人材開発・教育

2024.08.08

人材開発とは? 人材育成との違い、企業が取り組むべきポイントを解説

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人材開発とは? 人材育成との違い、企業が取り組むべきポイントを解説

現代のビジネス環境では、市場競争の激化や技術の急速な進化に対応するために人材開発が欠かせません。人材開発には、企業の競争力強化や社員のモチベーションをアップさせる効果があります。

この記事では、人材開発が注目されている理由や人材育成との違い、具体的な導入事例などを紹介しています。ぜひ参考にしてください。

人材開発とは

人材開発とは、社員のスキルや能力を向上させ、組織のパフォーマンスを高めるための一連の取り組みを指します。具体的には、教育・訓練プログラム、キャリア開発、コーチングやメンタリング、そして継続的な学習機会の提供などがあります。たとえば、OJTやOff-JTを通じて社員の能力を引き上げるのも人材開発に含まれます。人材開発は、個人の成長を促進し、組織の目標達成に貢献する人材を創ることを目的としています。

人材開発が注目される背景と理由

近年、人材開発が注目されている背景には、以下の3つの要因があります。

  • 若手社員のキャリア観の変化
  • IT人材の不足
  • 短期間でのパフォーマンス向上

詳しく解説していきます。

若手社員のキャリア観の変化

終身雇用の見直しや、新型コロナウイルスによる在宅ワーク、フリーランスの増加などにより、従来の働き方が変わり、より個人の主体性を重視した働き方が求められるようになりました。このため、企業は社員の成長と自社の発展を両立させる取り組みが必要となっているのです。

IT人材の不足

経済産業省の調査によると、2030年までに約79万人のIT人材が不足すると予測されています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現には、ITスキルを持つ人材が不可欠です。企業は外部人材に依存するだけでなく、内部でIT人材を育成する必要があります。

短期間でのパフォーマンス向上の必要性

時代の変化に伴い、社員のパフォーマンスを短期間で向上させる必要性が求められています。市場の競争が激化する中、企業は迅速に結果を出さなければ競合に先を越されるリスクがあります。また、IT技術の急速な進化に対応するためには、最新のスキルや知識を速やかに習得することが重要です。同時に顧客のニーズや期待も高まっているため、迅速に対応できる能力が必要とされています。

人材開発と人材育成の違い

人材開発と混同されやすい考え方に「人材育成」があります。対象・目的・方法・スキル分野の4つの視点から比較してみました。

【対象】

人材開発: 全社員を対象とし、個別の取り組みを重視。

人材育成: 新入社員や若手社員など特定の階層や役職が対象。

【目的】

人材開発: 組織全体のスキルアップを通じた競争力強化。

人材育成: 業務遂行に必要な特定のスキル習得。

【方法】

人材開発: 自己啓発支援やOJTなど個別支援が中心。

人材育成: 集合研修、ジョブローテーションなど多様な手法。

【スキル分野】

人材開発: 問題解決力、コミュニケーション力、主体性など汎用的スキル。

人材育成: 特定業務の専門知識やスキル。

厚生労働省の施策例の詳細

厚生労働省は、労働力の質を向上させ、企業の競争力と生産性を高めるため、事業者および就労者に向けて人材開発の支援をしています。具体的には、社員のスキルアップとキャリア形成を支援するために、以下のような施策を推し進めています。

  • セルフ・キャリアドックの導入促進
  • キャリア健診の実施
  • ハロートレーニングの実施
  • 学び・学び直し促進ガイドラインの策定
  • 教育訓練プログラムの提供

詳しく見ていきましょう。

セルフ・キャリアドックの導入促進

セルフ・キャリアドックとは、企業がキャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修を組み合わせて、体系的・定期的に社員を支援し、主体的なキャリア形成を促進する仕組みです。キャリア研修とキャリアコンサルティングを組み合わせて提供し、社員が自己理解を深め、キャリアビジョンを明確にすることを支援します。

キャリア健診の実施

キャリア健診は、社員の能力やスキルの現状を把握し、個々の成長の方向性を見極めるための評価プロセスです。これにより、企業は人材開発の効果を評価し、必要なサポートを提供することができます。

ハロートレーニングの実施

ハロートレーニングとは、職業訓練制度を通じて社員が新しいスキルや知識を習得することを支援します。このプログラムは、特定の職務に必要な専門スキルを習得するためのもので、多岐にわたる業種で利用されています。

学び・学び直し促進ガイドラインの策定

このガイドラインは、社員が継続的に学び直しを行うことを促進するための指針を提供します。企業は社員に対して、自己研鑽の機会を提供し、キャリアの長期的な成長を支援することが推奨されます。

教育訓練プログラムの提供

厚生労働省は、AIやDX関連の訓練プログラムを無料で提供し、企業内のITリテラシーを向上させることを目指しています。これにより、社員は最新の技術動向に対応し、企業の競争力を強化することができます。

これらの施策により、企業は社員のスキルアップを効果的に支援し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

参照:厚生労働省

人材開発の導入ステップ

人材開発の導入には以下の6つのステップが存在します。

1.課題の特定

自社の現状を把握し、スキルギャップや業務効率の低下などの問題点を特定します。アンケートやパフォーマンス評価を活用してデータを収集し、組織の強みと弱みを分析します。

2.求める人材の明確化

自社のビジョンや戦略に基づき、どのような人材が必要かを明確化します。業界のトレンドや競合状況も考慮して、求める人物像を定義するステップです。

3.必要なスキルの選定

求める人物像に基づいて必要なスキルや知識をリストアップします。スキルや知識には、専門的な技術スキルだけでなく、マネジメント能力、コミュニケーション力などが含まれます。社内外の専門家の意見を取り入れ、網羅的にスキルセットを定義することも大切です。

4.開発方法の検討

洗い出したスキルを習得するための方法を検討します。研修プログラム、OJT、eラーニング、外部セミナーなどを評価し、最適な組み合わせを選定します。

5.開発目標・計画の策定

具体的な開発目標を設定し、それに基づいた計画を立てます。計画には研修内容、スケジュール、予算、担当者を明示し、全員が共有できる形でドキュメント化することが大切です。

6.実践・フィードバック

計画に沿って取り組みを実施するとともに、定期的にフィードバックを収集して改善を図ります。また、フィードバックに基づき、必要に応じて研修内容や方法を調整し、継続的な改善を行います。このサイクルを繰り返すことで、効果的な人材開発が実現します。

これらのプロセスを通じて、人材開発は組織の戦略的目標に貢献し、企業全体のパフォーマンス向上につながります。 

トヨタ自動車の取り組み

人材開発において、力を入れて取り組んでいる企業にトヨタ自動車が挙げられます。トヨタ自動車では、昨今「モビリティカンパニー」への変革を進めています。これは人の移動全般を支援する企業へのシフトを意味します。変革を実現するためには、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮し、迅速に行動することが求められると考えています。

しかしながら、社内には「現状に安住するマネジメント」や「成長実感が得にくい若手」、「多様性を尊重しにくい風土」などの課題がありました。これらを解決するために人事制度の見直しを進め、2020年の社長年頭挨拶では、「成長しようと努力する人」と「しない人」、「仲間のために働く人」と「自分のために働く人」を区別する方針が示されました。

具体的な取り組みとして、評価制度も見直しがあります。評価面談の回数を年1回から3回に増やし、360度フィードバックなどの新たなフィードバックの仕組みを導入しました。資格体系も大括りに変更され、年齢や学歴に関係なく、必要とされる人材をスピーディーに配置することが可能になりました。また、社員の人間力と実行力に着目した評価項目の見直しが行われ、強みと改善点を明確にして本人へのフィードバックを実践しています。

参照:日本の人事部

まとめ

人材開発は、企業と社員の双方にとって多くのメリットをもたらします。企業は生産性や競争力を向上させることができ、社員はキャリアの発展や自己効力感の向上を実感できます。効果的な人材開発を行うためには、企業はニーズ分析から評価までのプロセスをしっかりと行い、社員に継続的な学習機会を提供することが重要です。

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