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2025.03.06

諭旨退職(諭旨解雇)とは? 懲戒解雇との違いや手続、注意点を解説

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諭旨退職(諭旨解雇)とは? 懲戒解雇との違いや手続、注意点を解説

諭旨退職とは、懲戒解雇に相当する行為があった場合に、処分を軽減し、即時解雇ではなく退職の勧告をすることです。退職になることには変わりないため、処分の際は慎重な検討と適切な手続が求められます。

この記事では、諭旨退職とは何かを説明し、処分の要件や実施の流れを解説します。諭旨退職を行う際の注意点も説明しますので、参考にしてください。

諭旨退職(諭旨解雇)とは?

諭旨(ゆし)退職とは、懲戒解雇に相当するような事由があったものの、事情に鑑み、即時解雇とするのではなく、処分を軽減し、退職届の提出を勧告することです。

ここでは、諭旨退職の意味や懲戒解雇との違いを解説します。

懲戒処分の一種

諭旨退職とは、会社が社員に退職を勧告し、これを受け社員が退職届を提出して退職する、懲戒処分の一種です。

懲戒解雇に相当するような事由はあったものの、情状を酌量する状況があるため、処分を軽減して解雇とはせず、退職を求める措置を指します。ただし、退職することには変わりありません。

諭旨退職は、「諭旨解雇」と呼ばれることもあります。諭旨退職と諭旨解雇は、依願退職したものとして扱うか解雇として扱うかという違いはあるものの、実質的には同じ処分であるとされています。

懲戒解雇との違い

懲戒解雇とは、会社が一方的に労働契約を解除する懲戒処分であり、懲戒処分の中で最も重い処分です。

一方、諭旨退職は、懲戒解雇に相当する問題を起こしたことは変わりませんが、情状を酌量する事由があるケースで、温情的に処分が軽減されるものです。

ただし、勧告に従わない場合は懲戒解雇となり、即時に労働契約を解除されるのが一般的です。

退職金の扱い

諭旨退職の場合に退職金をどのように扱うかは、会社ごとに異なります。懲戒解雇の場合、退職金の全部もしくは一部を不支給とするのが一般的ですが、諭旨退職の場合は、「一部を支給しないことがある」など、一部減額とする規定を設けているケースが多いでしょう。

退職金の扱いについては、のちにトラブルとならないよう、就業規則の懲戒規定や退職金規程で明確にしておく必要があります。

諭旨退職は会社都合か自己都合か

社員が退職すると、会社はハローワークに離職証明書を提出します。その際、諭旨退職の離職理由は、自己都合と記載するケースが多いでしょう。しかし、事情によってはハローワークで会社都合と判断される場合もあります。

会社都合退職と自己都合退職とでは失業手当の受給要件等が異なるため、社員にとっても重要な点ですが、どちらにあたるかは、諭旨退職に至った経緯によっても変わります。それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

自己都合になる場合

諭旨退職は懲戒解雇よりも処分を軽減し、退職するかどうかの選択肢を社員に与えるものです。そのため、会社がハローワークに提出する離職証明書の離職理由は、自己都合と記載されることが一般的です。

ハローワークでも、諭旨退職に至った経緯を確認し、社員自身の意思で退職したと判断されれば、そのまま自己都合退職として扱われます。

会社都合になる場合

ハローワークで諭旨退職の経緯が退職勧奨に近いと判断されれば、会社都合の退職とするように補正を求められる場合もあります。退職勧奨とは、会社から働きかけて社員に退職を促すことです。

基本的に自己都合退職は純粋に社員側の都合による退職ですが、諭旨退職は形式的には社員の任意による退職とはいえ、懲戒処分に基づくものです。本来の自己都合退職とは異なるケースと判断される場合もあります。

諭旨退職を行う要件

社員を諭旨退職とするためには、次の要件に該当することが必要です。

  • 就業規則に記載がある
  • 懲戒事由に該当する
  • 社会通念上、相当である
  • 適正な手続を踏む

それぞれ詳しく解説します。

就業規則に記載がある

諭旨退職を含む懲戒処分は、就業規則等に定めがなければ行うことができません。

諭旨退職の処分をするためには、就業規則等に懲戒処分の規定があり、懲戒処分の種類と懲戒事由について定められていることが必要です。具体的には、懲戒処分の種類として諭旨退職が定められ、かつ、懲戒事由として懲戒処分の対象となる違反行為の内容が明記されていなければなりません。

懲戒事由に該当する

諭旨退職ができるのは、社員の行為が規定された懲戒事由に該当する場合に限られます。

たとえば、「ハラスメント行為」が懲戒事由として定められていれば、ハラスメント行為をした社員は諭旨退職の対象となる可能性があります。

懲戒事由の内容が曖昧な場合、恣意的な判断が行われる可能性があるため、できるだけ具体的に定めておくことが必要です。

社会通念上、相当である

社員の行為が諭旨退職に相当する懲戒事由に該当しても、懲戒権の濫用にあたる場合は処分ができません。

法律上、行為の性質・態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、懲戒権の濫用として処分は無効になると定められています(労働契約法15条)。

諭旨退職を行う際は、法に従い、処分に客観的合理性と社会的相当性があるかを慎重に判断しなければなりません。

適正な手続を踏む

処分を行う際、就業規則等に定めた手続を適正にとらなかった場合、処分が無効と判断される可能性があります。

たとえば、社員に弁明の機会を与える、労働組合との協議を経る、といった規定がある場合、これらの手続をとる必要があります。

また、規定がない場合であっても、諭旨退職は社員に対する制裁としてなされる不利益処分であることから、弁明の機会の付与が要求される傾向にあります。

諭旨退職を行う流れ

諭旨退職を行う際の手続は、以下のとおりです。

  1. 就業規則を確認する
  2. 違反行為の事実を確認する
  3. 弁明の機会を与える
  4. 懲戒処分通知書を交付する

この流れについて、順に見ていきましょう。

就業規則を確認する

まず、自社の就業規則等の規定内容を確認します。会社が諭旨退職の処分ができるのは、規定された懲戒事由に当てはまる場合のみです。またそもそも、諭旨退職が処分の種類として規定されていなければ、処分はできません。

懲戒処分の種類として諭旨退職が規定されていて、社員の行為が諭旨退職の懲戒事由に該当するか、そして、諭旨退職が処分の重さとして妥当かを確認しましょう。

違反行為の事実を確認する

懲戒解雇相当の事由に該当する違反行為が、事実であるかを確認します。社員や関係者から事情を聞き取るほか、証拠書類も揃えましょう。

具体的な証拠が不足していると、客観的かつ合理的な理由がない処分と疑われる可能性があります。そのため、明確な証拠の確保が欠かせません。

証拠書類としては、業務日報や始末書などが挙げられます。過去に違反行為があり、それに対する指導を行っていた場合は、指導記録などやり取りをした内容が確認できる書類も証拠になります。

弁明の機会を与える

懲戒処分の手続の適正を確保するため、社員に弁明の機会を必ず与えましょう。諭旨退職は社員を退職させる重い処分であり、社員に懲戒処分を予定していることを告げ、言い分を聞く手続が必要です。弁明の機会が設けられたかどうかは、適正な手続が取られたか否かを判断する上で重要なポイントになります。

面談の場を設けるなど、社員が自由に弁明できる環境を設定してください。弁明の内容は、面談記録を作成して証拠に残しましょう。弁明の内容も考慮しながら、諭旨退職処分の是非について判断します。

懲戒処分通知書を交付する

事実の確認がとれて諭旨退職が妥当と判断したら、懲戒処分通知書を交付して社員に諭旨退職を通達します。懲戒処分通知書とは、処分の内容や理由を記載した文書です。

就業規則等に懲戒処分について文書で通知することが定められている場合は、必ず懲戒処分通知書を作成しなければなりません。

懲戒処分通知書には、退職届の提出期限も記載します。期日までに提出されない場合に懲戒解雇を行う場合は、その旨の記載も必要です。

諭旨退職を行う際の注意点

諭旨退職が適切な処分と認められるためには、ここまでに見た要件や手続に加え、十分な改善指導と慎重な検討が求められます。ここでは、諭旨退職を行う際に注意すべき点を解説します。

十分な改善指導を行う

諭旨退職を行う際は、いきなり処分に踏み切るのではなく、問題行動を改善する機会を与えるために十分な指導を行うことが大切です。のちに諭旨退職の適法性が問題となった場合、上司や人事部などによる指導があったかどうかがポイントとなります。

十分な指導を行ったものの改善が見られなかったために諭旨退職を行った場合には、そのことを説明できなければなりません。そのため、改善指導の経緯は証拠として記録に残しておく必要があります。

処分が重すぎないか慎重に検討する

諭旨退職は懲戒解雇の次に重い処分であり、社員が職を失うことには変わりありません。そのため、処分が重すぎないかについての検討が必要です。

違反行為を行った理由によっては、情状酌量の余地がある可能性があります。諭旨退職とすることに客観的合理性と社会的相当性があるか、諭旨退職以外の処分を検討する余地はないかについて、慎重に判断する必要があるでしょう。

処分理由を明確にして説明する

諭旨退職は社員にとって重大な処分であり、納得してもらえるよう処分理由を明確にして説明することが大切です。社員の行為が就業規則等で規定されている懲戒事由に該当することを伝えるとともに、諭旨退職は懲戒解雇を軽減する処分であり、自らの意思で退職を選べるという趣旨を説明しましょう。

社員が十分に納得できる説明をするためにも、諭旨退職を決定する際は、要件に該当するか、手続に不備はないかをしっかり検討する必要があります。

まとめ

諭旨退職は、本来懲戒解雇に相当する行為について処分を軽減してなされる措置ではあるものの、社員を退職させることに変わりはなく、処分は慎重に行わなければなりません。就業規則等に定められた懲戒事由に該当し、懲戒権の濫用にあたるものでなく、また、適正な手続を踏んでいるという要件に該当するかどうかをしっかり判断しましょう。いきなり処分を行うのではなく、問題行動を改善する機会を与えるために指導を行うことも大切です。

会社が定めた懲戒事由に該当する行為をした社員に処分を科すことは、組織の規律を守るために必要なことといえるでしょう。ただし、それだけでなく、社員の誰もが活躍でき、諭旨退職になるような行為を行う社員がいなくなるような組織にしていくことも重要です。

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