人事戦略
2025.02.13
262の法則とは? パレートの法則との違いや組織づくりへの活用方法、活用する際のポイントを紹介
- #マネジメント
- #人材育成

組織のパフォーマンスを向上させるためには、適切な人材活用が欠かせません。その中で注目されるのが「262の法則」です。この法則は、組織における人材の分布とその活用方法を示すもので、マネジメントの大きなヒントになります。この記事では、262の法則の概要を示すとともに、「パレートの法則」との違い、262の法則を活用したマネジメント方法などを紹介します。
262の法則とは?
262の法則とは、組織やグループ内での人材の能力や成果の分布に関する法則のことです。
人間の能力や成果の分布は、統計学的に「正規分布」に従うことが多いとされています。正規分布では、大多数が平均的な成果(中位60%)に集中し、その両端に少数の高い成果(上位20%)と低い成果(下位20%)が存在します。この分布形状は、自然界や社会のさまざまな現象で観察され、組織内でも同様の傾向が見られることが一般的です。
この法則によると、組織内の人材は下記の3つのグループに分かれると説明されます。
上位約20%を占める優秀な人材
この人たちは率先して動き、問題解決能力が高く、生産性も高いため組織の成功や成果に大きく貢献する存在です。
中位約60%を占める平均的な人材
この人たちは、指示に従って動き、与えられた仕事をこなします。特別目立つわけではありませんが、組織の中核を担う存在といえます。
下位約20%を占める成果があまり出せない人材
この人たちは、組織内での貢献度が低いか、場合によっては組織にとってマイナスになることもあります。やる気がなかったり、協調性が欠けていたりすることがあります。
この割合(2:6:2)に分かれる理由は、人間の能力や成果は個人差が大きく、自然と偏りが生じるためです。統計学的に自然界や社会で広く見られる構成比率とも一致しており、多くの組織でこのような分布が自然と見られます。
この法則は、組織のメンバー構成を理解し、適切な人材配置や支援策を講じるための指針となります。
パレートの法則との違い
組織内の成果の分布に関する法則の一つに「パレートの法則」があります。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱した法則で、「全体の成果の80%は、全体を構成する要素(人や資源)のうち20%によって生み出される」とするものです。
262の法則もこの考え方に基づいていますが、適用範囲や焦点にやや違いがあります。それぞれの特徴と違いを整理すると次のようになります。
焦点の違い
パレートの法則:成果(例:売上や利益)の偏りに注目。全体の80%の成果が20%の要因から生まれる。
262の法則:組織内の人材分布に注目。上位20%が成果を牽引し、中位60%が基盤を支え、下位20%が課題となる。
適用範囲の違い
パレートの法則:成果・リソース全般に幅広く適用(顧客、時間、製品など)。
262の法則:組織運営や人材管理に特化。
中位層への視点の違い
パレートの法則:上位20%の要因が中心で、中位層には触れない。
262の法則:中位60%を組織の成長の鍵と見て重視。
まとめると、パレートの法則は「成果の偏り」、262の法則は「人材の分布と活用」に特化した法則といえます。
262の法則から見えてくる組織の課題
262の法則からは、以下のように、各層が抱える特有の課題と、それらが組織全体に及ぼす影響という形で組織の課題が見えてきます。
上位20%への依存リスク
上位層のメンバーは、能力の高さから、周囲の人々から頼りにされます。そのため重要な業務が集中しやすくなり、過剰な負荷により燃え尽き症候群やモチベーション低下を引き起こしやすくなります。この状態が続くと離職に至るリスクが高まります。さらに上位層が抜けると組織全体の成果が大きく低下し、立て直しには多大な時間と労力が必要となります。
中位60%の停滞
中位層のメンバーは組織の中核を担いますが、多くの場合、成長機会の不足や教育・支援の欠如が課題となります。この層が「自分はただの普通の存在だ」と感じることで、挑戦意欲を失い、モチベーションが低下しやすくなります。また、チーム内での具体的な目標や役割が曖昧だと、主体性を発揮できず、停滞が続く原因になります。この層を「平均的」とみなして育成を怠ることのないよう、スキルアップや目標設定を通じて主体性を引き出す施策を行うことが重要です。
下位20%の影響
下位層のメンバーは成果が上がらないことが多く、仕事に対するやる気を欠く場合があります。その結果、組織の生産性を下げるだけでなく、周囲のメンバーの士気にも悪影響を与えるリスクがあります。このような状況が続くと、他のメンバーの成長やパフォーマンスの低下につながり、結果として組織全体の生産性が損なわれることになります。放置せず、適切な支援や配置転換を行い、組織の負担を軽減する努力が必要です。
全体的な課題
特定の層に過剰な注力をする一方で他の層を軽視すると、不平等感が生まれ、組織内の連携や士気が低下する可能性があります。これらの課題を解決するためには、各層の特性を深く理解し、バランスの取れた施策を講じることが重要です。また、短期的な成果だけでなく、長期的な視点で組織全体の成長を目指す取り組みが求められます。
262の法則を活用した施策の例
それぞれの層の特性に応じたアプローチを実施することで、社員のポテンシャルを引き出し、組織全体の成果を高めることが可能となります。以下に、層ごとのアプローチの仕方と施策の例を紹介します。
上位層への施策
上位層に対しては、優秀な人材に持続的に成果を出してもらい、離職を防ぐと同時に、組織全体へのポジティブな影響を広げることを目的とした施策が求められます。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
権限と裁量の付与:戦略的な意思決定やプロジェクトリーダーを任せ、挑戦的な仕事を与えることで成長を促す。
報酬と評価の透明化:評価基準を明確化し、成果に応じた報酬や昇進を行うことでモチベーションを維持する。
スキルアップの支援:外部研修や専門知識を深める教育プログラムを提供し、さらなる成長の機会を作る。
バランスの取れた業務配分:業務が集中しすぎないよう、適切な負荷を調整し燃え尽き症候群を防ぐ。
中位層への施策
中位層へは、メンバーが主体的に行動し、安定した成果を出すだけでなく、上位層へのステップアップを目指す姿勢を促すための施策が求められます。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
スキルアップ研修:実務に直結するトレーニングやキャリア形成をサポートするプログラムを提供する。
明確な役割と目標設定:個人やチームごとに具体的な目標を設定し、成果を可視化することでやりがいを感じられる環境を整える。
ロールモデルの活用:上位層の成功事例やメンバーのスキルを共有し、モチベーション向上を図る。
フィードバックの強化:定期的な1on1ミーティングや業務評価を通じて、成長ポイントや課題を具体的に伝える。
下位層への施策
下位層に対しては、成果が出せない原因を特定するとともに、負の影響を最小限に抑えるための施策が求められます。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
課題の明確化と個別指導:成果が出ない理由を究明するとともに、マンツーマン指導によって改善を促す。
適切な配置転換:現在の業務が適性に合わない場合、スキルや興味に合った部署や役割に配置し直す。
短期的な目標の設定:達成可能な小さな目標を設定し、成功体験を積ませることで自信を回復させる。
モチベーション回復支援:メンター制度や心理的安全性を確保し、職場環境への適応を支援。
退職支援(※必要に応じて):改善が難しい場合は、キャリア形成を支援しつつ、円満な退職を促す。
262の法則を活用する際のポイント
262の法則は、組織の人材管理やマネジメントにおいて有用な指針となりますが、効果的に活用するためにはいくつかの注意点があります。この法則を単純に適用するのではなく、各層の特性や組織の状況に応じて柔軟に対応することが重要です。
以下に、262の法則を活用する際のポイントを3つ紹介します。
数字に固執しすぎない
262の法則は、あくまで一般的な傾向を示す経験則であり、すべての組織に必ずしもこの割合が当てはまるわけではありません。過度に「2:6:2」の分布にこだわると、本質的な課題を見逃す可能性があります。各組織の実情に応じて柔軟に適用することが重要です。
ラベル付けの危険性
上位、中位、下位とメンバーを分類する際、特定の人を固定的に評価しないよう注意が必要です。人材のパフォーマンスは環境や状況によって変化するため、「下位だから期待できない」などと決めつけることは避けるべきです。
データの活用とモニタリング
法則を活用するには、各層のパフォーマンスを正確に把握するためのデータ収集とモニタリングが必要です。これにより、現状を定量的に理解し、適切な施策を打てるようになります。
262の法則を活用する際は、固定的な分類や過度な依存を避け、各層の特徴に応じた柔軟なマネジメントを行うことが成功の鍵です。全体のバランスを考慮した施策を実施しましょう。
まとめ
262の法則は、組織内の人材の能力や成果が上位・中位・下位で「2:6:2」の割合で分布するという理論に基づき、組織のメンバー構成を理解し、適切な人材配置や支援策を講じるための指針となります。上位20%の能力を最大限活用し、中位60%を成長させ、下位20%を適切にサポートすることで、組織全体の成果を高めることができます。注意点にも留意しつつ、この法則を活用し、バランスの取れた組織運営を目指しましょう。