人事労務
2024.09.24
【人事向け】女性管理職とは? 女性活躍が求められる理由や女性管理職を増やすメリット、具体的な施策などを紹介
- #女性管理職
日本における女性の管理職登用は、長年にわたり議論されてきた課題です。政府や企業が女性の社会進出のために様々な施策に取り組んでいますが、依然としてその数は伸び悩んでいます。この記事では女性管理職を増やすメリットや障害となっている事柄、効果的な施策などついて詳しく紹介します。
女性活躍推進法による女性活躍の促進
2015年、政府は「女性活躍推進法」を制定し、企業や自治体が女性の活躍を促進するために必要な施策を策定、実行することを法律で義務づけました。この法律は女性が働きやすい環境を整備し、社会全体での女性の活躍を促進するためのものです。具体的には以下のような内容が含まれています。
- 行動計画の策定と公表
- 状況の把握と課題分析
- 進捗の評価と改善
- 従業員への周知
それぞれ詳しく見ていきましょう。
行動計画の策定と公表
従業員101人以上の企業は、女性の登用や職場環境の改善を目的とした行動計画を策定し、これを公表する義務があります。計画には女性管理職の割合や男女比など、具体的な数値目標を含める必要があります(※2022年4月の改正より、それまで努力義務とされていた従業員101から300人までの企業も対象となりました)。
状況の把握と課題分析
企業は女性の労働状況を詳細に把握し、組織内での課題を分析する必要があります。これには管理職に占める女性の割合や昇進機会の公平性などのデータ収集が含まれます。
進捗の評価と改善
企業は、定期的に行動計画の進捗を評価し、目標達成に向けて改善を行うことが求められています。これにより、企業は目標達成のための取り組みを継続的に強化することができます。
従業員への周知
策定された行動計画を社内外に公表し、全社員にその内容を周知徹底する必要があります。これにより、企業全体で女性活躍推進の取り組みが浸透することを目指します。
また上記以外に日本政府は、企業の管理職に占める女性の割合12%以上、25歳から44歳の女性の就業率82%以上、企業の行動計画策定率を2025年までに100%にするといった数値目標を掲げています。
参照:厚生労働省
女性の社会進出が求められる背景
日本政府が女性活躍を掲げた理由には、社会的、経済的な背景が深く関わっています。以下にその主な理由を詳しく説明します。
労働力不足の対策
日本は世界的に見ても急速な少子高齢化が進んでおり、労働力不足が深刻な問題となっています。労働人口の減少は経済成長に対する大きなリスクと言えます。その対策として、社会において女性が積極的に活躍できる環境整備が不可欠です。女性が労働力としてフルに参加することで、労働力不足を補い、経済の持続可能な成長を促進する狙いがあります。
経済の多様性と競争力の強化
ダイバーシティ(多様性)の推進は、経済の競争力を強化するために不可欠です。異なる性別、年齢、バックグラウンドを持つ人々が働くことで、企業はさまざまな視点やアイデアを取り入れることができます。これにより、イノベーションが生まれやすくなり、企業の競争力が向上すると考えられています。特に、女性が管理職や意思決定の場に進出することで、これまでにない新しい視点が企業運営に反映されることが期待されています。
男女平等と社会的公正の実現
日本は、男女平等を進める国際的な義務を負っており、国連の持続可能な開発目標(SDGs)においても「ジェンダー平等」が重要なテーマとされています。日本国内でも、女性が平等に社会に参加し、その能力を十分に発揮できる環境を整えることは、社会的公正を実現するための基本的な要素とされています。女性活躍を促進することは、こうした国際的な流れや国内の価値観に沿った取り組みといえます。
これらの理由から、日本政府は女性活躍を国策として掲げ、その推進に努めています。女性が社会でさらに活躍することで、経済成長、社会の公正、そして国際的な競争力の向上に寄与することが期待されています。
現状と課題
2024年5月に厚生労働省が公表した「女性活躍に関する調査」によると、2023年時点で企業の女性管理職比率は大企業で14.7%、中小企業で7.5%にとどまっています。女性の管理職登用が進んでいるとは言い難く、とくに中小企業での対応が課題となっています。また、行動計画を策定した大企業は90%以上に達していますが、企業の行動計画の実効性と育児・介護支援の不足が課題として挙げられています。
企業が策定した計画が実際の成果に結びついていないことが多く、具体的な取り組みが不足しています。また、中小企業では育児・介護支援が不十分で、女性がキャリアを継続しにくい環境が問題視されています。これらの課題を解決するためには、実行力の強化と支援制度の充実が必要です。
参照:厚生労働省
女性管理職を増やすメリット
女性管理職を増やすことは、企業にとって単なる義務ではなく、様々なメリットをもたらします。具体的には、以下のような効果が期待できます。
- イノベーションの促進
- 組織の柔軟性向上
- 人材の確保
- 企業の社会的評価向上
それぞれ詳しく見ていきましょう。
組織の柔軟性向上
異なるバックグラウンドや経験を持つ女性がリーダーシップを発揮することで、組織全体の柔軟性が向上し、変化に迅速に対応できるようになります。また、女性管理職の増加は、同じ女性社員の心理的安全性を高めるとともに、社内の風通しを良くし、社員のエンゲージメントを高める効果が期待できます。
イノベーションの促進
女性管理職が増えることで多様な視点が取り入れられ、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。男性比率の高い職場では、とくにこの傾向が強くなります。これにより、製品やサービスの開発が促進され、競争力が向上することが期待できます。
人材の確保
女性社員の活躍している企業は、同じ女性の求職者からの人気が高まります。これにより企業は多様で優秀な人材をより確保しやすくなります。とくに女性のキャリアパスが明確で、実際に昇進や育成の機会が整備されている企業は、次世代のリーダー育成においても有利となります。
企業の社会的評価向上
女性活躍を推進することは企業イメージの向上やブランド力の強化につながります。消費者や投資家は、ダイバーシティや社会的責任を重視する企業を評価する傾向にあります。女性活躍を積極的に進めることで、企業は社会的に責任ある存在としての評価を高め、結果としてビジネスチャンスの拡大や優秀な人材の獲得にもつながると期待されます。
女性管理職を増やすための施策
女性管理職を増やすためには、女性が管理職に昇進しやすい環境を整えるとともに、企業全体の多様性を高めることが重要です。具体的には以下のような4つの施策が考えられます。
- 育休・産休後の復職支援
- フレックスタイムやテレワークの導入
- キャリアパスの明確化
- 社内の意識改革
それぞれ詳しく見ていきましょう。
育休・産休後の復職支援
育児休業や産休から復帰する女性社員に対して、スムーズに職場に復帰できるよう支援する施策が求められます。具体的には、復職後のキャリア継続を支援する研修や相談窓口を設けることで、育休中にキャリアが途切れることなく、管理職への道を歩みやすくなります。
フレックスタイムやテレワークの導入
フレックスタイム制やテレワークの導入は、女性が育児と仕事を両立しやすくするための重要な施策といえます。時間や場所に縛られず柔軟に働ける環境が整えば、出産後も仕事を続けやすくなります。とくに管理職を目指す女性にとって、家庭とキャリアのバランスを取りやすくなるため、長期的なキャリア形成が可能になります。
キャリアパスの明確化
昇進基準や評価プロセスを透明化し、女性が公正に評価されるようにすることが重要です。これにより、女性が積極的に管理職を目指しやすくなります。同時に、女性管理職候補に対しても平等にリーダーシップ研修を提供し、マネジメントスキルの向上を図ります。
社内の意識改革
企業内にダイバーシティ推進チームを設置し、女性活躍を戦略的に進めるための施策を立案・実施します。チームは女性管理職の増加に向けた全社的な取り組みを推進し、成果をモニタリングします。また、全社員を対象にジェンダーに対する固定観念を払拭するための研修を行い、企業文化を変革することが求められます。
これらの施策を通して、女性が働きやすく、またキャリアを築き、リーダーシップを発揮できる職場環境を構築することが求められます。
まとめ
政府は2025年までに女性管理職の割合を増加させる目標を掲げ、企業に行動計画の策定と進捗の公開を義務付けています。女性管理職を増やすためには、企業がリーダーシップ育成や柔軟な働き方の推進、育休後の復職支援といった施策を実施することが重要です。これらの取り組みにより、女性のキャリア継続が促進され、組織の多様性と競争力が強化されることが期待されています。