人事労務
2024.08.08
リモートワークとは? テレワークとの違いやメリット・デメリット。人事が取り組むべき施策を解説。
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リモートワークは、働く場所や時間の柔軟性を提供し、生産性を向上させる新しい働き方です。コロナ禍から注目され始めたこのワークスタイルは、職場環境のあり方にも大きな影響を与えています。
この記事では、リモートワークの意味や効果とともに、メリット・デメリットについても紹介しています。の人事課題の解決につながる施策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
リモートワークとは
リモートワークとは、従来のオフィスなど特定の勤務場所にとらわれず、自宅やカフェ、共同作業スペースなどで仕事をする働き方です。特に、2020年のコロナ禍を迎えてから全国的に一気に注目を集めるようになりました。一時的にリモートワークに切り替えた企業もあれば、コロナ禍をきっかけに、今も継続的にリモートワークを続けている企業もあります。
リモートワークとテレワークとの違い
リモートワークとテレワークはほとんど意味は同じです。
いずれの言葉も、特定の勤務場所にとらわれない働き方を指します。
テレワークという言葉は政府や公的機関の政策などで用いられることが多く、総務省では「情報通信技術(ICT:InformationandCommunication Technology)を活用した場所にとらわれない柔軟な働き方」と定義しています。
この記事では、リモートワークとテレワークを同様のものとして扱い、以下は「リモートワーク」という言葉で統一させていただきます。
リモートワークの企業側メリット
リモートワークを導入することにより、企業側にはさまざまな具体的なメリットがあります。以下に、コスト削減、人材獲得競争の優位性の向上、従業員満足度の向上、事業の継続性の担保について詳しく説明します。
コストの削減
リモートワークを導入することで、オフィススペースを縮小でき、オフィス賃料の大幅な削減につながります。また、電気代、水道代、冷暖房代、日常的な消耗品にかかるコストも削減可能です。さらに、オフィスへの出社に際して支給していた交通費も削減できるため、大きなコスト削減につながります。
人材獲得競争の優位性の向上
地理的な制約がなくなることで、全国各地から優秀な人材を採用できるようになります。リモートワークが可能な企業は、最先端の技術や働き方を取り入れている印象を与え、会社のブランドイメージの向上にも寄与します。これにより、求職者からの評価が高まり、人材獲得における優位性が向上します。
従業員満足度の向上
通勤時間が削減され、その時間を家族との時間や趣味に充てることができ、ワークライフバランスの改善につながります。また、人間関係のストレスも軽減され、メンタルヘルスの向上にも寄与し、従業員満足度が向上します。
事業の継続性の担保
地震や大雨などの自然災害やコロナ禍のようなパンデミックが発生した場合でも、リモートワークの環境が整っていれば、事業の中断を最小限に抑えることができます。災害発生時でも、従業員が安全な場所で業務を続けることができ、事業の継続性が向上します。
リモートワークの従業員側のメリット
リモートワークの導入にあたって、企業側だけでなく従業員にもさまざまなメリットがあります。具体的には、通勤時間の削減やワークライフバランスの改善、集中力と生産性の向上、ストレス軽減などが挙げられます。
通勤時間の削減
リモートワークを導入することで、従業員は通勤にかかる時間を節約できます。毎日の通勤が不要になることで、今まで通勤にかかっていた時間を自分の時間に充てることができます。この時間を活用して、朝の時間をゆったりと過ごしたり、仕事前に運動をするなど、充実した時間を過ごすことが可能です。
ワークライフバランスの改善
リモートワークにより、従業員は仕事とプライベートのバランスを取りやすくなります。通勤時間がなくなることで、家族や友人との時間が増え、趣味や自己啓発に時間を充てることができます。例えば、仕事が終わった後にすぐ家族と過ごす時間が取れたり、友人と会食したり、習い事に通ったりと生活全体の質が向上します。
集中力と生産性の向上
リモートワークでは、従業員は自分にとって最も働きやすい環境を整えることができます。オフィス内の騒音や中断が少ない自宅で作業することで、集中力が高まり、生産性が向上します。例えば、静かな環境で仕事に集中することで、複雑なタスクやクリエイティブな業務を効率よく進めることができます。
ストレスの軽減
リモートワークは、従業員のストレスを軽減する効果があります。通勤のストレスがなくなるだけでなく、オフィスでの人間関係の摩擦やプレッシャーからも解放されます。自宅でリラックスした環境で働くことで、精神的な負担が軽減され、メンタルヘルスが向上します。結果として、従業員は健康的でポジティブな状態で仕事に取り組むことができます。
リモートワークの企業側のデメリット
リモートワークの導入にあたっては、企業側にもデメリットが存在します。具体的には、チームワークの低下、マネジメントの難しさ、新入社員の教育の難しさ、セキュリティのリスクなどを考慮しなければなりません。
チームワークの低下
リモートワークでは、従業員が物理的に離れて働くため、チームの一体感や連帯感が希薄になりがちです。オフィスでの雑談や非公式なコミュニケーションが減少し、同僚とのつながりが薄れる可能性があります。これにより、企業文化の醸成が困難になったり、コミュニケーションミスが増え、プロジェクトの効率が低下することも考えられます。
マネジメントの難しさ
リモート環境では、従業員の業務進捗状況を把握するのが難しくなります。労働時間や業務の質を正確に評価するのが困難であり、適切なフィードバックを提供することが難しくなります。また、対面でのやり取りが減り、非言語的なサイン(表情や身振り手振り)が伝わりにくくなります。これにより、誤解やミスコミュニケーションが増え、チーム全体の効率が低下することがあります。
新入社員の教育の難しさ
リモート環境では、新入社員のオンボーディングが困難になります。企業文化や業務プロセスを学ぶ機会が制限され、メンターや同僚からの直接的なサポートが減少します。その結果、新入社員の適応が遅れる可能性があります。また、従来のような「先輩社員の背中を見て学ぶ」スタイルの教育が難しく、オフィスでの指導やリアルタイムの指導が制限されるため、新入社員が必要なスキルや知識を習得するまでに時間がかかることが考えられます。
セキュリティのリスク
リモート環境では、機密情報やデータの保護が難しくなり、情報漏洩のリスクが高まります。リモート環境からでもセキュリティの安全性が高い状態で企業の情報にアクセスできる体制を構築したり、個々のセキュリティの意識を向上させる必要があります。企業は、リモートワーク用のセキュリティポリシーを策定し、従業員に対するセキュリティ教育を徹底することで、これらのリスクを軽減することが求められます。
リモートワークの従業員側のデメリット
リモートワークの導入にあたっては、従業員側にもデメリットが存在します。具体的には、孤独感や疎外感、自己管理の難しさ、成長の機会の希薄化などが挙げられます。これらのデメリットを克服するための対策が重要です。
孤独感や疎外感
リモートワークでは、物理的に一人で作業をすることが多くなり、オフィスでの同僚との直接的な交流が減少します。これにより、社会的孤立感や疎外感を感じることがあります。対面でのコミュニケーションが少ないため、職場での連帯感や仲間意識が薄れ、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。
自己管理の難しさ
リモートワークでは、自己管理能力が強く求められます。時間管理や業務の進行管理を自分で行う必要があり、オフィスのように周囲の目がない環境では、つい怠けてしまうことがあります。自宅には仕事以外の誘惑(テレビ、家事、家族など)が多いため、集中力を維持するのが難しいこともあります。
成長の機会の希薄化
リモート環境では、従来のように先輩社員の働き方を直接見て学ぶ「OJT(オンザジョブトレーニング)」が難しくなります。職場でのリアルタイムな指導やフィードバックが減少し、成長の機会が限られる可能性があります。また、上司や同僚とのカジュアルな会話を通じた学びや気づきの機会も減少します。その結果、スキルアップやキャリアの発展が遅れることが考えられます。
人事が取り組むべきリモートワークの施策
リモートワークを効果的に運用するためには、従業員のエンゲージメントを維持しつつ、生産性を高める仕組みを導入することが重要です。3つの観点で人事が取り組むべき施策をまとめています。
コミュニケーションとチームビルディングの強化
定期的なオンラインミーティングを行い、企業の目標やプロジェクトの進捗状況の共有が大切です。また、複数人が参加する会議だけでなく、上司と部下間、メンターとの1on1ミーティングの実施も重要です。これにより、個々の課題や進捗を詳細に把握し、適切なサポートが提供できます。
パフォーマンスの管理とキャリア開発の仕組み
業務時間だけでなく、成果への貢献度や目標達成度合いに基づく評価制度を導入することが重要です。また、オンライン上でもスキルを学べるeラーニングのプラットフォームや、新入社員とメンターとのメンター制度も効果的です。これにより、リモート環境でも従業員の成長とキャリア開発を支援します。
セキュリティとITインフラの整備
VPNの利用やデータ暗号化、エンドポイントセキュリティの強化など、セキュリティポリシーを明確にし、定期的にセキュリティトレーニングを実施して従業員のセキュリティ意識を向上させることが重要です。また、コミュニケーションツール(Slack、Microsoft Teamsなど)やプロジェクト管理ツール(Asana、Trelloなど)を導入し、リモートワークでの生産性を高めるITツールの整備も必要です。
これらの施策を通じて、リモートワーク環境を整備し、従業員が快適かつ生産的に働けるようにサポートすることが重要です。
まとめ
人材獲得競争が激しくなる中で、リモートワークの導入は競争優位性をもたらす効果があります。ただし、導入にかかるコストやデメリットを考慮し、リモートワークが機能する組織体制を構築することも重要です。最初からすべての施策を実行するのではなく、試験的に特定の部署から導入を始め、少しずつその組織に合ったやり方を見つけていくことが効果的です。こうすることで、企業はリモートワークのメリットを最大限に引き出し、デメリットを最小限に抑えながら、適切なリモートワークの仕組みを構築することができるでしょう。