人事戦略

2025.03.03

ゴーレム効果とは? ピグマリオン効果との違いや対策を解説

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  • #モチベーション
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ゴーレム効果とは? ピグマリオン効果との違いや対策を解説

「部下のパフォーマンスが落ちている理由がわからない」

「チーム全体の士気を上げる方法を知りたい」

このような悩みを抱いたとき、ゴーレム効果をはじめとする心理的な現象について理解し、マネジメントに活かすことが有効です。

この記事では、ゴーレム効果の概要と対策、他の心理効果との違いや、ゴーレム効果がビジネスに与える影響を解説します。部下やチームのモチベーションを上げ、生産性向上につなげたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

ゴーレム効果とは?

ゴーレム効果とは、他者からの評価や期待が低いことによりパフォーマンスが低下してしまうという心理効果のことです。アメリカの教育心理学者、ロバート・ローゼンタール氏が1969年に提唱しました。呪文で動き、額にある文字を消されると人形に戻る泥人形「ゴーレム」が、名前の由来とされます。

ゴーレム効果には「絶対的ゴーレム効果」と「相対的ゴーレム効果」があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。

絶対的ゴーレム効果

絶対的ゴーレム効果とは、他者からの期待を感じられないときや、否定的評価を受けたときなどにパフォーマンスが低下する現象のことです。他者との比較ではなく、自分自身への失望や自己肯定感の低下により発生します。

ビジネスの場面では、「あなたには期待していない」など、上司が部下を低く評価することで生じる可能性があります。

相対的ゴーレム効果

相対的ゴーレム効果とは、周囲からの期待や評価、能力が低い集団に属することで、個人のパフォーマンスが低下する現象のことです。

いくら自分が努力しても集団としての成果が上がらない状況に置かれると、モチベーションやパフォーマンスが低下しかねません。たとえ優秀な人材であったとしても、成果の上がらないチームに属することで、本来の能力を十分に発揮できなくなるおそれがあるのです。

ゴーレム効果とよく似た心理効果

モチベーションやパフォーマンスに作用する心理効果には、ゴーレム効果以外に以下のものがあります。

  • ピグマリオン効果
  • ホーソン効果
  • ハロー効果

それぞれの違いを確認し、部下とのコミュニケーションに役立てましょう。

ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは、周囲から高い評価や期待を得ることで、パフォーマンスが向上する心理効果のことです。他者からの評価や期待の有無と、それによるパフォーマンスへの影響の方向性が、ゴーレム効果との違いです。

ゴーレム効果と同様に、アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタール氏が提唱しました。そのため、ローゼンタール効果とも呼ばれることもあります。

ポジティブな声掛けをするだけで、相手のモチベーションやパフォーマンスが向上することが期待できるため、マネジメントをする際はぜひ積極的に取り入れたい効果の1つです。

ホーソン効果

ホーソン効果とは、周囲からの注目に応えようとしてパフォーマンスが向上する心理効果のことです。ハーバード大学のジョージ・エルトン・メイヨー教授によって提唱されました。

ホーソン効果で重要なのは、注目度の大きさです。注目されている、自分に関心が集まっていると感じることが肝心で、期待の高さや評価は関係ありません。

ハロー効果

ハロー効果とは、一部の目立つ特徴の影響を受け、全体の評価がゆがむ現象のことです。アメリカの心理学者エドワード・L・ソーンダイク氏が、1920年の論文で提唱しました。

ハロー効果には、ポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果があります。ポジティブ・ハロー効果とは、一部に与えられた高評価が全体の評価を高くしてしまうことを指します。たとえば、学歴が良いことで仕事の能力も高いだろうと評価されるケースが該当します。

ネガティブ・ハロー効果とは反対に、一部の悪い評価が全体の評価を下げてしまうことを指します。具体例としては、デスクの周りが散らかっているから仕事ができないと評価されるケースが挙げられます。

ゴーレム効果がビジネスに与える4つの影響

ゴーレム効果は、ビジネスにおいて以下の4つのマイナスの影響を与えることがあります。

  • 自己肯定感の低下
  • 組織全体のパフォーマンスの低下
  • チャレンジ精神の低下
  • 成長機会の損失

ここでは、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

自己肯定感の低下

ゴーレム効果は、実際の能力にかかわらず自己肯定感の低下を招きます。

本当は優秀な人材であったとしても、ネガティブになることで自分の実力を過小評価するようになり、力を発揮することが難しくなります。

実力を発揮できない状況が続くと、さらに自己肯定感が下がるといった悪循環に陥るおそれもあるため、十分な注意が必要です。

組織全体のパフォーマンスの低下

ゴーレム効果が発生した組織は、全体のパフォーマンスが低下しやすくなります。上司が組織全体にマイナスの発言を繰り返すと、部下に広くゴーレム効果が発生し、組織全体のパフォーマンスの低下を招きます。また、特定の社員に発生したゴーレム効果が周りの社員に広がり、組織全体のパフォーマンスが下がるという形で影響が現れる場合もあるでしょう。

組織全体のパフォーマンスが低下すると、多くの部下にネガティブな発言や行動が見られるようになり、さらにゴーレム効果が広がるといった悪循環が発生します。

チャレンジ精神の低下

ゴーレム効果により自己肯定感が低下している状況では、ネガティブな思考に陥っているため、新たなチャレンジに取り組むことが難しくなるでしょう。

また、ゴーレム効果によりパフォーマンスが低下した社員や組織は、チャレンジできるような責任のある業務を割り当てられる可能性が乏しくなるといえます。新たにチャレンジできる機会が著しく減少することで、チャレンジ精神を持つことや新しいアイデアを生み出すことが難しくなります。

成長機会の損失

ゴーレム効果により、チャレンジ精神や前向きな取り組みが低下した社員や組織は、新たな業務に携わる機会が減り、成長することが難しくなります。

成長機会が失われると、さらなる自己肯定感の低下につながり、モチベーションや成果の低下傾向も強まるでしょう。また、成果を出せないと、人事評価の向上も期待できません。これらにより、さらにゴーレム効果が広がる可能性があります。

ゴーレム効果の影響を抑える対処法

ゴーレム効果が発生すると、自己肯定感やチャレンジ精神が低下し、思うような成果を出せなくなるでしょう。モチベーションを保ち継続的に成果を上げるには、ゴーレム効果による影響を受けないよう、社員自ら対策をとることが重要です。

ここでは、ゴーレム効果の影響を抑える2つの対処法を解説します。日々の業務に取り組む際の注意点として留意するとよいでしょう。

他人と比較することをやめる

ゴーレム効果を抑えるには、他者との比較をやめることが重要です。

他者との比較は、自己肯定感の低下につながるおそれがあります。たとえ評価が高い同僚がいたとしても、他者の評価は自分の評価とは関係ない、と割り切ることがポイントです。

他者と比較するのではなく、自己分析を実施して自分の強みを知ることで、自己肯定感の低下を防げます。また、自己研鑽により成長機会を作ることも、ゴーレム効果を軽減する効果があります。

スモールステップを意識する

スモールステップを意識することも、ゴーレム効果への対処法として有効です。

大きすぎる目標は達成感を得にくいため、自己肯定感の低下につながりやすいとされます。スモールステップを意識し、小さな成果をコツコツと積み上げることで、達成感の獲得や自己肯定感の向上を目指しましょう。

上司からの期待や評価を感じられない状況だったとしても、自分自身で成果を感じることで、ゴーレム効果の軽減が期待できます。なお、スモールステップを実施する際は、進捗状況を記録し成長を可視化できるようにするとより効果的です。

ゴーレム効果を防ぐために上司ができること

ゴーレム効果が発生しない職場づくりを目指すうえでは、社員1人ひとりの心がけのほかに、上司による対策も必要です。ここでは、上司ができる以下の3つの対策方法を解説します。

  • 部下の実力に合った目標を設定する
  • 加点式のフィードバックを取り入れる
  • マネジメント研修を実施する

それぞれの内容をしっかりと確認し、パフォーマンスの高い職場の実現を目指しましょう。

部下の実力に合った目標を設定する

ゴーレム効果の発生を防ぐには、部下の実力に合った目標の設定が重要です。高すぎる目標を設定すると、いくら頑張っても未達になるため、自己肯定感の低下を招きます。

目標の設定や仕事の割り振りを決める際は、まずは部下の実力を見極め、達成感を得られるものにしましょう。また、仮に部下が失敗したとしてもネガティブな評価をするだけではなく、挽回するチャンスを与えることも大切です。

加点式のフィードバックを取り入れる

加点式フィードバックを取り入れることも、ゴーレム効果の抑制に効果があります。減点方式のフィードバックにより改善点や課題ばかりを指摘すると、ゴーレム効果が発生し自己肯定感が低下します。

部下を評価する際はぜひ、成果を評価する加点式を採用してみてください。また、部下の評価を実施した後は、フィードバックとしてポジティブな声掛けをすることも重要です。

マネジメント研修を実施する

マネジメント研修を実施することも、ゴーレム効果の抑制につながります。ゴーレム効果をはじめとする心理効果は、マネジメントに非常に有効です。しかし、管理職全員が心理効果について知識があるとは限りません。

マネジメント研修の実施により、ゴーレム効果についての意識が管理職に広がれば、社内全体でゴーレム効果の軽減とパフォーマンス向上が期待できるでしょう。

まとめ

ゴーレム効果が発生すると、個人はもちろん組織全体の成果が上がらなくなるおそれがあります。ゴーレム効果を防ぐため、他者と自分を比較しない、スモールステップを意識しコツコツと成果を積み上げるといったことを意識し、自己肯定感を高めましょう。

部下のモチベーションやパフォーマンスが高い職場づくりを目指すには、ゴーレム効果が発生しないよう、上司が適切な対処をとることも必要です。適切な目標設定やフィードバック、マネジメント研修の実施など、組織全体での取り組みをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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