人事戦略
2025.04.14
アセスメントとは? 人材に関するアセスメントの意味や効果、導入時の注意点を解説
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アセスメントとは、人や物事、状況などを客観的に分析・評価することを意味します。環境や看護・福祉の場面でも用いられますが、人材、組織、リスクに関するアセスメントのように、ビジネスにおいても活用されています。
この記事では、アセスメントの意味、そして特に人材アセスメントの効果や導入時の注意点を解説します。
アセスメントとは
アセスメントの意味と特徴
アセスメントとは、客観性を持って組織や人材、物事に対する分析や評価を実施することを指します。査定や評価を意味する英語の「assessment」が由来です。
アセスメントの特徴は、数値や分析結果などに基づき客観的評価を行う点です。そのため、評価者の主観が入りにくく、公正な評価が可能となります。AIなどによるデータの分析が可能になった近年、より幅広い分野での活用が期待されています。
ビジネスにおいてアセスメントが必要とされる理由
アセスメントを活用した分析と評価は、現状の把握と問題点の早期発見、改善策の策定につながります。そして改善策を日々の業務に取り入れることで、リソースの効果的な活用や組織全体の意識改革が期待できます。
このように、業務の効率化やコストの削減につなげ、生産性の向上や競争力の強化を実現するために、アセスメントは重要な意味を持つといえるのです。
人材アセスメントとは
アセスメントは複数の分野で活用されていますが、そのうち人材アセスメントとは、企業の人事領域において行われるアセスメントのことです。社員のスキルや能力、性格、適性などを評価し、その結果を人材配置や育成計画の立案、リーダーシップ開発や後継者計画などに活用します。
人材アセスメントは、適性検査やヒアリング、シミュレーションなどをもとに実施されます。社内での評価による場合もありますが、主に社外の第三者に委託して行われます。外部の評価者による評価を受けることで、より客観的で公平な結果を得ることが意図されています。
人材アセスメントの導入効果
人材アセスメントを導入すると、以下のような効果を得られます。
- 採用後のミスマッチの防止
- 人員配置の適正化
- 効果的な育成プランの策定
- モチベーションの向上
具体的に見ていきましょう。
採用後のミスマッチの防止
客観的な分析を伴わず、直感や印象が採用の判断に介在してしまうと、採用した社員が十分に力を発揮できない、自社の文化に合わない、といったミスマッチが生じる可能性があります。
人材アセスメントにより、自社に必要な人材、自社に向いている人材について分析を行っておき、その結果を選考において考慮することで、客観的な判断を行うことができ、採用後のミスマッチを防止することにもつなげられます。
人員配置の適正化
人員を配置する際、各社員の能力や適性に基づいた判断がなされますが、人員アセスメントによる結果を用いることで、より適正な人員配置を実現することが可能となります。
能力や適性の把握なしに配属を行うと、最大限の活躍につながらず、社員のパフォーマンスやモチベーションの低下を招くことにもなりかねません。社員それぞれが、自身の能力・適性と合致した業務を担い成果をあげることができるよう、客観的な評価結果に基づいた人員配置がなされることが大切です。
効果的な育成プランの策定
社員には一人ひとり異なった資質があります。たとえば、マネジメントに適性のある社員もいれば、そうでない社員もいるでしょう。また、ある社員にとって効果的であった育成方法が、他の社員にとってもそうであるとは限りません。
人材アセスメントにより各社員の特性を見極めた上で、どの社員にどのようなキャリア支援・育成を行うかを判断し実施することで、より高い効果を得られるでしょう。
モチベーションの向上
自分に合った配属や育成がなされることで、社員は活躍や成長をより実感することができ、モチベーションが向上します。
また、人材アセスメントを人事評価の場面でも活用すると、客観的な視点による公正な評価の実施が可能となり、評価に対する社員の納得感を得られます。適正な評価を受けられていると実感できるという点でも、社員のモチベーション向上が期待できるでしょう。
アセスメントのプロセス
アセスメントを効果的に実施するには、PDCAサイクルを活用することが重要です。PDCAでは「P」から「A」までの4つの要素のサイクルを一回りとし、これを繰り返し実施することで、課題の早期発見と改善を目指します。
アセスメントにおいて、それぞれの要素は具体的にどのようなものとなるか、詳しく見ていきましょう。
Plan(計画)
まず、アセスメントを実施する目的や目標を明確にし、達成するための行動計画を立案します。人材アセスメントにおいては、ミスマッチのない採用や適正な人員配置、効果的な育成などが目的の具体例として挙げられます。
計画は、過去の実績や立案者の主観ではなく、仮説に基づき論理的に決定することが重要です。たとえば、評価項目の設定やアセスメント手法の選定があります。アセスメント研修、適性検査、多面評価(360度評価)などの手法から、目的に合ったものを選びましょう。
スムーズにアセスメントを進めるには、必要なデータの収集方法やヒアリングするべき人の選定など、目標達成に向けた具体的な内容を盛り込んだ行動計画を作成することが重要です。
Do(実行)
行動計画の立案が完了したら、その内容に沿って計画を実行します。計画に定めた方法を適切に実施し、必要なデータを正しく集めていくことが重要です。
計画どおりにアセスメントを進めるためには、定期的な進捗の確認も重要です。スケジュールの遅れや方向性のずれが生じないよう確認し、必要が生じたときは行動や計画を速やかに見直しましょう。
Check(評価)
計画の実行後、アセスメントの結果を評価します。評価には、人材の評価と、行動計画の達成度の評価があります。
人材の評価は、それぞれ人材が持つ強みや課題などの評価です。一人ひとりの評価をレポートにまとめフィードバックすることで、対象者自身による課題の把握やモチベーションアップの効果が期待できます。
行動計画の達成度の評価では、設定した目標と実績を比較し、達成度を確認しましょう。特に、目標を達成できなかったときは、その原因をしっかりと分析することが重要です。
また、この段階では、実行過程で発生した課題の洗い出しと把握も行います。浮き彫りになった課題を分析し、検証することで、問題点の改善につながるでしょう。
Action(改善)
評価を分析し課題を洗い出した上で、改善策の計画立案を実施します。
PDCAは、1回行うだけでは十分な効果は得られません。企業を取り巻く環境や、業務内容、必要な人材などは日々変わります。そのため、より良いアセスメントを実行するためには、PDCAを繰り返し実施することが重要です。
しっかりと改善策を検討することで、新たなサイクルにおいて、より効果的な目標や計画を立て、実行につなげていくことができるでしょう。
人材アセスメントを導入する際の注意点
最後に、人材アセスメントを導入する際の注意点を解説します。注意点をあらかじめ確認し、ぜひアセスメントを効果的に活用してください。
氷山モデルを理解しておく
導入の際の注意点の1つが、氷山モデルの理解です。氷山モデルとは、表面に見えている部分はごく一部に過ぎず、見えないところに多くのものが存在しているとする概念のことです。
人材に関しては、業績や成果、スキル、行動特性は「見える部分」、モチベーションや資質、適性などは「見えない部分」にあるといえます。
アセスメントを導入する際は、見えている部分ばかりではないことを理解した上で、表面的な事象のみを見るのではなく、見えない部分にも考えを巡らせることが重要です。そうすることで、人材のより本質的な分析と評価が可能になります。
導入の目的を社内で共有する
アセスメントをなぜ実施するのかがわからない状態では、社員は不安を感じてしまいます。社員にとって少なからぬ負担が生じることを認識した上で、導入目的を明確化・共有し、社員が萎縮したり不安や不満を抱いたりしないようにすることが重要です。
たとえば聴き取りを行う際は、「この聴き取りは、適切な人員配置を実現するために実施している」「このツールを用いて実施する」「結果はこのような範囲・目的でのみ利用する」といったことを対象者に伝えるとよいでしょう。
また、アセスメントは個人を完全に評価できるものではありません。アセスメントの結果のみで直接的に処遇を左右することは適切ではなく、処遇の判断がなされる際は他の要素も含めて総合的・包括的になされるということも説明することが望ましいといえます。
客観的なフィードバックを心がける
客観的なフィードバックの実施も、アセスメント導入の際の注意点です。
フィードバックを実施することで、対象者は評価に対する信頼性と透明性を感じられます。また、フィードバックにより課題を共有することで、対象者の意識の変化も期待できるでしょう。
フィードバックのポイントは、評価者の主観を入れず、あくまでもデータや分析をもとに実施することです。また、課題だけではなくポジティブな評価も伝えることで、社員のモチベーションの低下を防ぎましょう。
継続的に実施する
アセスメントは、1回の実施だけでは十分な効果が得られないこともあり、効果を高めるには、継続的に実施することが重要です。繰り返し実施することで、精度の高いアセスメントが可能になるでしょう。
アセスメントにより人材に関する計画を最適化し、生産性の向上を目指すには、継続的に実施し、ノウハウを積み上げることが有効です。
まとめ
アセスメントは、主観ではなくデータを用いた客観的な評価、分析を実施することに特徴があり、評価の対象は、人材や組織、リスクなど多方面に及びます。このうち、社員のスキルや能力、性格、適性などを評価する人材アセスメントには、人員の配置や育成、社員のモチベーション向上といった効果があります。
人材アセスメントを効果的に実施するには、PDCAサイクルを活用しましょう。また、実施する際は、適切なフィードバックを行うことや、継続的に行うことが重要です。注意点も意識しながらアセスメントを活用し、人材育成や業績の向上につなげましょう。

この記事を担当した人
PeopleX コンテンツグループ
人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。
これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。
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- エンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork」の開発・運営をはじめとした、新しい時代に適合したHR事業を幅広く展開する総合HRカンパニーです。