人事労務
2024.08.29
職場でのモラハラとは? モラハラをする人の特徴やリスク、対策方法をわかりやすく紹介
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モラハラは被害者の精神的な健康を損ない、職場の環境を悪化させ、企業全体の生産性を下げる要因となります。被害を減らすためには、モラハラへの理解を深め、職場全体での意識改革や具体的な防止策を取っていくことが求められます。
この記事では、モラハラが職場に及ぼす悪影響やモラハラをする人の特徴、具体的な対策などを紹介します。
モラハラとは?
モラハラは「モラルハラスメント」の略であり、言葉や態度を通じて相手の精神的な健康を侵害する行為を指します。物理的な暴力を伴わないため、被害者がその被害を認識しにくい場合が多く、問題が長期化する傾向があります。
具体的には以下のような言動がモラハラに該当します。
人格否定
人格否定を否定するような言葉で相手を傷つけることです。たとえば、「バカ」や「クズ」などの侮辱的な言葉や、個人を蔑むようなあだ名をつけることで自尊心を傷つける行為がこれに該当します。
無視
相手を故意に無視する行為です。たとえば、必要な会議やミーティングに招待せず、重要な情報を意図的に共有しなかったり、日常的な挨拶や会話を無視して相手の存在自体を軽視するような態度を取ることが例に挙げられます。
過剰な批判
些細なミスを大げさに批判する行為です。社員のミスや失敗について、業務の結果ではなく、個人の資質や能力に対して批判したり、他の同僚の前で大げさに怒鳴りつけることなどが該当します。
操作や脅迫
相手を心理的に操作しようとすることです。「これ以上ミスをしたら仕事を辞めさせる」「ボーナスに響くぞ」など、地位や給与を口実に相手を脅し、自分の意のままに操ろうとする行為が該当します。
モラハラによる企業への影響やリスク
モラハラは企業に様々な影響を及ぼします。
モラハラの被害者は、ストレスや不安により生産性が低下します。この影響は被害者だけにとどまりません。ハラスメントが蔓延する職場環境では、他の社員の士気も下がり、チーム全体のパフォーマンスが低下します。また、法的なトラブルに発展するリスクも高まり、訴訟費用や賠償金が発生する可能性があります。
モラハラは離職率の増加にも影響します。ハラスメントを目撃した社員も職場に対する信頼を失い、退職を選ぶことがあります。結果として、新たな人材の採用や教育にコストがかかってしまいます。
企業の評判も大きく損なわれます。モラハラの存在が公になると、企業のブランドイメージが悪化し、顧客や取引先からの信頼を失うことがあります。とくに昨今、インターネットやSNSを通じて、ハラスメントの存在が公になるケースが増えています。
このように、長期的な企業の成長と発展に深刻な影響が出るリスクがあるため、モラハラの対策は必須と言えるでしょう。
モラハラが発生しやすい環境
モラハラが発生しやすい職場にはいくつかの共通点があります。どのような環境で起こりやすいかを理解することで、未然にモラハラを防ぐことができるかもしれません。
- 社員のストレスが高い職場
- コミュニケーションが希薄な職場
- 権力の不均衡が顕著な職場
- 過去にモラハラが見過ごされている職場
それぞれ詳しく見ていきましょう。
社員のストレスが高い職場
職場における過剰なストレスは、モラハラの発生を助長します。長時間労働や厳しい目標が設定されている場合、社員同士の対立や不満が高まりやすくなり、溜まった鬱憤を他の社員に向けやすくなります。とくに競争が激しく、個人の成果が重視される職場では、他者を蹴落とすような行為が助長されます。
コミュニケーションが希薄な職場
社員間でのコミュニケーションが不足している職場では、誤解や不満を生み、モラハラが発生しやすくなります。昨今では、リモートワークによる直接的なコミュニケーションの不足がモラハラに繋がった事例も確認されています。
権力の不均衡が顕著な職場
権力や地位の差が大きい環境では、上司が部下に対してモラハラを行いやすくなります。とくにハラスメント行為を禁止する明確なルールが設定されておらず、ハラスメントへの理解が低い職場においては、上司が権力を濫用して部下を支配しようとするモラハラが発生しやすくなります。
過去にモラハラが見過ごされている職場
過去にモラハラが見過ごされていたり、適切に対応されていなかった職場では、その後も同様の行為が繰り返されやすくなります。社員がハラスメントに対する意識を持ちづらくなるからです。
これらの環境を改善することは、職場からモラハラをなくす有効な手段と言えます。
その他のハラスメント
ハラスメントには様々な種類があります。職場環境を守るためには、それぞれの特性や影響を理解することが重要です。以下に、代表的な3つのハラスメントを紹介します。
- セクハラ
- パワハラ
- マタハラ
それぞれどのようなハラスメントで、具体的にどのようなケースが見られるのでしょうか。
セクハラ
セクハラ(セクシャルハラスメント)は、性的な言動により相手に精神的な苦痛や不快感を与える行為です。たとえば、性的な冗談やコメント、身体的な接触、不適切な誘いなどがこれに含まれます。男性から女性に行われる印象の多いセクハラですが、実際は男女問わず、また同性間でも発生することがあります。
パワハラ
パワハラ(パワーハラスメント)は、職務上の地位や権限を背景に、精神的または身体的な苦痛を与える行為です。たとえば、業務で成果が出せない部下に対して過度なプレッシャーをかけたり、故意にミーティングに参加させないなどの不平等を強いることもパワハラにあたります。上司が部下に対して行うことが一般的ですが、同僚間でも発生することがあります。
マタハラ
マタハラ(マタニティハラスメント)は、妊娠・出産・育児休業などを背景に行われる嫌がらせや不利益な扱いを指します。たとえば、妊娠や出産を理由に解雇されたり、降格や配置転換などの不利益を被ることが含まれます。また、育児休業に関する権利を行使することへの嫌味や批判もマタハラに該当します。
多くの場合、ハラスメントは複合的に発生します。たとえば、パワハラとモラハラが同時に行われる場合、上司が部下に対して侮蔑的な暴言を吐くとともに過度な業務を強要するケースが考えられます。また、セクハラとパワハラが組み合わさることで、性的な言動に従わない場合に、業務上の不利益を与えると脅すことがあります。そのため、すべてのハラスメントに対して理解を深め、対策をしていくことが求められます。
参照:厚生労働省
モラハラを行いやすい人の特徴
モラハラを行いやすい人には、いくつかの共通する特徴があります。これらの特徴を知ることで、ハラスメントを行っている社員を早期に特定できるかもしれません。
- 自己中心的である
- プライドが高い
- 嘘をつくことが多い
- ストレスが溜まっている
- 過去にハラスメントを受けていた
これらの特徴を理解することで、モラハラの予防や早期発見に役立てることができます。企業は、これらの特徴を持つ人物がハラスメント行為に及ばないよう、適切な対策を講じることが重要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
自己中心的である
モラハラをする人は自己中心的な性格が多く、他人の感情や立場を無視する傾向があります。自分の都合で物事を進めようとする上で、都合の悪い社員を攻撃し、精神的にコントロールしようとすることがあります。
プライドが高い
モラハラを行う人はプライドが高く、自分を高く見せたいという欲求が強いです。そのため、他人の成功や評価に対して嫉妬し、自分が優位に立とうとする傾向があります。これは、自分の権威を維持したいという願望から来るもので、他人を貶めることで、自分の自尊心を保とうとするからです。
嘘をつくことが多い
モラハラをする人は、自分を守るために平気で嘘をつくことがあります。時には無意識的に嘘をつき、自分が嘘をついていることに気づかないこともあります。嘘をつくことで、他人を操り、自分の立場を有利に保とうとします。
ストレスが溜まっている
仕事や家庭でのストレスが溜まっている場合、他者にハラスメントを行うことで、ストレスを発散しようとします。とくに感情のコントロールが苦手な人は、怒りや不満を直接他人に向ける傾向があります。
過去にハラスメントを受けていた
モラハラを行う人は、過去に自分がハラスメントを受けた経験がある場合が多いです。その経験から、他人に対して同様の行動を取ることが正常であると認識してしまうことがあります。これにより悪循環が生まれ、ハラスメント行為が続くことになります。
参照:あなたの弁護士
モラハラ防止のための施策
モラハラを防止するために、企業はどのような施策を実施すればいいのでしょうか。以下に具体策を5つ紹介します。
- ハラスメント防止ポリシーの周知
- 定期的な研修と教育
- 相談窓口の設置
- 評価プロセスの透明化
- 厳正な対応
それぞれ詳しく解説していきます。
ハラスメント防止ポリシーの周知
企業はハラスメント防止のための明確なポリシーを策定し、全社員に周知する必要があります。このポリシーには、モラハラを含むすべてのハラスメント行為を禁止する旨が記載され、違反者に対する具体的な処罰内容も含めるのがポイントです。
定期的な研修と教育
社員に対する定期的なハラスメント防止研修を実施します。モラハラの具体例やその影響、予防策について学ぶ機会を設けることで、自身の行動を見直すきっかけになります。とくに管理職には、適切なリーダーシップとハラスメントの防止方法についての研修を重点的に行うことが重要です。
相談窓口の設置
社員がモラハラについて相談できる窓口を設置します。この窓口は匿名での相談も受け付け、迅速かつ適切に対応する体制を整えることが重要です。相談窓口があることで、モラハラ発生の抑止力にもなります。また、外部の専門機関との連携を図ることも有効です。
評価プロセスの透明化
社員の業務評価プロセスを透明化します。評価基準を明確にし、公平に適用することで、モラハラの原因となる不公平感やストレスを軽減することができます。
厳正な対応
モラハラが発生した場合は、迅速かつ厳正に対応します。事実関係を調査し、加害者に対して適切な処罰を行うことが大切です。再発防止策を講じるとともに、被害者の保護とサポートを優先的に行うことも重要です。
以上の施策を複合的に実施することで、モラハラに限らず、様々なハラスメントを抑制することができ、社員にとって働きやすい職場を実現することができるでしょう。
まとめ
モラハラは、言葉や態度によって相手の人格や自尊心を傷つける行為です。モラハラは被害者の精神的健康に悪影響を及ぼし、生産性やチームの士気を低下させ、離職率の増加や企業の評判低下など、多くのデメリットをもたらします。企業は研修や相談窓口を設置するなどして、予防策を講じることが重要です。