人事戦略
2024.12.19
経済産業省が定めるDX人材とは? 求められるスキルや人材類型、DX人材の育成プラットフォームなどを紹介
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経済産業省は、日本企業が競争力を維持し、未来のビジネス環境に適応するため、DX人材に必要なスキルや役割を体系化した基準を策定しました。この記事では、経済産業省が定義するDX人材の概要や具体的に求められるスキル、人材類型、DX人材の育成支援プラットフォーム「マナビDX」などを紹介します。
なお、「DX人材・ビジネスアーキテクトの育成術」をテーマとしたホワイトペーパーを無料でダウンロードいただけます。「DX推進に必要な人材の定義」「DX人材の育成プラン」「『文系社員』のリスキリング」などに関心のある方は、本記事と合わせてぜひこちらのホワイトペーパーも参考にしてください。
経済産業省が定義する「DX人材」とは
経済産業省が定義する「DX人材」とは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、企業や社会の競争力を高める役割を担う人材を指します。
この人材の育成において経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、日本企業がDXを推進するために必要なスキルや知識を体系化した指標としてデジタルスキル標準(DSS)を策定しました。
デジタルスキル標準(DSS)は、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つの基準からなります。以下に詳しく紹介します。
DXリテラシー標準
DXリテラシー標準は、すべてのビジネスパーソンが共通で持つべきデジタルに関する基本的な知識・スキルを指します。企業がDXを進めるにあたって、全社員が基礎的なデジタルリテラシーを持つことで、組織全体でのデジタル技術活用を可能にする基盤を形成します。
DX推進スキル標準
DX推進スキル標準とは、DX推進の専門人材が備えるべき専門知識や実務スキルを示します。DXを支えるための具体的なスキルが規定されており、具体的には、データ分析やAI、クラウド技術、プロジェクトマネジメントなどが含まれます。この標準により、企業は求める人材要件を明確にし、リスキリングや教育プログラムを効果的に展開できるようになります。
デジタルスキル標準は、推進する人材の役割や習得すべき知識・スキルを示し、それらを育成の仕組みに結び付けることで、リスキリングの促進や実践的な学びの場の創出、能力・スキルの見える化を可視化することを目的としています。また、経済産業省はこの定義に基づき、個人のキャリアアップや企業のDX実現を支援するための学習機会も提供しています。
DX推進スキル標準の人材類型
経済産業省の「DX推進スキル標準」では、DXを実現するための役割に応じた人材類型を次の5つに定義しています。
- ビジネスアーキテクト
- デザイナー
- ソフトウェアエンジニア
- サイバーセキュリティ
- データサイエンティスト
このスキル標準は、業界や企業規模を問わず活用できる汎用的な指針として設計されており、企業は自社のDXの進展状況に応じて必要な人材類型を優先的に導入することが推奨されています。また、この基準に基づき各人材に必要なスキルの可視化やリスキリングを効率的に進めることも可能です。
以下に、それぞれの詳しい役割を紹介します。
ビジネスアーキテクト
DXを推進するプロジェクト全体を統括し、目的設定から効果検証までを一貫して進める役割を担います。複数の関係者を調整しながら、事業変革を具体化するリーダー的な役割です。
デザイナー
顧客やユーザー視点を踏まえて製品やサービスを企画・デザインし、ビジネス価値を高める役割を担います。製品やサービスの方針策定からユーザーエクスペリエンス(UX)まで幅広く関与します。
ソフトウェアエンジニア
デジタル技術を活用したシステムやサービスの設計・実装を行う技術者です。DXの技術面を支える重要な役割であり、インフラ整備からサービス運用まで幅広く担当します。
サイバーセキュリティ
DX環境を守るために必要なセキュリティリスクへの対策を担います。デジタル基盤の安全性を確保し、ビジネスの継続性を支援します。
データサイエンティスト
データの収集と分析を通じてビジネス課題を解決する役割を担います。業務変革や新規事業の実現に必要なデータ基盤を整備・運用します。
それぞれの人材類型は独立した専門性を持ちながらも、相互に補完的な役割を果たし、協働することでDXを総合的に推進する構造を形成しています。
デジタル人材育成のプラットフォーム「マナビDX」
経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、デジタル知識・能力を身につけるための場として、ポータルサイト「マナビDX」を開設しました。ポータルサイトでは、デジタルリテラシーや専門的なスキルを誰でも学べるよう、無料・有料の講座を多様なテーマで提供しています。
マイナビDX公式サイト
講座は「入門」「基礎」「実践」などのレベルごとに整理され、学習テーマもAIやデータサイエンス、クラウド、IoTなど複数カテゴリに分かれています。
以下に、主なコンテンツを3つ紹介します。
講座検索と計画管理機能
利用者が目的に合った講座を見つけやすいように、分野やレベル別に絞り込み検索が可能です。また、ログインして講座を「お気に入り」登録したり、学習プランを作成して進捗を管理できる機能もあり、計画的な学びを支援します。
DXリテラシー標準とDX推進スキル標準
経済産業省が策定した「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」に沿って学習を進められます。リテラシー標準は全ビジネスパーソン向けの基礎知識を、推進スキル標準はDXをリードする専門的知識を学ぶことができます。
マナビDX Quest
マナビDX Questは、企業や地域の実際の課題を解決する実践的なケーススタディ教育プログラムです。参加者は企業の現場課題に基づいたデータ分析や技術検証などを学び、DXを推進するための実務力を養います。
第四次産業革命スキル習得講座認定制度
第四次産業革命スキル習得講座認定制度とは、経済産業省による社会人のデジタルスキル向上やリスキリングを支援することを目的とした教育訓練の認定制度です。この認定制度では、DXやIT分野での実践的なスキルを必要とする多様な技術分野が認定対象となっています。
経済産業省「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/reskillprograms/index.html
以下に第四次産業革命スキル習得講座認定制度の特徴を3つ紹介します。
第四次産業革命に関連する幅広い分野に対応
講座は、IT分野(クラウド、AI、データサイエンスなど)やIT利活用分野(自動車のモデルベース開発、自動運転、デジタル設計)など、第四次産業革命に関連する幅広い分野に対応しています。また、DXリーダーやビジネスアーキテクト、データサイエンティストなど、専門性に応じたリスキリングの機会を提供しています。
学習効果と継続性を重視したカリキュラム
講座では理論に加え、実践的なスキルを身につける内容が求められます。そのため単なる座学にとどまらず、演習やプロジェクト型学習を取り入れています。また、eラーニング対応や社会人が受講しやすいように、受講後に業務に直結する実践的なスキルを習得できるよう工夫されています。
教育訓練給付制度との連携
認定講座のうち、とくに厚生労働省が定める要件を満たすものについては、「教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)」の対象となり、受講料の補助を受けることができます。この連携により、社会人がよりキャリアアップやスキルアップを目指しやすくなります。
まとめ
経済産業省の定義によるDX人材とは、企業内でDXを推進し、ビジネスの変革や業務効率の向上を支えるスキルと知識を持つ人材です。DX人材は「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つの基準に基づき、企業全体でのデジタル理解を高める役割から、データサイエンティストやプロジェクトリーダーとして専門的にDXを担う役割まで多岐にわたります。これらの基準に沿った教育を提供するための「マナビDX」プラットフォームでは、スキルレベル別の講座や実践的な学習機会が提供され、企業や個人がDX推進に必要なスキル習得を効果的に進められるように支援をしています。