人事戦略
2025.02.05
エンゲージメントとは? 注目される従業員エンゲージメントについて解説
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近年、職場環境の改善や働きがい向上が注目される中で、「エンゲージメント」という言葉が多く使われるようになっています。とくに社員のエンゲージメント向上は、企業の成長と密接に関係しています。この記事では、エンゲージメントの基本的な意味や注目されている背景、メリット、エンゲージメントを向上させるための取り組みなどを紹介します。
エンゲージメントとは?
エンゲージメント(Engagement)とは、直訳すると「関与」や「積極的な参加」を意味します。ビジネスの場では、社員が仕事や組織に対してどの程度情熱を持ち、献身的であるか、またどれだけ深く関与しているかを指します。
高いエンゲージメントを持つ社員は、自ら進んで業務に取り組み、会社の目標達成に向けて積極的に行動します。一方でエンゲージメントが低い社員は、職場への関心が薄れ、生産性や士気が低下しがちな傾向にあります。
エンゲージメントが注目される背景
エンゲージメントが注目されるようになった背景には、社会的・経済的な変化や組織の在り方の多様化など、さまざまな要因が関係しています。以下に、エンゲージメントが注目されるようになった主な要因を3つ紹介します。
- 人材不足と競争の激化
- 働き方の多様化
- メンタルヘルスへの関心の高まり
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人材不足と競争の激化
少子高齢化や労働人口の減少に伴い、企業は優秀な人材を確保することがこれまで以上に困難になっています。このような環境下では、採用だけでなく、既存の社員をいかに引き止めるかが重要となります。その点、エンゲージメントが高い社員は、離職率が低く、職場に長くとどまりやすい傾向があります。
働き方の多様化
昨今、リモートワークやフレックス制など、新しい働き方が普及しています。しかし、組織内の物理的な距離が増えることで、社員の孤立感が高まり、会社との結びつきが弱まるリスクもあります。このような状況では、社員が「自分は組織の一員である」と実感できるよう、エンゲージメントを向上させる取り組みが必要になります。
メンタルヘルスへの関心の高まり
職場でのストレスやメンタルヘルスの問題が注目されるようになったことで、社員の心理的な幸福感が企業のパフォーマンスに与える影響が認識されるようになりました。エンゲージメントが高い社員は心理的な安定感を持ち、モチベーションを維持しやすくなります。エンゲージメント向上の取り組みを通じて、社員が安心して働ける環境を整えることは、メンタルヘルス問題の予防や解消にもつながります。
以上の背景から、エンゲージメントは企業の成長と社員の幸福の双方にとって重要な概念として、今後もますます注目されていくことが考えられます。
エンゲージメント向上で得られるメリット
エンゲージメントが向上することは、社員個人の満足度や働きがいを高めるだけでなく、組織全体にもさまざまなメリットをもたらします。以下に、エンゲージメント向上で企業が得られるメリットを3つ紹介します。
- 生産性の向上
- 離職率の低下
- 社内文化の改善
それぞれ詳しく見ていきましょう。
生産性の向上
エンゲージメントが高い社員は、業務に対する情熱や責任感が強く、効率的かつ集中して仕事に取り組む傾向があります。また、自ら積極的に新しいアイデアや解決策を提案する傾向もあります。結果として、個々のパフォーマンスが向上し、チームや組織全体の生産性の向上やイノベーションの促進につながります。
離職率の低下
エンゲージメントが高い社員は、組織や仕事に対する満足度が高く、自分が組織に貢献しているという実感を持ちやすいため、退職を考えにくくなります。同時に優秀な人材を長期間確保できることで、組織の安定性やノウハウの蓄積が進みます。
社内文化の改善
エンゲージメントの高い社員が多い職場では、前向きで協力的な文化が育まれます。これにより、同僚同士が支え合い、個々のパフォーマンスだけでなくチーム全体の成果も向上します。社内文化の改善は社員の定着率を促します。
エンゲージメントが高まることで、生産性の向上や離職率の低下といった短期的な効果とともに、イノベーションの促進や業績の向上、社員の幸福感向上といった長期的な成果をもたらします。企業が持続可能な成長を実現するためには、エンゲージメントを高める施策が効果的と言えるでしょう。
エンゲージメントを下げる要因
社員のエンゲージメントを向上させるためには、その逆の要因であるエンゲージメントを下げる要因を正確に把握し、解消する取り組みが欠かせません。以下に、エンゲージメント低下につながる主な要因を5つ紹介します。
不適切なマネジメント
上司のリーダーシップやマネジメントスタイルが社員に与える影響は非常に大きいです。適切な指導やサポートがない場合、社員は不満やストレスを感じ、エンゲージメントが低下します。たとえば、上司が部下の意見を受け入れなかったり、成果を認めず、フィードバックをしない場合、社員は「軽視されている」と感じ、モチベーションや仕事への情熱を失います。
コミュニケーション不足
組織内でのコミュニケーションが不足すると、社員は孤立感を覚えやすくなります。また、情報が適切に共有されないことで、誤解や混乱が生じ、業務効率が低下します。たとえば、会社の目標や方針が十分に共有されていない場合や、上司や同僚との対話がほとんどなく、自分の仕事の改善点がわからないまま業務をさせられている場合がこれに該当します。
ストレス過多な職場環境
心理的な職場環境が快適でない場合、社員のエンゲージメントは大きく低下します。社員が集中できない環境や、ストレスを感じる人間関係がある職場では、モチベーションの維持が難しくなります。たとえば、オフィスが騒がしく業務に集中できなかったり、ハラスメントや偏見が横行している場合、心理的安全性が損なわれ、職場での居心地の悪さを感じます。
不公平感や評価の偏り
努力や成果が正当に評価されない、または特定の社員だけが優遇されていると感じる職場では、社員の不満が高まりやすくなり、エンゲージメント低下の直接的な原因となります。たとえば、成果よりも上司の個人的な好みが評価に影響したり、評価基準が曖昧で一貫性がない場合、職場に対する信頼が損なわれやすくなります。
福利厚生や報酬への不満
適切な報酬や福利厚生が与えられていないと感じると、社員は「自分が十分に評価されていない」「もっと良い職場があるのではないか」と感じ、エンゲージメントの低下を招きます。たとえば、市場相場よりも低い給与や賞与が設定されている場合や、福利厚生が実質的に利用しにくい場合がこれに該当します。
エンゲージメントを下げる要因は、組織内の仕組みによるものが多く見られます。これらの課題を早期に特定し、早期に改善することで、エンゲージメント低下のリスクを抑えることができるでしょう。
エンゲージメント向上の施策例
エンゲージメントを向上させるためには、社員が職場や仕事に対して意欲的に関与できる環境や仕組みを整えることが求められます。以下に、エンゲージメント向上の施策を具体例とともに4つ紹介します。
- 社員との対話やアンケートの実施
- キャリア開発の支援
- 働きやすい職場環境の整備
- 社内表彰制度の拡充
それぞれ詳しく見ていきましょう。
社員との対話やエンゲージメント調査の実施
社員が「自分の意見が重要視されている」と感じることで、組織への信頼感が高まります。意見を聞く仕組みを整えることで、社員の不満や改善点を把握し、一人ひとりへの対応が可能になります。また、社員の意見を企業の取り組みに積極的に取り入れていくことも重要です。
具体策としては、1on1ミーティングを通じて社員と個別に対話することや、定期的なエンゲージメント調査の実施などが考えられます。
キャリア開発の支援
社員は、自分の成長やキャリアの発展が明確に感じられる職場に対して、高いエンゲージメントを示します。企業は、スキルアップやキャリアパスの機会を与えることで、社員が組織内での未来を描けるよう支援することが求められます。
具体策としては、資格取得支援プログラムの導入やジョブローテーションによるスキル習得の機会を提供することなどが考えられます。
働きやすい職場環境の整備
働きやすい職場環境は社員のモチベーションを高め、エンゲージメント向上に寄与します。働きやすい環境とは物理的な面だけでなく、ハラスメントやキャリアに悩まされることがないなどの心理的な面も含みます。社員が安心して働ける環境を整えることが重要です。
具体策としては、テレワークやフレックス制などの柔軟な働き方の導入、ワークライフバランスを支援する休暇制度の拡充などが考えられます。
社内表彰制度の拡充
社内表彰は、個人やチームの成果を全社的に称賛することで、社員に自己価値を感じさせ、モチベーションを高める施策の一つです。表彰の場を設けることで、社員の努力を見逃さず、仲間からの評価も得られるようになります。
具体策としては、目立った成果を上げた社員を称える年間MVP表彰や、会社の理念や価値観に基づく行動をとった社員の評価などが考えられます。
まとめ
ビジネスの場におけるエンゲージメントとは、社員が仕事や組織に対してどの程度情熱を持ち、献身的であるか、またどれだけ深く関与しているかを指します。社員が意欲的に働くことで、企業全体の生産性向上や離職率の低下、顧客満足度の向上など、さまざまなメリットが生まれます。エンゲージメントを高めるためには、社員一人ひとりが「評価されている」「求められている」と感じられる環境を整え、キャリアの支援や働きやすい職場環境を整えることが求められるでしょう。