し、企業の成長機会を制約するリスクがあります。新しいプロジェクトや事業の拡大が計画されていても、実現が困難になることがあります。
離職率の増加
人手不足により、一人当たりの業務量が増加し、社員の疲弊やストレスが増大します。これにより、離職率が高まり、さらなる人手不足を招く悪循環が生じます。現時点でも、医療・介護業界では、過重労働が原因で多くの社員が離職し、新たな人材確保が困難になることで、サービスの質が低下する問題が深刻化しています。
2030年問題以外の社会問題
2030年問題以外にも、いくつかのタイミングで起き得る社会問題が予想されています。どれも少子高齢化による影響で引き起こされる問題です。以下に、代表的なものを3つ紹介します。
2025年問題
団塊の世代が75歳以上となり、医療や介護の需要が急増する年です。これにより、医療・介護施設やスタッフの不足が深刻化することで、医療・介護費用の急増や介護施設・介護従事者の不足が懸念されています。対策として、介護ロボットやICTの導入介護職の待遇改善が求められています。
2040年問題
2040年頃には団塊ジュニア世代が高齢者となり、再び高齢者人口が増加することから生じる問題です。令和5年版高齢社会白書によれば、高齢化率(65歳以上の割合)が34.8%となり、日本人の3人に1人が高齢者となります。また、この時期には地方での人口減少が顕著になると予測されています。これにより、地方の過疎化とそれに伴う公共サービスの低下、社会保障費の増大などが予想されます。
2050年問題
2050年には日本の総人口が1億人を下回ると予測されており、とくに労働力の減少が深刻な問題となります。労働力不足による経済成長の鈍化や若年層への負担増大が予測されています。
参照:パソナ
2030年問題の影響が大きい業界
2030年問題による労働力不足や高齢化は、具体的にどのような業界に大きな影響を与えるのでしょうか。とくに影響の大きな業界は以下の3つと言われています。
- サービス業界
- 医療・福祉業界
- IT業界
すでに労働力不足が影響し始めている業界ですが、具体的にどのような問題があるのでしょうか。詳しく紹介します。
サービス業界
サービス業には飲食業や宿泊業など、人手に依存する業務が多いため、労働力不足が直接的に影響します。すでに応募者が少ない上に、離職率が高く、社員の確保が困難な状況にあります。このため、賃金水準の改善や労働環境の整備が求められています。
医療・福祉業界
医療・福祉業界においては、高齢化が進むことで、医療や介護の需要が急増し、業界を圧迫する懸念があります。高齢者の単身世帯の増加もこの問題をさらに深刻化させます。サービスの崩壊を避けるためにも、人材の確保が急務です。
IT業界
IT業界は高度な専門知識を持つ人材が不可欠であり、その需要が急増しています。一方で技術者の育成が追いついていないのが現状です。AIやデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、グローバルな競争に負けないためにも多くの専門人材が必要とされています。
2030年問題に備えて企業が取るべき対策
2030年問題に備えて、企業は早めに対策を取っていく必要があります。とくに、社員が働きやすく、離職しにくい環境づくりは欠かせません。具体的には以下の5つの施策が考えられます。
- 多様な働き方の導入
- リスキリングの実施
- 外国人労働者の受け入れ
- シニア人材の活用
- 先端技術の導入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
多様な働き方の導入
リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方を導入することで、働きやすい環境を提供し、労働力を確保します。たとえば、テレワーク制度の普及や、副業・兼業の解禁と促進、働き方改革による労働環境の改善などがこれに含まれます。とくに育児休業や介護休業の充実、職場に保育施設を設置するなどの施策を行うことで、女性社員が安心して働けるようになります。
リスキリングの実施
リスキリングとは、社員が新たなスキルを習得し、職務に必要な能力を向上させることを指します。たとえば、リスキリングを通じて社員がスキルを習得することで、新たな人材を確保するためのコストを削減できます。また、リスキリングは、社員のエンゲージメントを高め、離職率を低下させる効果もあります。
外国人労働者の受け入れ
労働力不足を補うために、外国人労働者を積極的に受け入れることが求められます。外国人労働者の受け入れのためには、生活支援や文化・言語の教育プログラムを充実させることが重要です。他にも特定技能制度や技能実習制度の拡充も考えられます。
シニア人材の活用
定年退職後のシニア人材を再雇用することも有効な手段です。パートタイムやフレックスタイムを導入することで、シニアが働きやすい環境を整備することができます。また、求められる業務内容の変化に合わせて、研修制度を設けてスキル習得を促すことも効果的です。
先端技術の導入
AIやロボティクスなどの先端技術を導入し、業務の効率化と自動化を進めることで、人手不足の影響を軽減することができます。たとえば、製造業ではロボットによる自動化システムの導入、サービス業ではAIチャットボットによる顧客対応の自動化などが挙げられます。
これらの施策を複合的に行うことで、企業の競争力を維持していきましょう。
まとめ
2030年問題とは、日本の少子高齢化による労働力人口の急激な減少が引き起こす社会的・経済的な課題です。企業は、人材確保のために高賃金や魅力的な福利厚生に重きをおく必要性が出てきます。その結果として、企業経営のコストが増大し、経済全体の成長が鈍化する懸念があります。2030年問題に対応するために、労働力の多様化や技術革新、働き方改革を積極的に行っていきましょう。