人材開発・教育
2024.11.29
T型人材とは?企業が人材を育成・採用する場合のポイントや注意点
- #T型人材
多様化するビジネス環境において、求められる人材像は大きく変化しています。特に注目されているのが、特定分野の専門性と、幅広い知識を兼ね備えた「T型人材」です。
T型人材は、イノベーションを創出したり、複雑な課題を解決したりする能力が高く、企業の成長に大きく貢献すると期待されています。しかし、T型人材を育成・採用するためには、どのような点に注意すべきでしょうか。
本記事では、T型人材の定義に加え、企業が人材を育成・採用する際のポイントについて解説していきます。人材育成に悩んでいる人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
T型人材とは?特徴と強み
T型人材について、4つのポイントにまとめました。
- T型人材の定義
- T型人材の強み
- T型人材が求められる背景
- T型人材育成のメリット
それぞれ詳しく見ていきましょう。
T型人材の定義
T型人材とは、特定の専門分野(縦軸)を深く掘り下げた専門知識と、同時に幅広い教養や知識(横軸)を持つ人材を指します。この考えは、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーが、1978年に管理工学誌の論文にて提唱したのが最初といわれています。
縦軸と横軸の強みを持つ特徴が、まるでアルファベットの「T」の形に似ていることから、T型人材と呼ばれるようになりました。専門性を活かして深く掘り下げる能力と、同時に多様な視点から物事を捉えることができる点が特徴です。
T型人材の強み
T型人材には、以下のような強みがあるといわれています。
- 柔軟な対応力
- 問題解決能力
- イノベーション創出能力
T型人材は、特定分野の専門知識と幅広い教養をかけ合わせて、複雑な問題に柔軟に対応でき、問題解決へ導く能力があります。また、異なる分野の知識を結び付け、新しいアイデアやビジネスモデルを生み出すのも得意です。さらに、これらの特性を生かすことで、メンバーとの協力やリーダーシップなども期待できるでしょう。
T型人材が求められる背景
近年、AI・テクノロジーの発展やグローバル化など、ビジネス環境は急速に変化しています。そのため、特定の分野の知識だけでなく、多様な視点から物事を捉え、変化に対応できる人材が求められているのです。その点、T型人材は、複雑でスピードが速い現代へ対応できる能力を備えていると期待されており、多くの企業から注目されています。
T型人材育成のメリット
T型人材を育成することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
- 組織の活性化
- 変化への対応力
- イノベーション創出
- 人材育成
多様な視点から新しいアイデアを生み出せるT型人材は、組織の活性化への貢献が期待できます。また、変化の激しい環境においても柔軟に対応できるため、新しい製品やサービスの創出が可能です。また、幅広い知識と経験を持つT型人材は、後輩の育成にも活躍するでしょう。
T型人材と比較される他の人材類型
T型人材と比較される人材には、以下のようなタイプがあります。
- I型人材(スペシャリスト)
- π型人材(パイ型)
- △型人材
- H型人材
- J型人材
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
I型人材(スペシャリスト)
I型人材は、特定の分野に深く特化した専門家です。T型人材が幅広い知識を持つのに対し、I型人材は特定の分野の知識を徹底的に深掘りしています。研究者やエンジニアなどがI型人材に該当します。
π型人材(パイ型)
π型人材は、2つ以上の専門分野を深く理解している人材です。T型人材が1つの専門分野を軸に幅広い知識を持つのに対し、π型人材は複数の専門分野を掛け合わせることで、より高度な専門性を発揮します。データサイエンティストは統計学とプログラミングの両方の専門知識を持つπ型人材といえます。
△型人材
△型人材は、特定の専門分野に加えて、マネジメントやリーダーシップといった能力も備えている人材です。T型人材が専門知識と幅広い知識を持つのに対し、△型人材はそれに加えて、組織を導く能力も求められます。研究開発部のリーダーや新規事業開発部門の責任者などが△型人材に該当します。
H型人材
H型人材は、T型人材の専門性をさらに発展させ、複数の専門分野を深く理解している人材です。T型人材が1本の横棒と1本の縦棒で表されるのに対し、H型人材は複数の縦棒を持つことで、より高度な専門性を示せます。H型人材に適職なのは、プロジェクトマネージャーやコンサルタントです。
J型人材
J型人材は、特定の専門分野を極め、その領域の第一人者として認められる一方で、ほかの分野の専門家とも交流できるコミュニケーション能力も高い人材です。T型人材が専門知識と幅広い知識を持つのに対し、J型人材は、プラスアルファとしてビジネスの世界で必要となるスキルも備えています。ジャーナリストやスタートアップ創業者などがJ型人材に該当します。
T型人材の育成方法
T型人材の育成方法として以下の4つを紹介します。
- OJTの充実
- 研修の充実
- 定期的なジョブローテーション
- キャリアパス設計の支援
それぞれ詳しく見ていきましょう。
OJTの充実
OJT(On-the-Job Training)は、現場で実務を経験しながら学び、実践的なスキルを習得する指導方法です。T型人材育成においては、以下の点に注意してOJTを設計しましょう。
- 多様な業務経験で幅広い業務知識を習得させる
- 経験豊富な社員をメンターにする
- 定期的にフィードバックする
異なる部署やプロジェクトへの参画の機会を提供し、幅広い業務知識を習得させましょう。また、経験豊富な社員とペアリングさせるのも効果的です。定期的な面談やフィードバックによって、成長が促されます。
研修の充実
研修は、体系的な知識やスキルを習得するための重要な手段です。T型人材育成では、以下のような研修が効果的です。
- 専門性の強化
- 異分野の知識習得
- 自己啓発支援
専門分野に関する研修や資格取得への支援によって、さらに深い専門性を身につけさせます。同時に、異分野の知識を習得できる研修やセミナーへの参加を奨励しましょう。その結果、新たな専門性の発掘ができ、π型人材やH型人材へと成長する可能性があります。具体的なサポートとしては、自己啓発のための書籍購入やセミナー参加費の補助などです。
定期的なジョブローテーション
専門性を伸ばした後、ほかのジャンルも経験できるような環境づくりをしましょう。ジョブローテーションのような「異なる部署や職種を経験すること」が有効です。さまざまな経験によって、T型人材の「一」の部分を伸ばせます。
T型人材のジョブローテーションは、以下の点に注意して計画しましょう。
- キャリアパスと連携させる
- 個人の適性と希望を考慮する
- ローテーション期間を適切に設定する
ジョブローテーションは、あくまでもT型人材の多角的な知見を広げるためのものです。適性や希望、将来のキャリアパスを考慮したうえで計画を立てましょう。また、ローテーション期間を明確にし、その期間中の目標を設定することも重要です。
キャリアパス設計の支援
キャリアパス設計は、社員が自身の成長を具体的にイメージし、目標に向かって努力するために欠かせません。社員育成全般に共通しますが、以下の点に注意してキャリアパス設計を支援しましょう。
- 定期的な個別面談の実施
- キャリアプランの作成支援
- 成長機会の提供
個別に面談をし、キャリアプラン作成や目標設定を支援します。ときには、具体的なキャリアパスモデルを提示し、将来像を描きやすくすることも必要です。場合によっては、キャリアコンサルタントへ相談して、積極的に悩みや不安を解消するのもおすすめです。
T型人材を採用するための企業戦略
T型人材を採用するためには次のような企業戦略を取りましょう。
- 求人内容の具体化
- 採用プロセスの工夫
- 企業魅力のアピール
それぞれ詳しく見ていきましょう。
求人内容の具体化
T型人材を採用するためには、求人内容を具体的に提示することが重要です。例えば、募集文に「〇〇分野の専門知識と、複数のプロジェクト経験」といった具体的なスキルや経験を盛り込みます。また、企業文化に合う人を求めている場合は「新しいことに挑戦できる人」「チームワークを大切にする人」など具体的な人物像を示しましょう。
採用プロセスの工夫
採用にいたるまでのプロセスを見直し、創造性や問題解決能力を測る検査の導入を検討しましょう。多様な能力を評価できるよう、グループディスカッションやプレゼンテーションもおすすめです。ほかにも、これまでの経験や成果物をまとめたポートフォリオを提出してもらい、実務能力から見る方法もあります。
企業魅力のアピール
T型人材は、複数の選択肢を持っていることが少なくありません。そのため、自社の魅力を効果的にアピールしなければなりません。社内の雰囲気、働き方、成長できる環境などを具体的に伝え、自社への共感を深めてもらいます。また、成長を実感できるキャリアパスを示すのも有効です。フレックスタイム制やリモートワークなど、多様な働き方を支援していることをアピールすれば、ワークライフバランスを重視する人材を引きつけるでしょう。
まとめ
この記事では、T型人材の特徴と育成方法、採用戦略について解説しました。T型人材の採用・育成は、企業にとって長期的な視点での投資です。採用活動と同時に、企業成長を支える人材を育成し、組織全体の活性化につなげましょう。