人事戦略
2024.11.29
帰属意識が重要な理由とは?帰属意識とエンゲージメントの関係や帰属意識を高める方法などを紹介
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社員のパフォーマンスやモチベーションを左右する要因の一つとして「帰属意識」が注目されています。帰属意識は、社員が組織やチームに対してどれだけ一体感や連帯感を持っているかの基準となります。ここでは帰属意識の意味や注目されている背景、そのメリット、帰属意識を高める方法などを詳しく紹介します。
帰属意識とは
帰属意識とは、社員が自分を組織やチームの一員であると感じ、その組織やチームに対して愛着や忠誠心を抱く感情のことです。帰属意識が高い社員は、会社の目標やビジョンを自分自身のものと重ね合わせ、積極的に貢献しようとします。帰属意識はモチベーションやパフォーマンスの向上に繋がります。
帰属意識が求められる背景
近年、ビジネス環境に急速な変化が見られます。とくにリモートワークやフレックス制の普及など、働き方の多様化はコミュニケーションのあり方を変えました。それに伴い物理的なオフィスでの結束力だけではなく、精神的な繋がりが求められるようになりました。
このため優秀な人材を定着させるためにも、社員に「この会社で働き続けたい」と感じさせるための施策が求められるようになりました。会社への帰属意識を高めるとともに、離職率低下を図ることが企業にとって大きな課題となっています。
帰属意識と所属意識の違い
帰属意識と似た言葉に「所属意識」があります。帰属意識は、社員が組織やチームに対して「自分はこの組織の一員であり、貢献したい」と感じる強い愛着や忠誠心を指し、自分の価値観や目標が会社と一致しているという心理的繋がりを生みます。
一方で所属意識とは、単に「組織に属している」という認識を示すものです。所属している事実を認識していても、必ずしも強い感情的な結びつきや忠誠心を伴うわけではありません。
すなわち、帰属意識が感情的な側面に重点を置くのに対し、所属意識は関係性の認識にとどまるという違いがあります。
帰属意識が企業に与えるメリット
帰属意識の向上は企業の成長や社員の定着、組織全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。以下の帰属意識の向上が及ぼすメリットを3つ紹介します。
- 離職率の低下
- 生産性の向上
- 企業文化の強化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
離職率の低下
帰属意識が高い社員は、会社に対する愛着や忠誠心を強く持ちます。このため転職を考えることが少なく、長期間同じ企業で働き続ける傾向が強くなります。労働人口が急速に減りつつある日本において、離職率の低下は企業の最優先課題と言えるでしょう。
生産性の向上
帰属意識の高い社員は、組織の成功に強い関心を持ち、自分の役割を超えて積極的に貢献しようとします。このため、業務に対する責任感やモチベーションが高まり、結果として生産性が向上します。
企業文化の強化
帰属意識が高い社員が多い企業では、共通の価値観や目標が強く共有されます。これにより企業文化が一貫性を持ち、社員同士の連帯感が高まります。強固な企業文化の形成は、社員を企業のビジョンや目標と同一の方向に向かわせます。
帰属意識とエンゲージメントの関係
社員の帰属意識とエンゲージメントは密接に関連しています。エンゲージメントが高い社員は、自分の役割に責任を持ち、積極的に会社に貢献しようとする傾向がありますが、その背景には強い帰属意識がある傾向がみられます。
帰属意識は、社員が会社に対して感じる精神的な繋がりです。この感覚が強いと、社員は組織の一部として行動するようになり、自発的に貢献したいという気持ちが高まります。結果として、エンゲージメントが高まります。
また、エンゲージメントが高い社員は、業務に対して積極的に取り組み、成功体験を得ることが多いです。この成功体験や仕事への充実感が増すことで、会社に対する愛着や忠誠心も強くなります。
すなわち帰属意識とエンゲージメントは密接に関連しており、どちらも社員の行動や意識に影響を与えますが、二つは相互に影響を与え合っていると言えます。この二つが高まることで、企業は離職率低下や生産性向上など、多くのメリットを享受できるでしょう。
帰属意識を下げる要因
帰属意識の向上がパフォーマンスの強化に繋がる一方で、帰属意識の著しい低下は大きな悪影響を及ぼします。最終的に離職率の上昇や企業の生産性の低下に繋がる可能性もあるため、未然に防ぐ対策を講じる必要が求められます。以下に、帰属意識を下げる要因を4つ紹介します。
- コミュニケーションの不足
- 評価の欠如
- 成長機会の不足
- 企業文化との不一致
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションの不足
不十分なコミュニケーションは、帰属意識を低下させる最大の要因です。社員間での情報共有や対話の不足は、自分の役割や企業の目標に対する理解を希薄なものにします。とくに上司が部下に対して一方的に指示を与える一方通行のコミュニケーションや、適切なフィードバックの不足は帰属意識の低下に大きく影響します。
評価の欠如
努力や成果が適切に認められない状況も、帰属意識を低下させる要因です。社員が一生懸命働いても、その成果が認められない、または公平に評価されないと、「自分の貢献には価値がない」「上司は自分に興味がない」と感じるようになり、企業への期待を著しく落とします。結果として、仕事へのモチベーション低下に繋がります。
成長機会の不足
キャリアの成長やスキルアップの機会の不足も帰属意識を低下させます。社員は自分のキャリアが会社とともに成長していくものと考えますが、昇進や昇級が期待できないと感じると、自分の将来に対して不安を感じ、他の会社への転職を検討するようになります。
企業文化との不一致
企業文化や価値観が社員の考えと合わない場合も、帰属意識が低下します。企業文化は、社員がその組織に対して共感を持ち、一体感を感じるための基盤です。しかし、経営陣が企業のビジョンや価値観を明確に示さなかったり、経営方針や事業が社員の価値観と大きくずれていると、組織への不信感が生まれ、帰属意識が低下します。
帰属意識を高める方法
帰属意識を高めるためには、社員が組織の一員として認識され、尊重されていると感じられるような環境作りが重要です。社員の帰属意識を高めるために、以下のような4つの取り組みが効果的です。
- コミュニケーションの促進
- インナーブランディングの強化
- 評価制度の導入
- 働き方の多様化や福利厚生の充実
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションの促進
社員と上層部の間に透明性のあるコミュニケーションを促進することは、帰属意識を高める重要なステップとなります。同時に、双方向のコミュニケーションを強化し、組織は社員からの意見やアイデアを受け入れる姿勢を整えることで、社員は自らの存在意義を意識しやすくなります。また、会社のビジョンや目標、経営戦略について十分な情報を共有することで、会社の方向性に共感し、自分もその一端を担っているという意識を持つことができます。
インナーブランディングの強化
社員に対して企業のブランド価値やビジョンをしっかりと理解・共有させ、企業ブランドを内面化させる取り組みをインナーブランディングといいます。社員が会社のブランドや価値観に共感し、それを自らの仕事に反映させることで、強い帰属意識が育まれます。定期的な社内イベントやミーティングを通じて、企業のビジョン、ミッション、コアバリューを社員に深く理解させることが、インナーブランディングの第一歩となります。
表彰制度の導入
社員が自分の貢献が組織に認識され、評価されていると感じることは、帰属意識を高めるために欠かせません。努力や成果を正当に評価し、感謝を伝えることで、社員は「この組織で働くことに意味がある」と感じます。表彰制度の導入やパフォーマンスに基づくインセンティブ制度を整えることで、社員は自分の努力が正当に評価されていると感じ、組織への忠誠心が強まります。
働き方の多様化や福利厚生の充実
社員が健康で充実した生活を送れるように配慮することも、帰属意識の向上に貢献します。過度な労働やストレスがかかる環境では、社員は組織に対する忠誠心を失いがちです。反対に企業がワークライフバランスを尊重し、働きやすい環境を提供すれば、社員は組織に対する愛着を持ちやすくなります。リモートワークやフレックス制、育児休暇の積極的取得を推奨するとともに、福利厚生など待遇を改善することで会社への信頼感が高まります。
帰属意識を高めるためには、社員が組織の一員として認識され、尊重されていると感じられるような環境を作ることが重要です。コミュニケーションの促進やインナーブランディングの強化などにより職場環境を整えることで、帰属意識が高まるでしょう。
まとめ
帰属意識とは、社員が組織やチームに対して愛着や忠誠心を抱く感情のことです。帰属意識の向上は、企業の競争力強化や離職率低下に直結する重要な要素と言えます。コミュニケーションの促進、社員の成果の認知、公平な評価制度の導入などを通じて、社員の帰属意識を高めることで、企業全体の生産性やエンゲージメントも向上します。