人材開発・教育

2025.04.08

アサーションとは? メリットやトレーニング方法を解説

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アサーションとは? メリットやトレーニング方法を解説

アサーションとは、相手を尊重しながら自分の意見を伝えるコミュニケーション手法です。職場のコミュニケーションを円滑にして、人間関係を良好にするメリットがあります。

この記事では、アサーションの概要や注目される理由、身につけるためのトレーニング方法などを解説します。

アサーションとは

アサーションとは、コミュニケーション方法のひとつで、相手と対等な立ち位置で自分の意見を主張することを表します。相手の意見や立場を尊重しながらも、自分の主張をしっかりと伝えるもので、相手との距離感を考えながら状況に応じて適切なやり取りを行う必要があり、高いコミュニケーションスキルが求められます。

ここでは、アサーションの歴史や注目される理由を解説します。

アサーションの歴史

アサーションの歴史は、1950年代にアメリカで行動療法として開発されたことが始まりです。当初は、自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング方法として取り入れられていました。

その後、1960~70年のアメリカで人権運動が広がる過程で、差別や抑圧されてきた人々が自己主張する方法として発展したという経緯があります。

アサーションが注目される理由

近年、アサーションに注目し、導入を検討する企業が増えています。アサーションが注目される理由としては、現代のビジネスシーンでコミュニケーションがより重視されるようになってきたことが挙げられます。

リモートワークの普及や価値観の多様化により、意思の疎通が難しくなっている状況で、相手を尊重しながら自己主張するというアサーションの手法が注目されるようになりました。

アサーションは、離職防止やメンタルヘルス対策・ハラスメント対策としても有効です。

相手を尊重するアサーションの手法が浸透することで良好なコミュニケーションがとれるようになり、ストレスやメンタルの不調の解消につながります。ストレスやメンタルの不調を原因とした離職も防止できるでしょう。相手を尊重するコミュニケーションをとれるようになれば、ハラスメント行為をなくすこともできます。

アサーションを推進するメリット

アサーションを身につけることで、次のようなメリットがあります。

  • 人間関係が良好になる
  • 価値観や立場の違う人と対等な意見交換ができる

それぞれ解説します。

人間関係が良好になる

社員の一人ひとりがアサーションを身につけることで、人間関係が良好になるというメリットがあります。

アサーションは相手を尊重しながら自分の意見を伝えるコミュニケーションであり、関係性を壊すことがありません。相手にも配慮しながら自分の意見や要求を円滑に伝えられるようになり、適切な意思の疎通により信頼関係を構築することもできるでしょう。

価値観や立場の違う人と対等な意見交換ができる

アサーションを身につけることで、自己主張や意見表明をする際に、相手とのバランスを保ちながら適切にコミュニケーションをとることができるようになります。価値観や立場の違う相手とも対等な意見交換ができるでしょう。

たとえば、相手の要求に応じることが難しいとき、相手の立場に理解を示しつつも、自身の考えをはっきりと伝えることができ、「言いたいことがうまく伝えられない」「立場の違う相手に遠慮してしまう」といったストレスもなくなるでしょう。

コミュニケーションのタイプとアサーション

アサーションを考える上で、コミュニケーションを次の3つのタイプに分けて考えます。

  • アグレッシブ
  • ノンアサーティブ
  • アサーティブ

それぞれの内容を解説します。

アグレッシブ

アグレッシブとは、相手の意見を尊重せず、自分の意見を一方的に主張する攻撃的なタイプです。「自分の意見が正しい」という考えがあり、相手よりも優位に立ちたいという思いから、相手の意見を無視して自分の主張を強く主張します。相手を萎縮させたり、意見が衝突したりすることが多いでしょう。

周囲からは自己中心的に見え、結果的に自分の主張も受け入れてもらえないことになりかねません。

ノンアサーティブ

ノンアサーティブとは、意見があってもあまり主張せず、相手に合わせてコミュニケーションをとる受け身のタイプです。自分と異なる意見が出されると、自分の意見を抑えてでも相手に合わせる傾向があります。

意見を合わせることは相手への思いやりの反映でもありますが、その根底には自分の意見に自信がなく、反論されて傷つきたくないという思いがあります。

自分の意見が通らないことで不満を抱えやすく、人間関係でストレスを感じることも多いでしょう。 

アサーティブ

アサーティブは、自分の意見を主張するときに相手の意見・立場も尊重し、人間関係に配慮をしながらコミュニケーションをとるタイプです。

アグレッシブとノンアサーティブの良い部分を併せ持ち、コミュニケーションスキルの高いバランスの取れたタイプといえます。アサーションの考え方の下では、このアサーティブなタイプが目指されます。

このタイプでは、相手と意見が食い違ったときも、歩み寄って妥協できる部分を探ります。不要な対立を生むことなく、建設的な話し合いができるでしょう。 

アサーションを身につけるトレーニング方法

アサーションは、トレーニングにより身につけることが可能です。ここでは、アサーションを身につける3つの方法を紹介します。

DESC法

DESC法とは、アサーションを次の4つの段階に分けて実践する方法です。

  • D:Describe(描写)
  • E:Express(表現)
  • S:Specify(提案)
  • C:Choose(選択)

Describe(描写)では、客観的な事実を伝え、Express(表現)では、描写した事実に対して自分の意見や感情を表現します。

Specify(提案)では、自身が考える具体的な提案を行います。

Choose(選択)は、提案への相手の反応に応じて、自身の行動を選択します。提案を受け入れてもらえたらそのまま話をまとめ、提案に難色を示されたら代替案を提示するなど、柔軟に対応します。

この順番を意識して自分の主張を伝えることで、衝突を回避し、スムーズで建設的な議論ができるでしょう。

アイ・メッセージ

アイ・メッセージとは、「私(I)」を主語にして表現し、自分の意見・主張を伝えやすくする手法です。ただ意見や主張、希望を伝えるよりも、「私」という主語を付け加えることで穏やかなニュアンスになり、親しみのあるコミュニケーションができます。

たとえば、同僚に書類の整理をしてもらいたいとき、「まとめてください」よりも「まとめてもらえると(私が)助かります」と伝えるほうが柔らかい印象になり、対応してもらいやすくなるでしょう。

ABCDE理論

ABCDE理論とは、人が物事を受け取る際の思考・感情の流れを5つの段階にチャート化して理解する方法です。

  • A:Activating event(客観的な出来事)
  • B:Belief(信念・考え方)
  • C:Consequence(結果)
  • D:Dispute(反論・自問自答)
  • E:Effect(効果)

Activating event(客観的な出来事)は、実際に起きた出来事や現象のことです。Belief(信念・考え方)は、客観的な出来事をどのように受け止めるのかという信念や考え方、Consequence(結果)は、信念や考え方を経て、結果として起こった気分や感情、行動などを指します。

出来事があって結果に至ると考えるのではなく、その間にある信念や考え方によって結果は変わりうるという考え方がされ、Dispute(反論・自問自答)では、「C」で悪い結論に至った場合に、「B」に対する反論を行います。この過程を経て、より適切なEffect(効果)につなげます。

このようにして自問自答を重ね適切な受け止め方を導けるようトレーニングをすることで、アサーションを身につけることにつなげられます。

アサーションの具体的な場面

アサーションについて理解するために、具体的な場面でどのようなコミュニケーションをとることが考えられるかを見ていきましょう。

会議で意見交換するとき

会議で意見交換をしており、企画の提案に対して他のメンバーは全員賛成し、自分だけ反対の考えになった場面があったとします。

自分の意見を求められて反対の意見を主張したいときの例は、次のとおりです。

(アサーションの手法ではない例)

  • アグレッシブ:「そんな企画は認められない。絶対に反対です」と反対意見を出す
  • ノンアサーティブ:「他の方の意見と同じです」と同調する

(アサーションの例)

「皆さんの企画に対する〇〇という意見には賛成します。しかし、企画には△△という課題もあるため、企画自体には賛同できません」と伝える

部下を指導するとき

最近ミスの多い部下に注意し、指導をしなければならないときの例は、次のとおりです。

(アサーションの手法ではない例)

  • アグレッシブ:「いつになったら仕事を覚えられるんだ。しっかり確認しなさい」と叱る
  • ノンアサーティブ:改善するまで様子をみる

(アサーションの例)

「最近、ミスが多いのが気になっている」と、ミス自体を責めるのではなく自分の感情を伝え、ミスが起こる原因を聞き、一緒に対策を考える

無理な要求をされたとき

仕事が忙しく余裕がないときに「〇時までに資料を用意してほしい」と無理な要求をされた場合、考えられる対応例は、次のとおりです。

(アサーションの手法ではない例)

  • アグレッシブ:「締切が迫っている仕事があり、できません」と断る
  • ノンアサーティブ:「わかりました」と、遅くまで残業をするつもりで引き受ける

(アサーションの例)

「今、〇時までに終わらせなければならない仕事があります」と、すぐに仕事を引き受けられない理由を説明し「〇時以降ならできますが、どうでしょうか」と代わりの案を提示する

まとめ

アサーションは相手を尊重しながら自分の意見を伝えるコミュニケーション手法であり、人間関係を良好に保ちながらしっかりと自己主張ができるのがメリットです。

コミュニケーションに関わるストレスを軽減し、価値観や立場の違う人と対等な意見交換ができることで、業務も円滑に進むでしょう。

アサーションを身につけるためには、DESC法やアイ・メッセージなどのトレーニングがおすすめです。

アサーションを推進し、職場のコミュニケーションを改善していきましょう。

この記事を担当した人

PeopleX コンテンツグループ

人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。

これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。

株式会社PeopleXについて
エンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork」の開発・運営をはじめとした、新しい時代に適合したHR事業を幅広く展開する総合HRカンパニーです。

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