人事戦略
2025.03.03
人事評価が低い社員が辞める原因は? 退職の前兆や対処法を解説
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人事評価制度は、社員の能力を最大限に引き出し、組織全体の目標達成を実現させるための重要な仕組みです。しかし、人事評価の低さを理由に退職する社員が生じることもあるなど、運用には難しさを伴います。
この記事では、人事評価が低い社員が辞める理由と前兆、離職を防ぐ対処法、人事評価に有効な4つの手法を解説します。人事評価を見直し、社員の定着率を上げることを考える際に、ぜひ参考にしてください。
人事評価が低い社員が辞める4つの理由
人事評価が低いことで社員が退職するとき、その背景として、以下のような理由があると考えられます。
- 評価に納得できない
- フィードバックに不満を感じる
- 給与が上がらない
- 仕事にやりがいを持てなくなる
詳しく見ていきましょう。
評価に納得できない
人事評価に納得できないと感じたときは、退職につながる可能性があります。納得ができない評価を受けたという気持ちは、上司や会社への不信感や不満につながるからです。
人事評価に不満を感じる要因の具体例としては、以下のものが挙げられます。
- 評価制度が不明確である
- 評価者によって評価にばらつきがあり不公平に感じる
- 評価結果の説明が不十分である
評価の不透明さや不公平感は、会社への不満を募らせる大きな要因の1つです。不満を抱えきれなくなると、自分の能力や出した成果をしっかりと評価してくれる会社への転職を希望するようになります。
フィードバックに不満を感じる
評価に関するフィードバックへの不満も、退職を考える理由の1つです。フィードバックの内容が不明確である場合、社員としては納得感を得にくく、不満を抱きやすくなります。
また、低評価者へのフィードバックはネガティブなものになりがちですが、ネガティブな内容ばかりでは、不満が高まり退職へとつながりやすくなります。
給与が上がらない
低い人事評価により、昇給への期待が持てなくなることも、退職につながる理由の一つです。
昇給は、勤続年数やスキル、業績などさまざまな事由をもとに実施されます。その事由の一つに人事評価が含まれることが通常であり、評価が低いと昇給が難しくなります。
昇給が望めず現在の会社で働くことへのモチベーションが下がってしまうと、能力に見合った対価が期待できる会社への転職を考えるようになるでしょう。
仕事にやりがいを持てなくなる
低い人事評価を受けたことでモチベーションが低下すると、仕事にやりがいを持てなくなり退職を検討するようになります。
特に、社員自身の評価と人事評価に乖離がある場合や評価基準が不明確な場合は、上司や会社への不信感につながります。場合によっては、この上司の下では働きたくないと、退職を考えるようになるでしょう。
退職する社員に見られる前兆
退職を考える社員には、さまざまな兆候が現れます。日ごろの様子から、会社を辞めたいと考えている社員に早急に気づけるようになれば、退職を防げるかもしれません。
ここでは、退職の前兆として代表的な以下の3つを紹介します。
- 業務に消極的になる
- 会社や同僚と距離をとるようになる
- 不満を言わなくなる
それぞれの内容を確認し、退職を考えている社員の早期発見につなげましょう。
業務に消極的になる
退職を考えている社員は、やりがいやモチベーションの低下により、業務に前向きに取り組めなくなります。また、退職時の引継ぎなどを考え、新たなプロジェクトへの参加に消極的になるといった兆候も見られます。
これまで積極的に業務に取り組んでいた社員のモチベーションやパフォーマンスが急激に下がったときには、要注意です。
会社や同僚と距離をとるようになる
社員が急に会社や同僚と距離をとるようになったときには注意が必要です。たとえば、急にランチや飲み会などに参加しなくなる、業務以外の会話をしなくなるといった様子が見られると、退職を考えている可能性があります。
会社と距離を置くケースには、不満が溜まりできるだけ離れたいと考えている場合と、辞めにくくなることを考慮し距離を置く場合が考えられます。いずれにしても、社員が会社との距離をとるようになったと感じたときには、早めに対処しましょう。
不満を言わなくなる
社員が不満を口にしなくなったときも、退職を考えているサインです。
一般的に、意見や問題点を伝えるときは、改善を期待しているものと考えられます。一方、不満があるにもかかわらずそれらを伝えないのは、背後に諦めや無用なトラブルを避けたいという感情があるといえるでしょう。
会社に対して不満を言わなくなった社員は、すでに退職を決めており、残りの業務を静かに終わらせようと考えている可能性があります。
優秀な人材の離職を防ぐ3つの対処法
人事評価が低い社員の中にも、優秀な人材がいる可能性はあります。そのような人材を、人事評価が原因で失うことは、会社にとって大きな損失となるでしょう。
優秀な人材の離職を防ぐ人事評価をするには、以下の3つの対処法を取り入れることが重要です。
- 評価制度を見直し明確化する
- フィードバックを充実させる
- 評価者の研修を実施する
ここでの内容を参考に、社員にとって納得感がある人事評価の実現を目指しましょう。
評価制度を見直し明確化する
対処法の1つ目は、評価制度の見直しと明確化です。人事評価の基準が不明確だったり、周知が徹底されていなかったりすると、低い評価を受けた社員の不満はより大きくなります。
人事評価の重要な項目として、業績、能力、情意の3つがありますが、各項目の基準や評価のあり方を見直し明確化することで、評価者によって評価が変わることのないようにすることが重要です。
また、評価基準を社員に周知することや、結果を十分に説明することで、モチベーションや納得感の向上を目指しましょう。
フィードバックを充実させる
対処法の2つ目は、フィードバックの充実です。評価を通知するだけでなく、内容や改善方法をフィードバックすることで、不明点や不安の解消とモチベーションの維持を図りましょう。
フィードバックを実施する際のポイントとして、以下の点が挙げられます。
- 明確なフィードバックを行う
- 課題のみではなく、評価できるポイントも伝える
- 評価者だけではなく社員の意見も聞く
フィードバックをする際は、明確にわかりやすく伝える工夫をするとともに、課題のみでなく評価できるポイントも併せて伝えることで、社員のモチベーションアップが期待できます。また、一方的な伝達とならないようにすることも有効です。
フィードバックで社員がどのような印象を持つかは、社員と評価者との関係性によっても変わります。日ごろからこまめにコミュニケーションをとり信頼関係を築いておくことで、スムーズでトラブルのないフィードバックを実施できるでしょう。
評価者の研修を実施する
対処法の3つ目は、評価者研修の実施です。社員の評価は、課長や部長といった上司が担当することがほとんどです。しかし、評価者としてのノウハウやスキルが足りていないことも少なくありません。
評価者研修を実施することで、社内の評価体制の強化を図れます。評価者のスキルが上がることで、人事評価に対する社員の不満を軽減できるでしょう。
納得がいく人事評価を実施する4つの手法
人事評価にあたっては、経営方針や業務内容、社風などに合った手法を選ぶ必要があります。また、定期的に手法を見直すことも必要です。適切な制度設計により、社員が納得できる人事評価を実施し、退職を防ぐことにもつなげられるでしょう。
ここでは、人事評価で用いられる以下の4つの手法を解説します。
- MBO
- OKR
- 360度評価
- 1on1ミーティング
それぞれの手法の特徴を押さえ、人事評価の効果的な見直しを目指しましょう。
MBO(目標管理制度)
MBOとは、社員個人やチームで目標を設定し、達成度や進捗に応じて人事評価を決める手法のことです。評価者の主観が入りにくいことに加え、目標を自ら決めるため、モチベーションの維持や納得感のある評価を実現できる点が魅力といえるでしょう。
リモートワークといった、モチベーションが見えづらい勤務形態の社員の評価に有効とされます。
OKR(目標の設定・管理フレームワーク)
OKRとは、組織が掲げる大きな目標を、社員一人ひとりの小さな目標に落とし込んで評価を実施する手法のことです。組織と個人の目標を連動させられるため、一体感を持ってプロジェクトを進めたい場合などに適しています。
有効なOKRを実現するには、毎月や四半期ごとなど定期的に、進捗確認や成果に対する評価を実施する必要があります。
360度評価
360度評価とは、上司だけでなく、部下や同僚など複数の立場にいるさまざまな社員が評価する手法のことです。
複数人で評価することで、評価者の主観が入りづらく、評価の公平性が向上します。また、上司以外による評価もなされることで、業績だけでなく多方面からの評価が可能です。
360度評価は、比較的納得感を得やすい評価方法の一つといえるでしょう。
1on1 ミーティング
1on1ミーティングは、週に1回や月に1回など、定期的に1対1の面談を実施する手法のことです。フィードバックをこまめに行うことで、社員の成長を促す効果が期待できます。
また、信頼関係の構築が期待できるのも、1on1ミーティングの特徴です。日ごろからコミュニケーションをとることで、社員の納得がいく評価を実現できます。
まとめ
低い人事評価を受けた社員は、評価や給与に不満を抱く、仕事にやりがいを感じられなくなるなどの理由から、会社を辞めるケースがあります。
しかし、人事評価が低い社員の中にも優秀な人材はいます。優秀な人材の流出を防ぐには、前兆に気づけるよう心がけることのほか、社員が納得できる人事評価を実施することが重要です。そのためには、評価制度の明確化、評価基準の周知を徹底しましょう。また必要な場合は、人事評価の基準や手法を見直すことも検討するとよいでしょう。