人事戦略
2024.08.07
適材適所とは?組織強化のための適材適所はどう実現する?人事課題と取り組むべき仕組化を解説
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「適材適所」はビジネスにおいて頻繁に使われる言葉です。「適材適所」は、企業において従業員のモチベーション向上や組織活性化と密接に関わっています。
この記事では、適材適所の意味や効果について解説したうえで、適材適所を実現させるステップを紹介します。人事課題の解決につながる施策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
適材適所とは?
適材適所の由来やビジネスにおける重要性について、以下の3点にまとめました。
- 適材適所の言葉の由来と現代の意味
- ビジネスにおける重要性
- 適材適所が必要とされる理由と背景
それぞれ詳しく見ていきましょう。
適材適所の言葉の由来と現代の意味
「適材適所」を辞典でひも解いてみると、その由来は建築現場における木材の使い分けにあります。「適材」とは、木材の性質に合わせて配置することにより、その性質を効果的に利用できることを意味します。
具体的な例として、土台には腐りにくく耐久性の高い檜(ヒノキ)や栗(クリ)を使用し、内装の一部になる柱には木目の美しくやさしい肌合いの杉(スギ)を使用するといった具合です。
現代において「材」は「人材」を意味するようになりました。従業員の適性や能力に合った仕事や部署に配置することで、やる気アップや能力の発揮が期待できます。その結果、会社の業績アップにもつながるだろうと考えられています。
参照:小学館
ビジネスにおける重要性
ビジネスにおいて適材適所が重要な理由は、優秀な従業員でも適性に合っていない部署に配置されてしまうと、十分に能力を発揮できなくなってしまうからです。本人のモチベーションが下がり、最終的には会社の業績にも悪影響をおよぼします。また、配置替えのタイミングも重要です。従業員のスキルや環境の変化、現時点での希望や意思を把握しておく必要があります。また、定期的に状況を更新していくことも重要です。
適材適所が必要とされる理由と背景
これまでは、より多くの部署を経験し、どの業務にも対応できるといったことが重視されてきました。しかし、高齢化と人材不足、多様な働き方の広がりなどにより、人材の最適化が重要となっています。また、中途採用が増えている状況下では、能力を見極めた効率的な人事配置が求められています。
ビジネスにおける適材適所の効果
ビジネスにおいて適材適所で人事配置できれば、次のような効果があります。
- 生産性の向上
- 離職率の低下
- 人件費の削減
- 組織の活性化
- 売上の向上
それぞれ詳しく見ていきましょう。
生産性の向上
2023年における「労働生産性の国際比較」では、OECD加盟国38か国中、日本は30位でした。実質ベースで、前年から0.8%上昇したものの、1970年以来最も低くなっています。その理由として、人口減少や労働環境改善の遅れ、IT化の遅れなどが指摘されています。能力を発揮できる場所と発揮できない場所とでは生産性に大きな差が生じるため、生産性向上という点でも適材適所の重要性は今後も増すでしょう。
参照:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2023」
離職率の低下
従業員が自分の能力を十分に発揮できている場合、満足感につながり、離職率の低下にもつながります。厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、男女合わせた平均的な離職率は15%でした。
離職の理由として、給料や労働時間の不満、人間関係に次いで「能力・知性・資格を生かせなかった」男4.0%・女4.3%、「仕事の内容に興味を持てなかった」男4.5%・女5.9%となっています。労働条件以外で離職率を下げる対策として、適材適所で働ける環境づくりも無視できません。
人件費の削減
適材適所が直接的に人件費の削減につながるわけではありません。しかし、各自の能力を最大限に発揮できれば、労働効率が上がり、無駄に人員を配置する必要がなくなります。従業員の満足度が上がれば離職率が下がり、採用にかける費用も抑えられます。トレーニングにかかる費用も最小限で済むため、結果的に人件費の削減につながるでしょう。
組織の活性化
従業員が能力を発揮できれば、当然労働に対するモチベーションアップにつながります。前向きな意見交換がおこなわれ、新しいアイデアや改善の提案などが期待できます。また、長期的なキャリアパスを見据えて働く人が増え、組織の活性化とともに安定性の向上にも寄与するはずです。
売上の向上
従業員の経歴や能力、特性や希望を踏まえたうえで人事配置すれば、生産性の向上が見込めます。適材適所が直接的に売上アップにつながるわけではありませんが、従業員が強みを生かし、能力を発揮できれば、結果として売上目標達成や業績アップにつながるでしょう。
適材適所を実現させるための5ステップ
適材適所を実現させるための5ステップを紹介します。
- 課題と目標の明確化
- 業務内容の整理
- 従業員の能力やスキルの把握
- 従業員の希望や意思の把握
- 定期的なアップデート
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.課題と目標の明確化
最初のステップは、課題と目標の明確化です。従業員が共有できる目標が設定されれば、組織の方向性が決まり、必要な業務や改善点も明らかになります。
2.業務内容の整理
次に目標達成のために必要な業務を整理します。部署ごとの業務内容を整理すれば、目標達成のために必要な人員や能力が分かるでしょう。
3.従業員の能力やスキルの把握
必要な人材を必要としている部署に配置するために、各従業員の能力やスキルを把握する必要があります。経験や資格、コミュニケーション能力などを踏まえたうえで、どの部署が適切か判断しましょう。
4.従業員の希望や意思の把握
実際に配置する前に、本人の意思やキャリアプランをヒアリングします。経験や資格があっても、本人がその業務に携わることを望んでいるとは限りません。能力やスキルが生かせる部署と本人の希望が必ずしも一致するとは限らないという前提のうえ、希望や意思を尊重して配置を決定しましょう。
5.定期的なアップデート
1~4の手順を定期的に行い、情報をアップデートしていきます。ヒアリングした内容が1年後も同じとは限らないためです。また、スキルアップや資格取得など、従業員の成長を加味する必要があります。組織が大きくなってくると、本人の希望とスキルの把握が難しくなるため、管理ツールを利用するのもおすすめです。
適材適所で人員配置するための施策
適材適所で人員配置するための施策を4つ紹介します。
- 定期的な適性検査の実地
- ジョブローテーションの実地
- 定期的な個別面談
- データベース化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期的な適性検査の実施
従業員の能力やスキルの把握のためには、定期的な検査が必要です。適性検査には、能力検査と性格検査のふたつがあり、新卒採用や転職の際に応募者の能力や人柄、性格を測定するのに利用します。適性検査のような堅苦しいものでなくても、アンケートや性格診断などでもよく、さまざまな方法で個人のスキルや能力を把握しておきましょう。
ジョブローテーションの実施
経験によって開花する能力もあるため、ジョブローテーションの実地も有効です。その際、従業員の希望や意思も考慮しましょう。もちろん上司の評価や適性診断なども判断基準に含めます。実際にさまざまな仕事を経験してもらうことで、本人に新たな気付きがあるかもしれません。
定期的な個別面談
本人の希望を聞き、情報をアップデートしていくことは重要です。定期的な個別面談はもちろんのこと、管理ツールの利用もおすすめです。本人にスキルや経験、希望などを入力してもらっておけば、面談の時間を短縮できます。
データベース化
人材情報を一括で管理できる仕組みを整えると、従業員のスキルや経験、希望や意思、さらに必要としている職場とのマッチングを効率的に行えます。情報をデータベース化しておけば配置のミスマッチは今よりも少なくなるはずです。データベース化には、タレントマネジメントのための専用システムを活用するのがおすすめです。
まとめ
従業員一人ひとりの経験やスキルの最新情報を把握したうえで、適材適所を意識した人材の配置を実現する重要性が増しています。HRテクノロジーも活用しながら、社員の才能を上手にマネジメントしていきましょう。