人事労務
2025.03.06
始末書とは? 書き方や顛末書との違い、例文を紹介
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始末書は、不祥事やミス、トラブルを起こした社員に反省を促し、再発防止を誓約させる書類です。始末書の作成によって自らの行動を振り返ることで、問題行動を改めるきっかけとなります。
この記事では、始末書の目的や書き方、注意点などを解説します。シーンごとの例文も紹介しますので、参考にしてください。
始末書とは
始末書とは、トラブルなどを起こした社員が作成・提出する書類のことです。事実関係を明らかにし、社員に反省を促して、再発防止を図るために提出してもらいます。
始末書の目的
始末書の目的は、トラブルなどを起こした社員に反省を促し、再発防止を誓約させることです。ミスやトラブルを起こした社員が自ら始末書を作成することで、経緯を振り返り、原因や責任の重さなどを再認識してもらうことができます。再発防止に向けての意識を高めることができるでしょう。
また、始末書は、基本的には懲戒処分の一つに位置づけられるものであり、会社側にとっては、社員を記載の行為に基づき処分したことの証拠書類となります。
顛末書・反省文との違い
始末書と似た書類に、顛末書・反省文があります。
顛末書とは、ミスやトラブルが「なぜ起きたのか」を報告することを目的に作成する書類です。発生した問題の経緯や原因など一部始終をまとめ、社内で共有します。
始末書も同様の内容を記載しますが、主な目的は本人の反省を促すことです。これに対し、顛末書は、事実関係を報告し、今後の再発防止に役立てることを主な目的とします。
始末書と反省文は、社員の反省を促すという点では同じです。ただし、始末書が懲戒処分の一つとして提出を求めるものであるのに対し、反省文は懲罰の対象にはならず、上司と社員間の報告にとどまるケースが多いでしょう。
始末書を作成するケース
始末書を作成するのは、主に次のようなケースです。
- 社員が遅刻や無断欠勤を繰り返した場合
- 社員が会社の貸与物や備品を紛失・毀損した場合
- 業務上のミスで損害が発生した場合
- 社員が交通事故を起こした場合
社員の責任によりルール違反や重大なミス、不祥事を起こした場合など、口頭注意では不十分で懲戒処分が妥当といえるケースで、作成が求められます。
始末書の書き方
始末書はただ謝罪や反省を書くだけでなく、問題となった事項や解決に至るまでのプロセスを記録する文書です。そのため、必要な記載事項を漏らさず書かなければなりません。
ここでは、始末書の記載項目や書き方のポイントを解説します。
記載項目
始末書には、次の項目を記載します。
- 問題となった事項
- 発生日時
- 発生場所
- 謝罪
- 経緯や原因
- 再発防止策
まず、「どんな問題が、いつどこで起こったのか」を明確にするために、日時と場所を記載します。あわせて、不祥事やトラブルを起こしたことへの謝罪の言葉の記載が必要です。
さらに、起こったことへの経緯や原因を分析して記載し、それに対する反省も記載します。それらを踏まえ、今後どのように改め、再発を防止するのかを具体的に記載し、再発防止に努める姿勢を示します。
書き方のポイント
始末書は、事実を明確にし、わかりやすく書くことが大切です。書き方のポイントを見ていきましょう。
事実を明確にする
始末書は事実を曖昧にせず、日時や経緯をできる限り明確にすることが必要です。何がどのように起きてしまったのか、読み手がすぐに理解できるように書きます。
トラブルが長期にわたっている場合は、時系列に整理してまとめると状況を把握しやすくなるでしょう。
言い訳を書かず、事実のみを記載することが重要です。
わかりやすく簡潔に書く
始末書は誰が読んでもわかりやすく、簡潔に書くことも大切です。複雑な内容の場合は要点を整理して箇条書きにしたり、見出しをつけたりして、内容を把握しやすいようにします。
次のような流れにすると、理解しやすくなるでしょう。
- 反省と謝罪を伝える
- 不祥事やトラブルの内容を書く
- 反省の姿勢を示す
- 再発を防ぐための対策を説明する
一文は短く書き、回りくどい文章を避けて客観的に書くことを心がけましょう。
始末書のテンプレート・例文
始末書のテンプレートは会社ごとに異なりますが、一般的に次のような形式で作成します。

ここからは、始末書の例文を3つのシーン別に記載します。
会社の備品を破損した場合
貸与を受けた会社の備品を破損したケースの例文は、次のとおりです。
この度は、会社より貸与されているノートパソコンを〇年〇月〇日に自宅に持ち帰ったところ、不注意により破損させてしまいました。皆さまにご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。 本来であれば保護ケースに入れるべきであるにもかかわらず、そのままカバンに入れて持ち運び、取り出したときに手が滑って床に落としたことが原因です。 今後は、このようなことが起きないよう、貸与を受けたものは慎重に扱うように留意し、必ず保護ケースに収納するようにいたします。 |
遅刻した場合
遅刻を繰り返している場合も、始末書作成の対象になります。例文は次のとおりです。
この度は、〇〇年〇月〇日から〇〇年〇月〇日の期間、正当な理由もなく遅刻を繰り返したことにより、業務に支障をきたすことになりました。会社やチームの皆様に多大な迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。 上司である〇〇課長より再三の注意を受けていたにもかかわらず遅刻を繰り返してしまったのは、私の自己管理能力が欠けていたことが原因です。社会人としての責任を果たすことができず、深く反省しております。 今後は同じことを繰り返さないよう自己管理に努め、スケジュールに余裕をもって行動するよう心がけてまいります。 |
事故を起こした場合
社用車を運転中に事故を起こしたケースの例文は、次のとおりです。
〇〇年〇月〇日、営業先の〇〇株式会社に社用車で向かう途中、交通事故を起こしてしまいました。深くお詫び申し上げます。 交通事故の原因は、運転中における前方不注意です。横を走る自転車が気になり、一瞬視線を移した際に信号が変わり、減速した車に追突してしまいました。 事故後、早急に警察と保険会社に報告し、会社にも連絡を入れました。幸い、双方に怪我はありませんでしたが、先方の車両後部が損傷し、自社の車両も前方部分が大きく破損している状況です。被害者の方には謝罪をいたしました。 今回の交通事故は社用車によるものであったため、会社にも運行供用者責任および使用者責任を発生させてしまい、大変申し訳ございません。 今後はこのようなことがないよう、運転中は前方確認を怠らず、交通ルールを徹底遵守して再発防止に努めてまいります。 |
始末書を提出してもらう手順
社員が重大なミスやトラブルを起こし、始末書の作成が妥当だと判断した場合、次の手順で始末書を提出してもらいます。
- 社員や関係者と事実関係を確認する
- 始末書の提出を求める
- 改善に向けて指導を行う
まず、始末書を提出してもらう前提となる事実関係に間違いがないか、社員や関係者に確認します。ミスやトラブルの内容、原因などを聞き取り、事実を明確にしてから始末書の提出を求めましょう。
また、社員が正しく始末書を記載できるよう、記載すべき内容がわかるフォーマットや提出方法を定めておく必要があります。
始末書を提出して終了ではなく、改善に向けて指導する体制を整えておくことも大切です。
始末書の提出に関する注意点
懲戒処分として始末書の提出を求める際には、その根拠が就業規則等に明記されていることが必要です。また、始末書を提出したことを人事評価に反映する際は、業務への評価とは区別しなければなりません。
ここでは、始末書の提出に際して注意したい点を解説します。
就業規則等に明記する
懲戒処分として始末書の提出を求める場合は、始末書の提出を内容とする懲戒処分について就業規則等に明記されていることと、対象となる社員の行為が就業規則等に定められた懲戒事由のいずれかに該当することが必要です。
懲戒処分ではなく、業務命令として始末書の提出を求めることも可能です。その場合、雇用契約に基づく指揮命令権限の行使として、始末書の提出が必要かつ合理的であるかどうかを確認しなければなりません。指示を出す際は、提出の理由と目的を社員に明示し、理解を得る必要があります。
人事評価への反映に注意する
人事評価では、始末書の提出を理由としてマイナスの評価をつけることになるでしょう。始末書の提出があったにもかかわらずマイナス評価をしないとすると、不公平な評価となってしまいます。
ただし、始末書を提出した件と業務に関する評価とを渾然とさせないよう注意してください。
始末書の提出があったことをもって評価期間の評価を下げるのではなく、評価期間中の活動を適切に評価し、そのうえで始末書に関する件に該当する評価項目にマイナスを加えていきます。
また、評価内容についてフィードバックを行い、始末書を提出したことで、どの項目がマイナス評価になっているのかを説明するようにしましょう。
提出後の対応をチェックする
始末書の提出後は、問題となった行動を改善できているかどうかのチェックと、改善に向けた継続的な指導が必要です。改善が見られない場合は、さらなる懲戒処分の検討が必要になるでしょう。
改善状況を確認するためには、業務改善計画を作成することも有効です。業務改善計画とは、業務改善のために、課題やゴール、実施方法などを整理した計画のことです。社員は上司の協力を得て改善目標を設定し、会社は改善の進捗状況をモニタリングします。業務改善計画を取り入れることで、改善指導を効果的に進められるでしょう。
まとめ
始末書は、ミスやトラブルを起こした社員に反省を促し、再発を防止する目的があります。問題を起こした社員が始末書を書き、適切な処分を受けることは、規範・ルールを遵守する企業風土の醸成につながります。規範・ルールを逸脱した行動を見逃さないという会社の姿勢を始末書という形で示すことで、組織の一体化にもつながるでしょう。
ただし、ミスやトラブルの再発を防止するためには、会社としては処分を行うだけでなく、誰もが能力を発揮できる環境を作っていくことも大切です。