人材開発・教育
2024.08.08
オンボーディングとは?従来型研修との違いや目的、導入プロセスと実施のポイントは?
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「オンボーディング」は、新入社員が企業文化に迅速に適応し、パフォーマンスを発揮できるようにするためのプロセスです。この効果的な導入プロセスを学び、組織の成功を支える重要な要素をご紹介します。
オンボーディングとは
オンボーディング(onboardging)とは、新入社員が組織にスムーズに適応し、いち早くパフォーマンスを発揮できるようにするための仕組みのことです。この仕組みは、従来のオリエンテーション型の新入社員研修だけではなく、企業文化や業務内容、チームの一員としての役割理解、また受け入れ側の組織創りなどを含む、包括的な支援が含まれます。
なぜオンボーディングが注目されているのか?
近年では、多くの企業がオンボーディングに注目しています。以下では、オンボーディングの注目度が高まっている理由について解説します。
理由① リモートワークの普及
コロナ禍を契機に、リモートワークが急速に普及しました。リモート環境で新入社員を迎える際には、対面でのコミュニケーションや直接的なサポートが難しくなるため、効果的なオンボーディングがより一層重要視されるようになりました。
理由② 人材獲得競争の激化
労働市場の流動性が高まり、企業が優秀な人材を獲得する競争が激化しています。新入社員が早期に適応し、戦力として活躍できるようにするためには、充実したオンボーディングが不可欠です。企業が良いオンボーディング体験を提供することは、優秀な人材の定着につながります。
理由③ 多様性と包括性の推進
企業が多様性と包括性(Diversity & Inclusion)を重視するようになったことも、オンボーディングが注目される理由の一つです。多様なバックグラウンドを持つ新入社員がスムーズに組織に溶け込み、安心して働ける環境を整えるために、個別対応が求められています。
理由④ 従業員エンゲージメントへの注目
「企業と社員の結びつきの強さ」を意味する「従業員エンゲージメント」の重要性に多くの企業が気づき始めました。エンゲージメントを高めることで、離職防止や生産性向上が見込めるからです。そして、入社直後のオンボーディング体験が、新入社員のエンゲージメントを高めると考えられているのです。
理由⑤ テクノロジーの発展
テクノロジーが進化し、オンボーディングを支援するための多様なツールやプラットフォームが提供されています。これにより、オンボーディングの効果を最大化するための手段が増え、企業はより効率的かつ効果的なオンボーディングを実施できるようになりました。
上記のような、社会の変化や技術の発展によって、多くの企業からオンボーディングの重要性が認識されるようになりました。
オンボーディングの目的と効果
オンボーディングの最大の目的は、新入社員が迅速かつスムーズに組織に適応し、いち早くパフォーマンスを発揮できるように支援をすることです。具体的には下記の通りです。
新入社員をいち早く戦力化することができる
オンボーディングでは、新入社員に対して会社の業務フロー、システム、ツールの使い方などを丁寧に教育し、業務に必要なスキルや知識を早期に習得させるためのトレーニングを実施します。また、新入社員が自立して業務を進められるように、マニュアルやツールなどで必要な情報にすぐにアクセスできる体制を構築し、新入社員をいち早く戦力化することができます。
社員のエンゲージメントの向上につながる
オンボーディングでは、企業のミッション、ビジョン、バリューを新入社員に伝えることで、企業文化に対する理解と共感を深めます。これにより、新入社員は自分が企業の一員であるという意識を持ちやすくなります。また、チームビルディングのアクティビティやソーシャルイベントを通じて、新入社員が同僚や上司と良好な関係を築けるよう支援します。定期的な1on1ミーティングを通じて、新入社員の意見や懸念を聞き入れ、対応することで、双方向のコミュニケーションを促進し、社員のエンゲージメントの向上につながります。
社員の定着率を向上させ、早期退職のリスクを下げることができる
オンボーディング期間中に新入社員が感じる不安や疑問を解消するためのサポートを提供します。例えば、専用のサポート窓口を設けたり、FAQを充実させたりすることで、新入社員が安心して働ける環境を整えます。実際の業務内容や職場環境について事前に十分な情報を提供し、入社後のギャップを最小限に抑え、早期退職のリスクを下げることができます。
新入社員がスムーズに組織に適応し、いち早くパフォーマンスを発揮できるようになることで、売上や利益の増加につながります。また、社員の定着率を向上させ、早期退職のリスクを下げることは、採用にかかる膨大なコストの削減につながります。
オンボーディングと従来型研修の違い
オンボーディングと従来型研修には、いくつかの違いがあります。企業によって違いはありますが、一般的に下記のような違いが見られます。
従来型の研修の特徴
- スキル習得と知識の提供や会社の規則や各種手続きの理解
- 講義形式やワークショップ形式での集団指導
- 全ての新入社員に対して同じ内容
- 数日から数週間の短期的な期間に集中
オンボーディングの特徴
- スキルだけではなく企業文化やチームビルディングなど総合的に支援
- オンラインツールやeラーニング、実践指導など多様な組み合わせ
- メンターや上司による個別指導で、新入社員に合わせた支援
- 入社前から入社後、数ヶ月から1年以上にわたって段階的、継続的にサポート
従来型研修は、主に業務に必要なスキルや知識を短期間で集中的に習得させることに焦点を当てています。一方で、オンボーディングは、新入社員が迅速に組織に適応し、早期に生産性を発揮できるようにするための包括的かつ長期的なプロセスであり、個別対応や双方向のコミュニケーションを重視します。これらの違いを理解し、適切なオンボーディングを導入することで、新入社員の成功と組織全体のパフォーマンス向上を実現することができます。
オンボーディングの導入プロセス
オンボーディングを導入するにあたって「受入体制の整備」「入社前の準備」「入社後のオンボーディング支援実施」の三段階のプロセスが必要です。
受入体制の整備
オンボーディングを効果的に実施するためには、まず受入体制を整備することが重要です。以下の項目を確認し、準備を進めます。
- プロセスの設計:オンボーディングプロセス全体の計画を立て、各ステップの目的と内容を明確にします。
- 責任者の指名:オンボーディングを担当するチームや責任者を指名し、役割分担を明確にします。通常、人事部門が中心となりますが、各部署の協力も必要です。
- ツールとリソースの準備:オンボーディングに必要な資料やツール、プラットフォーム(例:社内ポータル、eラーニングシステム)を準備します。
- メンター制度の整備:新入社員をサポートするメンターを選定し、メンターに対するトレーニングやガイドラインを提供します。
入社前の準備
入社前の準備は、新入社員がスムーズに初日を迎えるための重要なステップです。この段階でのコミュニケーションが、新入社員の不安を軽減し、期待感を高めます。
- ウェルカムキットの送付:新入社員に対してウェルカムキット(会社紹介資料、ウェルカムレター、ロゴ入りグッズなど)を送付します。
- 必要書類の案内:雇用契約書、税関連書類、機密保持契約書など、必要な書類を事前に送付し、記入を依頼します。
- オンボーディングスケジュールの共有:入社初日から最初の数週間にかけてのオンボーディングスケジュールを事前に共有し、新入社員が何を期待できるかを明示します。
- 事前研修の提供:可能であれば、オンラインでの事前研修を提供し、基本的な業務知識や企業文化について事前に学んでもらいます。
- IT環境の準備:新入社員のPC、メールアカウント、必要なソフトウェアやシステムへのアクセス権限を事前に設定しておきます。
入社後のオンボーディング支援実施
入社後のオンボーディングは、新入社員が迅速に組織に適応し、業務を開始できるようにするためのプロセスです。初日から数ヶ月にわたって段階的に進められます。
【初日】
- オリエンテーション:会社の歴史、経営理念、事業内容、基本情報を紹介し、組織全体の理解を深めます。
- 基本的な手続き:社員証の発行、ITシステムへのログイン方法、社内ポータルの紹介など、基本的な手続きを行います。
- チーム紹介:チームメンバーや他の部門の同僚との顔合わせを行い、人間関係の構築をサポートします。
【最初の1〜2週間】
- 業務トレーニング:担当する業務に必要なスキルや知識を習得するためのトレーニングを実施します。例えば、製品知識、プロセス、ツールの使い方など。
- 企業文化トレーニング:企業文化やミッション・ビジョン・バリューに関するトレーニングを提供します。
- 1on1ミーティング:メンターや上司との定期的なミーティングを設定し、新入社員の進捗や懸念事項を確認します。
【最初の数ヶ月】
- メンタリングとコーチング:メンターが継続的にサポートし、新入社員の質問に答えたり、アドバイスを提供したりします。
- フィードバックと評価:定期的なパフォーマンスレビューを実施し、新入社員の進捗状況を評価し、フィードバックを提供します。
- 継続的な学習と成長機会の提供:新入社員が継続的に学び、成長できるような研修やワークショップ、eラーニングプログラムを提供します。
オンボーディングの導入プロセスは、「受入体制の整備」、「入社前の準備」、「入社後のサポート」といった段階を経て進められます。事前の準備と計画的な実施が、新入社員の迅速な適応と早期の戦力化、そして長期的な定着と成長を促進します。
オンボーディングの実施のポイント
以下の3つのポイントを押さえることで、効果的なオンボーディングを実現できます。
個別対応とパーソナライズ
効果的なオンボーディングを実施するためには、新入社員一人ひとりのバックグラウンドやニーズに応じた個別対応は非常に重要です。パーソナライズされたオンボーディングプランを提供することで、新入社員はより早く組織に適応しやすくなります。
例えば、個別のオンボーディングプランを作成することが必要です。新入社員の役割や過去の経験に基づいて、彼らに最適なオンボーディング計画を策定します。これにより、新入社員は自分の役割と組織全体における位置づけを早期に理解でき、効果的に業務を開始することができます。
また、新入社員のスキルレベルや学習スタイルに応じてトレーニングの内容や方法を調整し、必要な知識やスキルを効果的に習得させます。例えば、オンライン学習、実地訓練、ワークショップなど多様な形式のトレーニングを組み合わせることで、新入社員は自分に合った方法で学びやすくなります。
メンタリング制度の導入
新入社員には専任のメンターを割り当て、個別のサポートとフィードバックを提供します。メンターは、新入社員が日々の業務や組織文化に関する質問を気軽にできる相手となり、実務的なアドバイスや心理的なサポートを行います。これにより、新入社員は安心感を持ち、業務に集中しやすくなります。
早期の関係構築とコミュニケーション
新入社員が早期にチームや同僚との良好な関係を築けるように、積極的なコミュニケーションを促進することが重要です。これにより、新入社員は安心感を持ち、迅速に組織に溶け込むことができます。
例えば、入社初日にチームメンバーや他の部門の同僚との顔合わせを設定します。初日の顔合わせを通じて、新入社員は職場の人々と早期に交流を持ち、人間関係を築く第一歩を踏み出すことができます。この初期の交流は、職場での安心感と受け入れられている感覚を高めます。
また、メンターや上司との定期的なミーティングを設定し、新入社員の進捗や懸念事項を確認します。これにより、新入社員は自分の状況や業務に対するフィードバックを得ることができ、不安や疑問を解消する機会を持つことができます。また、定期的なコミュニケーションを通じて、上司やメンターとの信頼関係も強化されます。
その他、新入社員が社内イベントやソーシャルアクティビティに参加できるようにします。リラックスした環境で同僚と交流する機会を提供することで、職場内の人間関係を深めることができます。これらのイベントは、業務外のカジュアルな交流を促進し、新入社員が組織に対する親近感を持ちやすくなります。
まとめ
近年では、リモートワークの普及や人材獲得競争の激化、テクノロジーの発展などの要因から、多くの企業がオンボーディングの重要性をより認識しています。
人材獲得競争が激化している時代において、組織のミスマッチを防ぎ、社員の定着率を向上させ、早期退職のリスクを下げることは極めて重要です。さらに、新入社員をいち早く戦力化することで、企業全体の競争力を高めることができます。効果的なオンボーディングは、これらの課題に対応し、企業の持続可能な成長を支える重要な戦略の一つです。