人材開発・教育
2025.03.12
ポータブルスキルとは? スキルの具体例や必要とされる背景、伸ばし方などを紹介
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転職が当たり前とも言われるようになった現代において、どの業種・職種でも活かせる「ポータブルスキル」が求められるようになっています。またポータブルスキルを持っていることは、転職だけでなく、異動の際にも意味を持ちます。この記事では、ポータブルスキルの定義や必要とされる背景、具体的な要素、伸ばし方などについて詳しく紹介します。
ポータブルスキルとは
ポータブルスキルとは、業種や職種を問わず、どの仕事にも活かせるスキルを指します。つまり、一つの職場や業種でしか通用しないスキルではなく、転職や異動をしても活用できる能力のことです。たとえば、リーダーシップや課題解決能力、コミュニケーション能力などがこれに該当します。
一方で、特定の業種や企業でしか通用しない専門的なスキルのことを「アンポータブルスキル」と呼びます。たとえば、自社商品についての専門知識や特定の企業の社内システム操作などがこれに該当します。
アンポータブルスキルも重要ですが、それだけでは転職や異動の際の適応が難しくなる可能性があるため、ポータブルスキルとのバランスが重要になります。
ポータブルスキルが求められる背景
これまでの雇用形態や働き方が大きく変わる中で、どの職場や業種でも活かせるポータブルスキルの価値がますます高まっています。以下に、ポータブルスキルが求められるようになった背景を3つ紹介します。
- 雇用制度の変化
- 転職市場の拡大
- AI技術の発展
それぞれ詳しく見ていきましょう。
雇用制度の変化
近年、終身雇用や年功序列といった従来の雇用制度が崩れつつあり、一つの企業に勤め続けることが当たり前ではなくなりました。そのため、個人が主体的にキャリアを築く「キャリア自律」が求められています。企業内での異動やプロジェクト単位での働き方も増え、一つの企業や職種に依存することなく、さまざまな環境で通用するスキルを持つことが必要になっています。
転職市場の拡大
転職市場の拡大により、異業種や異職種への転職がより一般的になりました。以前は、特定の専門スキルを磨くことで安定したキャリアを築くことができましたが、現在は市場の変化が激しく、一つのスキルだけに頼ることはリスクとなる場合があります。企業側も、即戦力として活躍できる人材を求める傾向が強まり、特定の業務知識だけでなく、柔軟な対応力や問題解決力といったポータブルスキルを持つ人材を重視するようになっています。
AI技術の発展
AI技術の発展により、単純作業や定型業務の自動化が進んでいます。これまで人が担当していた業務の一部が機械に置き換わる一方で、AIでは代替できないスキルがより重要視されるようになりました。とくに、対人コミュニケーション能力、創造的な思考、問題解決力などは、今後も人間ならではの強みとして求められるでしょう。
このような変化の中で、ポータブルスキルを磨くことは、環境の変化に適応し、長期的に活躍し続けるために欠かせない要素となっています。業種や職種を超えて活用できるスキルを身につけることで、キャリアの選択肢が広がり、より柔軟な働き方が可能になるでしょう。
ポータブルスキルの分類
ポータブルスキルは、大きく「仕事の進め方に関するスキル(対課題スキル)」と「人との関わり方に関するスキル(対人スキル)」の2つに分類されます。
仕事の進め方に関するスキル
業務の流れに沿ってどのように課題を見つけ、計画を立て、遂行し、状況に適応するかに関わる能力です。このスキルを高めることで、どの職場や業種でも即戦力として活躍できるだけでなく、管理職や経営層に求められる高度な判断力や実行力も身につけることができます。仕事の進め方に関するスキルには、以下の5つの要素があります。
・現状の把握
取り組むべき課題やテーマを明確にするために、情報を収集し、適切に分析するスキルです。競合や顧客のニーズを把握したり、社内データの分析をする際などに役立ちます。
・課題の設定
事業、商品、組織、仕事の進め方などにおいて、取り組むべき課題を適切に設定するスキルです。社内の業務効率化のために、どの業務プロセスを改善すべきかを判断する際などに役立ちます。
・計画の立案
担当業務や課題を遂行するための具体的な計画を立てるスキルです。新規プロジェクトのロードマップを作成したり、チームの業務分担を決めて目標達成までのステップを定める際などに役立ちます。
・課題の遂行
スケジュール管理や各種調整を行いながら、障害を乗り越え、業務の遂行を円滑に進めるスキルです。納期遅延を防ぐためのスケジュール調整を行ったりする際に役立ちます。
・状況への対応
予期せぬトラブルや突発的な事態に対処し、責任ある行動を取るスキルです。クライアントの急なキャンセルに対して迅速に代替案を提示する際などに役立ちます。
人との関わり方に関するスキル
経営層・上司・同僚・部下・社外関係者など、さまざまな立場の人とどのように関係を築き、適切なコミュニケーションを取るかに関わる能力です。スキルを意識的に磨くことで、より影響力のある仕事ができるようになります。人との関わり方に関するスキルには、以下の4つの要素があります。
・社内対応
経営層・上司・関係部署と円滑にコミュニケーションを取り、支持を獲得するスキルです。新規プロジェクトを経営層に提案し、承認を得る際などに役立ちます。
・社外対応
顧客・社外パートナーとの関係を円滑に構築し、納得感の高いコミュニケーションを通じて利害調整や合意形成を行うスキルです。クライアントとの商談において、双方にとってメリットのある契約条件を交渉する際などに役立ちます。
・上司対応
上司への報告や課題に対する改善提案を円滑に行うスキルです。上司に対して、業務の進捗を端的に整理して報告したり、業務上の課題への改善策を提案する際などに役立ちます。
・部下マネジメント
メンバーの動機づけや育成を行い、それぞれの持ち味を活かした業務の割り当てを行うスキルです。部下の成長を促すフィードバックを行ったりする際に役立ちます。
ポータブルスキルの診断方法として、厚生労働省と一般社団法人人材サービス産業協議会が提供する「ポータブルスキル見える化ツール」などがあります。
参照:厚生労働省
ポータブルスキルの伸ばし方
ポータブルスキルを効果的に伸ばすためには、日々の業務やコミュニケーションの中で意識的にスキルを鍛えることが重要です。以下に、「仕事の進め方に関するスキル」と「人との関わり方に関するスキル」を総合的に向上させるための5つの方法を紹介します。
- 課題を見つける習慣をつくる
- 全体の流れを把握する
- 相手に合った伝え方を意識する
- マネジメント力を高める
- 継続的に学び続ける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
課題を見つける習慣をつくる
業務の中で「なぜこの問題が発生しているのか」「どのように改善できるのか」を考える習慣をつけることで、課題設定力や計画立案力が向上します。たとえば、定期的に業務の振り返りを行い、うまくいった点や改善できる点を整理することで、課題の設定スキルを強化できます。また、チーム内でのディスカッションやフィードバックを活用し、他者の視点を取り入れることも効果的です。
全体の流れを把握する
業務全体の流れを把握し、誰とどのように連携すれば効率的に業務を進められるかを意識することで、スケジュール管理や課題遂行のスキルが向上します。たとえば、他部署の業務内容や関係者の役割を理解し、業務フローの中でどのような調整が必要なのかを考えることで、柔軟な対応力が身につきます。また、プロジェクトマネジメントの手法を学び、タスクの優先順位を適切に判断することも効果的です。
相手に合った伝え方を意識する
上司や関係部署への報告、チームメンバーとの連携など、コミュニケーションが必要な場面において、さまざまな状況に応じた伝え方が重要になります。相手の立場や背景を考慮しながら、納得感のある伝え方を心がけることで、説得力を高めることができます。また、論理的に伝える力を高めるためには、PREP法(結論→理由→具体例→結論)を活用することが考えられます。
マネジメント力を高める
チームで成果を出すためには、個々のメンバーの能力を最大限に引き出すことが重要であり、そのためには部下やチームメンバーの強みを把握し、相手のモチベーションを高めるコミュニケーションが必要です。たとえば、定期的な1on1ミーティングを実施し、業務の進捗確認だけでなく、キャリアの方向性や働き方についての意見交換を行うことで、信頼関係を築くことができます。また、フィードバックの際には、改善点だけでなく良い点も伝え、部下が自信を持って業務に取り組めるような環境を作ることが求められます。
継続的に学び続ける
ポータブルスキルを伸ばすためには、日々の業務の中で実践するだけでなく、新しい知識やスキルを継続的に学び続けることが重要です。業界の最新情報をキャッチアップするために、セミナーや勉強会に参加したり、ビジネス書を読む習慣をつけたりすることで、知識の幅を広げることができます。また、異業種の人との交流を持ち、異なる視点から学ぶ機会を作ることも効果的です。
まとめ
ポータブルスキルは、業種や職種を超えて活かせるスキルであり、転職が一般的になった現代において重要視されるようになっています。ポータブルスキルは、「仕事の進め方に関するスキル」と「人との関わり方に関するスキル」の2つに分けられます。これらのスキルを磨くことで、環境の変化に対応し、長期的に活躍できる力を身につけましょう。