人事戦略
2025.01.20
2025年、AIエージェントが変革するHRの未来
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生成AI・LLM技術の利活用は、いまやチャットや検索といった用途にとどまらない。「AI上司」や「バーチャル同僚」として自律的に動き、事務作業や業務改善フィードバックを行う「AIエージェント」として振る舞う時代が訪れつつある。今後、AIエージェントはHRの業務や、人事機能そのものを変化させていくのは間違いないだろう。
「AIエージェント元年」とも言われる2025年の展望について、「エンプロイーサクセス」を掲げ、HR領域での生成AI・大規模言語モデル(LLM)を活用した事業展開を行う株式会社PeopleX代表の橘大地と、CTOの橘大雅で対談を行った。本ホワイトペーパーでは、その議論の内容を紹介する。
【話し手】
橘 大地 (株式会社PeopleX 代表取締役CEO)
橘 大雅 (株式会社PeopleX 執行役員 兼 CTO)
【編集・制作】
HR LLM X Labs Powered by PeopleX Inc.
(2025年1月収録)
AIエージェントとは?
ーーまず、「AIエージェント」とは何か教えてください。
橘大雅 :AIエージェントとは、ユーザーが目標を設定すれば、あとは細かく指示をしなくても自律的にやるべきタスクを考えて、様々なツールを活用しながら答えを出していくAIの仕組みのことです。これまでの生成AIではプロンプトの入力が必要でしたが、AIエージェントの場合はAI自身がプロンプトを生成し、ときには他のエージェントとも連携しながら、ユーザーが望む結果へと到達するのが特徴です。
ーーなぜ今「AIエージェント」がここまで注目されているのでしょうか。
橘大地:ブロックチェーン技術が、BitcoinやNFTを筆頭にユースケース探しを続け、期待と失望のサイクルを繰り返してきたのと似たような現象が、LLM技術においても起きていると考えられます。ChatGPT登場以降、様々なアプリケーションのユースケースが模索されてきており、2025年1月現在は、キラーユースケースとしてAIエージェントに大きな注目が集まっている状況です。
橘大雅 :技術的には、モデルの進歩も大きいでしょうね。2024年9月にOpenAIが発表した「o1」は、それまでのGPT4oと比較して推論(リーズニング)の能力が飛躍的に向上しています。我々は、GPT-4のときからHR領域におけるAIエージェントの活用可能性について模索してきましたが、o1の登場で、実用に耐えうる段階に到達しつつあると感じています。
ーー「推論」についてもう少し詳しく教えてください。
橘大雅 :人間も問題解決をする際に、様々な角度から考えを巡らせ、より良い結論を導き出そうとしますよね。AIも同様で、与えられた課題に対して、あたかもAIの中で複数の思考体が対話しているかのようにいろいろな視点から検討し、より良い結論を導き出そうとするプロセスを「推論」と言います。これによって、単なる情報の生成ではなく、状況に応じた適切な判断が可能になっているのです。「o1」が回答を出すためにすごく時間がかかるのも、このプロセスが原因です。なお、将来公開される「o3」は、推論能力をさらに大幅に強化したモデルだと言われています。
ーー現状のo1ベースのAIエージェントだと、実際にはタスク領域を狭く設定しなければユーザーが期待した通りの結果は得られないとも言われています。現時点でできることを教えてください。
橘大雅 :一定のルールさえ与えれば、自律的に作動して、タスクを進めることが可能になっています。具体的なユースケースは後ほどHR領域を例にお話しするので、ここではすでに実現されているAIエージェント活用の利点について解説します。
AIエージェントが破壊的なイノベーションだと言われる理由は、人間がやっているような、ファジー(曖昧)な判断ができるという点にあります。これまでは、例えば社員の業績貢献度ランキングを作成するとして、大型受注は100ポイント、社内会議での積極的な発言は3ポイント、というようにあらかじめ明確な採点基準を作成する必要がありました。ところが、AIエージェントであれば、様々なデータベースをクローリングした上で、複雑な判断軸をもとに貢献度を算出することも可能になります。人間が行なっているような直観的な判断を、膨大なデータをもとに行えるのはLLMの利点です。
ーー「AIエージェントを導入する」といったとき、どういうユーザーインターフェースが想定されるのでしょうか?
橘大地:最初は、一見普通のアプリケーションに見えて、実は裏側でAIエージェントが作動しているというサービスが主流になるかと思います。長期的にはどうでしょうか?
橘大雅 :現状でも、SaaSのようなソフトウェアは、中小企業の場合は標準機能をそのまま使っている一方、大企業になると、業務要件に応じて細やかなカスタマイズを実施することが一般的です。AIエージェントは、すべてのユーザーにこのカスタマイズの恩恵がもたらされると考えられます。
ChatGPTがわかりやすい例ですが、生成AIは、ユーザーが出力形式を自由に変化させることができます。業務アプリケーションにAIエージェントを組み込んだ時、どのような体験を提供するかについて、グローバルレベルで技術的な検討が進められている状況で、ユーザー主導のこれまでにない柔軟なインターフェースのAIエージェントが誕生する可能性があります。
HR分野における4つのユースケース
ーーそれでは、HR分野におけるAIエージェントのユースケースについて教えてください。
橘大地:一つ目は採用領域です。採用プロセスを「良い候補者を集める」「スカウトメールなどでアプローチをする」「面接を行う」「採用合否の意思決定をする」の4つに分けた時、すべての領域に生成AIはイノベーションをもたらすと言われています。
自社が求めるポジションにマッチする人材を転職市場から探し出し、それぞれの候補者に最適化された内容の文面で自動的にスカウトメールが送られ、面接の日程調整まで完了するという一連のフローでは、すでにかなりAIが実装されています。
その次の面接プロセスにAIエージェントを組み込む試みは、まさに我々がトライしようとしている領域です。バーチャルヒューマンを用いたインターフェースを使って、従来の面接官をAIエージェントに置き換えるサービスを今年の春にリリース予定です。採用側の業務効率化というよりも、候補者側の体験を向上させ、応募書類作成や日程調整といった負担を大幅に軽減し、より気軽に応募できる仕組みを提供するのがポイントです。結果として、企業にとっては、応募数の増加と、優秀な人材の母集団形成が促進されることが期待できます。
また、合否判定においても、社既存社員の特徴を分析して、自社で活躍するための因子を特定した上で、マッチ度が高い人を見極め、優先的に採用するということもできるでしょう。
このように、採用領域はもっとも早くAIエージェントの導入が進むと考えています。
(図1 People Workの活躍化フレームワーク”エンプロイー360”)
ーーつぎに、マネジメント領域でのAIエージェント活用について教えてください。
橘大地:PeopleXでは、2025年初頭から希望した社員全員に対して、週次で担当したタスクの可視化、業務改善フィードバック、ストレスチェック等が可能になる「AI上司」の提供を試験的に開始しています。
マネージャーの業務には、評価設定、業務指示、労働時間の管理、メンタルヘルスケアなどがありますが、上司がメンバーのすべての業務や振る舞いを把握したうえで、これらの業務を遂行しているわけではありません。
AIエージェントを活用した「AI上司」であれば……(続きを読みたい方は、下記よりホワイトペーパーを無料でダウンロードしてください。)