人事労務
2025.01.23
モラハラとは? 職場での具体例や対処法、企業に与える影響について解説
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モラハラが職場で発生した場合、被害者本人の精神的な健康を害してしまうことはもちろん、放置すれば企業イメージの低下や社員の離職につながります。被害が発生しないよう、モラハラに関する十分な理解と防止・対処が求められます。
この記事では、モラハラの意味や特徴を確認したうえで、具体例、防止策について解説します。自社のモラハラ対策を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
職場でのモラハラとは?
「モラハラ」とは、モラルハラスメントの略であり、道徳や倫理に反する言動によって精神的苦痛を与える行為を指します。
前提としてハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」など、人間としての尊厳を傷つけたり苦痛を与えたりする行為のことです。モラハラのほか「パワハラ(パワーハラスメント)」や「セクハラ(セクシュアルハラスメント)」など、職場で行われるハラスメントが社会問題になっています。
ここでは、モラハラの意味やパワハラとの違いを解説します。
モラハラの意味と特徴
モラハラとは、言葉や態度により相手の精神的な健康を侵害する行為のことで、人格を否定するような発言をして侮辱したり、仕事を妨害したりする行為がモラハラに該当します。
モラハラは、物理的な暴力行為ではないことが特徴です。アザや傷など身体的な証拠が残らないために被害がわかりにくく、深刻な状況であることを理解してもらえないケースもあります。
パワハラとの違い
同じく職場で問題となりうるハラスメントの代表例であるパワハラとは、優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて行われ、労働者の就業環境が害されるもののことをいいます。パワハラとモラハラとは「優越的な関係」にあるか否かという点が異なります。
優越的な関係を背景とするケースとしては、たとえば上司の部下に対する行為や、集団による個人に対する行為が挙げられます。
これに対し、たとえば同僚社員の間で行われる嫌がらせ行為は、集団的に行われたといった事情がない限りパワハラにはあたりません。しかし、モラハラに該当する可能性はあります。モラハラは、上下関係の有無は関係なく、誰もが加害者・被害者となりうるのです。
モラハラの具体例
職場で行われるモラハラには、次のような行為が挙げられます。
- 人格を否定する
- プライベートを過度に詮索する
- 社内の人間関係から切り離す
- 仕事を妨害する
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
人格を否定する
相手の人格を否定したり、外見を中傷したりする発言を行い、精神的苦痛を与える行為は、モラハラの典型例です。業務上の注意をする際に、過度に批判する、業務の結果ではなく資質や能力を批判する、わざと人前で叱責する、といった行為もモラハラにあたります。
例として、次のような行為が挙げられます。
- 仕事が遅い同僚に対して、「仕事ができない」「のろい」「バカ」などと発言する
- 同僚の外見について、「ハゲ」「デブ」などとからかう
- 蔑むようなあだ名をつける
プライベートを過度に詮索する
仕事とは関係がないプライベートに過度に立ち入ろうとすることも、モラハラにあたる行為です。家族について執拗に質問したり、プライベートな話を聞き出そうとしたりする行為が挙げられます。
たとえば、次のような行為です。
- 配偶者や恋人についてしつこく質問する
- 退社後や休日の行動を聞き出そうとする
私的なことを悪気なく聞くことはあるかもしれませんが、相手が不快感を抱いた場合モラハラにあたるため、注意が必要です。また、性的な事柄である場合、セクハラにもあたりうることにも留意しましょう。
社内の人間関係から切り離す
職場内の人間関係から特定の人を切り離すような行為は、モラハラに該当します。集団で仲間はずれにする行為はパワハラにあたりますが、1人が行った場合はモラハラにあたるでしょう。
たとえば、次のような行為が該当します。
- 挨拶やメールを無視する
- 社内の食事会やイベントに誘わない
仕事を妨害する
仕事を妨害する行為も、モラハラにあたります。特定の人に対するハラスメントであるにとどまらず、職場の生産性低下にもつながりかねない行為です。
次のような行為が該当します。
- 1人では処理できない大量の仕事を与える
- 仕事に必要な情報を与えない
- わざと雑用ばかりさせる
- 仕事中にしつこく話しかける
モラハラが企業に与える影響
職場でのモラハラは企業にさまざまな悪影響を及ぼします。以下のようなリスクがあることも踏まえ、対策をとることが必須です。
生産性が低下する
モラハラが発生・横行すると、モラハラを受けた被害者の生産性が低下するだけではなく、周囲の社員にも影響が及びます。暴言や妨害行為、無視などが行われている状況では、気持ち良く仕事に従事することができません。モラハラを放置している会社への信頼も失われます。
結果として、仕事へのモチベーションも低下してしまうでしょう。モチベーションの低下によって生産性を下げることにもなり、業績にも影響が及びます。
離職者が増える
モラハラを受けた被害者は、ストレスを抱え休職や離職をしてしまう可能性があります。被害者本人だけでなく、モラハラを見聞きした社員も、信頼やモチベーションの低下から離職を選ぶことがあるでしょう。
離職率が高まり優秀な人材が定着しなくなれば、事業運営の存続にも関わります。離職率の高い企業は求職者からも敬遠されがちであり、労働人口が減少する時代において大きなリスクを抱えることとなります。
企業イメージの低下につながる
モラハラによる被害が発生・拡大した場合、企業イメージが低下し顧客や取引先からの信頼を失うことにもつながりうるほか、訴訟問題に発展する可能性もあります。
使用者は「安全配慮義務」を負うことが法律上定められており(労働契約法5条)、これに基づき、快適に働ける職場環境を提供・維持する義務(職場環境配慮義務)を負うとされています。職場で行われるモラハラは、社員同士の問題ではなく、企業自身の問題であることを認識し、適切な対策をとることが必要です。
モラハラを防止する対策
モラハラを防止するための主な対策として、以下の3つが挙げられます。
- ハラスメント禁止のルールを設ける
- 相談窓口を設置する
- 研修を実施する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ハラスメント禁止のルールを設ける
モラハラをはじめとするハラスメントを禁止するために、ルールづくりが必要です。ポリシーを策定し、就業規則その他の規程にハラスメントの禁止とハラスメントをした場合の処分について明記します。ここでは、禁止の対象となるハラスメント該当行為を明確にすることが大切です。
ルールを定めたら、社員への周知を徹底します。社員に周知する際は、企業としてハラスメントを許さないという姿勢を強く示すことが重要です。
相談窓口を設置する
モラハラをはじめとするハラスメントについて、相談できる窓口を設置することも対策になります。社員による相談がなされることで、表に出にくいモラハラの状況を可視化でき、また、モラハラ発生の抑止力ともなります。
ただし、窓口があっても相談を躊躇する社員がいるかもしれません。そのような場合も考え、定期的な1on1ミーティングを実施したり、カウンセリングを行ったりすることもおすすめです。社員と話す機会を多く設けることで、モラハラ防止・対策につながります。
研修を実施する
モラハラを防ぐためには、社員の一人ひとりがハラスメントについての理解を深めることが大切です。そのため、定期的なハラスメント研修を開催するとよいでしょう。
研修では、どのような場合がモラハラにあたるのか、具体的な事例を示します。無自覚でモラハラを行っているケースもあり、モラハラに該当する行為を明確にすることが防止策として有効です。
モラハラが発生したときの対処法
モラハラの発生を確認したら、迅速な対応が必要です。
次の手順で対処していきましょう。
- 事実関係を調査する
- 当事者にヒアリングを行う
- 被害者のケアを行う
- 加害者に対する懲戒処分を検討する
- 再発防止策を講じる
まず、事実関係を明確にするため、モラハラの有無や実態などの調査が必要です。事実関係を正確に把握しないとその後の対応が適切にできないため、慎重に進めていきましょう。
調査では、加害者や第三者にもヒアリングを行います。被害者と加害者で異なる意見があった場合は、複数の第三者から情報を集め、証拠も収集していきます。
モラハラの証拠となりうるのは、現場を録画・録音したものやメール、モラハラを受けた日時・内容を詳しく記録したもの、モラハラを目撃した第三者による証言などが挙げられます。
モラハラの被害者に対するケアも必要です。被害者の状態を確認し、メンタルケアなどを行います。加害者に対しては、被害者との関係を修復するためのサポートも必要です。
モラハラの事実が認定された場合、加害者に対する懲戒処分を検討します。モラハラに対して厳正な対応を行うことは、今後の抑止効果としての意味も持つでしょう。なお、懲戒処分を行うにあたっては、就業規則等の定めと周知、懲戒権の濫用にあたらないこと、という要件を満たす必要があることに注意して手続を進めましょう。
同じようなモラハラが発生しないよう、モラハラが発生した原因を解明し、再発防止の施策を講じることも大切です。施策を決定したら、内容を社員に周知し、速やかに実施してください。
まとめ
モラハラは、道徳や倫理に反する言動によって精神的苦痛を与える行為であり、表面に出にくいのが特徴です。企業にはハラスメントを防止する義務があり、社員が安心して働ける職場を作らなければなりません。モラハラが横行しないよう、防止策の策定と実施が求められます。