エンプロイーサクセス

2024.08.08

従業員のエンゲージメントを向上させる方法とは? エンゲージメント向上・強化の取り組み、プロセスを解説

  • #エンプロイーサクセス
  • #人事労務
  • #従業員満足度
従業員のエンゲージメントを向上させる方法とは? エンゲージメント向上・強化の取り組み、プロセスを解説

従業員のエンゲージメントが高まると職場に活気があふれ、生産性向上や離職率低下にもつながりますが、エンゲージメントを高める方法がわからず困っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、従業員のエンゲージメントを向上させる8つの施策や、エンゲージメントの度合いを測定する方法について解説します。エンゲージメントが向上した事例も3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

従業員エンゲージメントの定義 

エンゲージメント(Engagement)とは、直訳すると「関与」や「積極的な参加」を意味します。ビジネスの場では、社員が仕事に対して情熱を持ち、組織の目標達成に貢献しようとする意欲がある状態のことを指します。企業と社員の結びつきとも言われるこのエンゲージメントは、職場に定着し、離職を防止し、生産性を向上させる重要な要素として重要視されています。

そのため、後に述べる「エンゲージメントサーベイ」を定期的に行い、自社の社員のエンゲージメント度合いを数値で測定するという試みも広く行われています。

エンゲージメントが高い状態とは

エンゲージメントの高さは、社員の仕事に対する意欲や組織への献身的姿勢に表れます。エンゲージメントの高い社員は、仕事の環境や労働条件に満足するとともに、会社の目標や価値観に共感し、自分の役割が組織にとって重要であると感じます。

また、同僚や上司とのコミュニケーションが円滑に行われ、良好なチームワークを築くことができます。結果的に、会社の成長に対して積極的に関与し、長期的なパフォーマンス向上に寄与する傾向があります。

一方でエンゲージメントが低い社員は、職場への関心が薄れ、生産性や士気が低下しがちな傾向にあるため注意が必要です。

エンゲージメントについては、下記の記事もご覧ください。
「エンゲージメントとは? 注目される従業員エンゲージメントについて解説」

従業員エンゲージメントが重要とされている背景

従業員エンゲージメントが重要とされている背景には、人材不足や働き方の多様化などが挙げられます。

まず、多くの業界で人手不足が深刻化し、優秀な人材を確保・定着させることが企業の大きな課題となっています。

また、リモートワークの普及など働き方が多様化する中で、従来の管理手法では従業員のモチベーションを維持しづらくなっており、組織に対する共感や帰属意識を強める施策が求められています。

さらに、職場のストレスやメンタルヘルスへの関心が高まり、社員の心理的な幸福感が企業のパフォーマンスに与える影響が認識されるようになりました。

このような背景から従業員エンゲージメントの向上が企業の持続的な成長にとって欠かせない要素として注目されるようになっています。

従業員のエンゲージメントを向上させるメリット

従業員エンゲージメントを向上させると、以下のようなメリットがあります。

  • 生産性が上がる
  • 離職率が低下する
  • 顧客満足度が上がる

順番に見ていきましょう。

生産性が上がる

働きがいのある会社になることで、職場に活気があふれ、生産性が上がります。会社に好印象を持った人が増えることで、進んで業務を遂行する雰囲気が醸成されるためです。

嫌々働いているという人たちより、働きがいを持って仕事をしている人たちが多いほうが、明るい雰囲気になり成果が出やすくなるのは必然でしょう。活気があふれることで、日々前向きに職場に通うことができ、生産性が上がり、離職率が低下します。

離職率が低下する

エンゲージメントが増して活気あふれる会社になれば、離職率が低下します。職場に愛着を抱いていれば、会社を辞めたいとは考えなくなるからです。

さらに、離職率が低下することで、欠員補充のための採用や育成が不要となり、人材採用・育成コストも低下します。

顧客満足度が上がる

エンゲージメントが高まって優秀な人材が定着すれば、サービスの質が上がります。会社のために貢献し働きたいと考える人が増えれば、顧客に対する対応も良いものとなり、顧客の会社に対する印象も良くなるでしょう。

従業員のエンゲージメントを向上させる方法

従業員のエンゲージメントを向上させるためには、具体的にどのようなことに取り組むとよいでしょうか。エンゲージメント向上のための施策を以下のとおり8つ紹介します。

  1. ビジョンや目標を従業員と共有する
  2. 適切な報酬・評価制度を導入する
  3. 上司のスキルを向上させる
  4. 研修やキャリア形成支援を実施する
  5. コミュニケーションを活発化させる仕組みを作る
  6. 働き方改革を推進する
  7. ワーク・ライフ・バランスを整える
  8. 承認・賞賛の文化をつくる

①ビジョンや目標を従業員と共有する

経営層の考える会社の未来を共有して、会社が進む方向を明確に認識してもらいます。会社の方向性に共感してもらうことで従業員に自発的に貢献してもらう狙いがあります。

「売上高や規模ではなく、身体に良い食品をお客様に届けることを第一目標とする」など、できるだけ具体的に説明しましょう。全員が思い描くビジョンにばらつきが生じないようにすることで、全社員が力を合わせて同じ方向に進めます。

②適切な報酬・評価制度を導入する

報酬・評価制度を見直して満足度向上を目指すのも良い方法です。自分の働きが正当に評価されていると感じると、社員のモチベーションが上がるため、やる気や働きがいに直結します。

仮にこれまで直属の上司の好みや感情が絡んだ評価であった場合、役職・職務ごとに評価基準を明確化するなど、客観的に評価できる仕組みを構築すれば、不満が出にくくなります。社員からの聴き取りを行うなどして、現状の制度のどこを見直すべきか検討しましょう。

また、報酬を見直す際は、福利厚生もあわせて検討できるとよいでしょう。手厚い福利厚生は、その会社で働くことへの満足感や貢献意欲につながります。

③上司のスキルを向上させる

リーダーシップを発揮できる上司がいると、従業員のエンゲージメントが向上します。また、上司が話を聞いて理解を示そうとしてくれると、部下のやる気につながります。

チーム内の人間関係で悩んだときに、じっくり時間をとって話を聞き、一緒に解決策を考えてくれる上司がいると信頼感が増すものです。上司のリーダーシップを、研修等を通じて強化することで、全社員のやる気向上につながる可能性があります。

部下の成長をサポートするという点では、リーダーシップとともにマネジメントの能力が問われるでしょう。目標設定や進捗管理を通じて部下の成長を促進し、効果的なフィードバックを提供することによって、部下が自己成長を実感しやすくなります。

マネジメントについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
「マネジメントとは? 担当者に求められるスキルや業務内容、マネジメント研修を解説」

さらに、上司のフィードバック能力を高めることも、従業員のエンゲージメントの向上につながります。たとえば、適切なタイミングで具体的なフィードバックを行うことで、社員は自分の強みや改善点を明確に理解し、自己成長を実感するようになります。

また、ポジティブなフィードバックが増えることで、社員のモチベーションが高まり、業務への取り組みが積極的になります。

④研修やキャリア形成支援を実施する

働きながら成長を感じられることは、やりがいにもつながります。「ここにいると成長できる」と感じさせることでエンゲージメントを高めます。

たとえば、メールのやり取りに関する研修を受けてからテキストコミュニケーションがスムーズになったと感じられたら、仕事のやる気が増すでしょう。研修やキャリア形成支援プログラムを増やし、社員のスキルアップに力を入れてみてはいかがでしょうか。

⑤コミュニケーションを活発化させる仕組みを作る

業務を円滑に進めるには、社内コミュニケーションがカギとなります。コミュニケーションを活発化させる仕組みを作れば、報連相の漏れがなくなり、業務効率が上がります。一例として、半年後には会社のコミュニケーションのあり方が変わるとされる「グッド&ニュー」というゲームを紹介します。

グッド&ニューは、アメリカの教育学者、ピーター・クライン氏が開発したコミュニケーション手法です。短期間に組織のメンバーを前向きに変えさせる方法として開発されました。

具体的な方法は次のとおりです。

  • 6人程度のチームを作り、1人にボールを持たせる
  • ボールを持った人は、24時間以内に起こった良いこともしくは新しいことを簡単に話す
  • 話し終わったらまわりの人は拍手をする
  • 次の人にボールを回す

これを毎日10分行うだけで社内の雰囲気が明るくなります。興味がある方は朝礼などに取り入れてみてください。

⑥働き方改革を推進し、ワーク・ライフ・バランスを整える

フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟に働ける環境を整備することで、退職を検討する人を減らす効果があります。さまざまな働き方を受容することで、子育てや介護などの事情から、これまでであれば会社を辞めざるを得なかった人たちが離職せず働き続けられるようになります。

たとえば、会社で6時間、帰宅後に家事をしてから2時間、といった形で働ける仕組みにすると、無理なく働ける人が増えるでしょう。働き方改革をすることで、社内のリソースをより活用できる可能性が広がります。

仕事とプライベートの時間が適切に調整されることで、社員は過度なストレスから解放され、心身ともに健康を保つことができます。これにより、仕事に対する意欲や集中力が高まり、業務への取り組みが一層積極的になります。

⑦福利厚生を充実させる

手厚い福利厚生は、その会社で働くことへの満足感や貢献意欲につながります。たとえば、家賃補助があることで良好な住環境で暮らせたり、スポーツジムを安価に利用できたりすると、心身の健康も保て、その会社で長く働き続ける動機ともなるでしょう。予算を割けるようであれば、福利厚生を充実させることを検討してみましょう。

⑧承認・賞賛の文化をつくる

社員が自分の貢献や成果が組織に認められていると感じると、仕事に対する積極性が増し、組織への愛着が深まります。そのため、組織全体で承認・賞賛する文化をつくることが重要です。

社員に対し感謝の意を示したり賞賛したりすることはレコグニションとも言い、これは長期的なエンゲージメント維持に有効です。

たとえば、業務を効率的に遂行したり、チームに貢献したりした社員に対して、上司や同僚から感謝の言葉をかけたり、社内で賞賛したりすることがレコグニションにあたり、社員が会社やチームに対して「認められている」「信頼されている」という感覚を強めることで、エンゲージメントが向上することが期待できます。

レコグニションについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
「レコグニションとは? 社員の定着率向上などのメリットや導入方法、導入事例などを紹介」

従業員のエンゲージメントが向上した事例

実際に従業員エンゲージメントの向上に取り組み、会社に好影響をもたらした例を3つ紹介します。

エンゲージメントも顧客ロイヤリティもアップ

従業員エンゲージメントと顧客ロイヤリティは相関関係にあると考え、社員のエンゲージメントを高める施策を行った企業があります。もともと年1回のエンゲージメントサーベイを行っていましたが、月1回に増やし、それをもとに、より一層力を入れた施策を行うことにしました。

たとえば、以前成約に至った顧客データを参考にした営業の仕組みを構築したり、現場が施策案を積極的に出せる環境づくりを行ったりし、会社を好きになって働きがいを感じてもらうために、社員の声に耳を傾ける施策を多数展開しました。

その結果、2020年4月のサーベイの時点で、回答率が87%と過去最高になり、エンゲージメントスコアも10ポイント改善しました。顧客ロイヤリティも80%前後という高い満足度を誇り続けています。

離職率が33%低下

とある建設機械メーカーでは次のような取り組みを実施して、エンゲージメント向上を達成しました。

  • エンゲージメントサーベイの実施
  • 公正・適正な評価/社員の能力・業績を正しく評価した人事制度
  • 自律的なキャリア形成の支援
  • 多様な能力開発機会の提供

以上の取り組みの結果、以前は33であったエンゲージメントスコアが70に上昇し、離職率は33%も低下しました。

世界一従業員エンゲージメントの高い企業

最後に、従業員エンゲージメントの高い企業として世界的に有名な企業の例を紹介します。その企業では、社員は会社と対等であり尊重される存在であるという意味を込めて全員を「パートナー」と呼んでいます。

さらに、エンゲージメントを高めるために以下の取り組みを行いました。

  • 社員の意見を積極的に取り入れる仕組みを導入
  • 店長と社員の定期的な対話の場を設ける
  • 社員の成長を後押しする研修プログラムを充実させる

結果、会社に好感を覚える社員が増え、離職率が業界平均の半分以下になりました。

従業員のエンゲージメント向上施策に取り組む際の注意点

従業員エンゲージメントを向上させるとさまざまなメリットにつながりますが、施策に取り組む際、気をつけたい点があります。以下、3つの注意点をお伝えします。

  • 6割の中間層をターゲットにする
  • 複数の施策を継続的に行う
  • PDCAサイクルを確立する

6割の中間層をターゲットにする

全社員の約6割を占める中間層にいる人のエンゲージメントを高めることが重要です。会社の中で全体の2割が率先して意欲的に働き、6割が指示に従って働き、残りの2割が貢献度が低くなる傾向があるという法則(262の法則)があります。

中間層にあたる6割は、少し背中を押すことで上位2割の積極層と同じ働きをしてくれる可能性がある層です。この6割の社員が上位と下位、どちらに寄るかによって組織の強さは大きく異なってくるため、この層のエンゲージメントを高めることが大切です。

複数の施策を継続的に行う

一つの手段だけで社員との信頼関係を構築しエンゲージメントを高めるのは非常に困難です。自社の現状の課題や目指すべき理想の組織像に合わせて、複数の施策を企画・運用しましょう。

たとえば、理念を浸透させるために社長が話す機会を増やしたり、現場の声を拾うために上司と部下が話す機会を増やしたりします。組織の「今」に合わせて継続的に施策を企画・運用することが重要です。

PDCAサイクルを確立する

組織の現状に合わせて施策を続けるために、常に効果検証・改善を行う必要があります。効果検証には、社員にアンケートをとるエンゲージメントサーベイを行うのが一般的です。

ただし、すべての施策が成功し、百発百中でエンゲージメントを高め続けられるとは限りません。意図した効果につながらなかった場合には、原因を探り軌道修正できるようにしておくことが大切です。施策を立てて実行し、検証・改善し続けることで、徐々にエンゲージメント向上を目指せるのです。

従業員エンゲージメントの測定方法

エンゲージメントが重視される中で、自社の社員のエンゲージメントの度合いを測定する試みも広く行われるようになっています。これは「エンゲージメントサーベイ」と呼ばれ、社員のモチベーションや会社への愛着心、貢献意欲などを数値化して把握し、組織の改善につなげることを目的として行われます。

一般的にエンゲージメントサーベイは、アンケート形式で行われ、質問の例として以下のようなものがあります。

・自分の仕事にやりがいを感じていますか?
・会社の目標に共感し、それに向かって努力していると感じていますか?
・自分の意見はチームや組織で尊重されていると感じていますか?

従業員満足度調査との違い

エンゲージメントサーベイと類似した調査として従業員満足度調査がありますが、両者の違いは、焦点の違いにあります。従業員満足度調査は、主に福利厚生や職場環境など、社員の働きやすさや満足度を測ることに主眼が置かれています。それに対しエンゲージメントサーベイは、仕事への情熱や貢献度、どれだけ組織に対して積極的に関与しているかなど、社員の組織や仕事に対する結びつきの度合いを測定します。

エンゲージメントサーベイの種類

エンゲージメントサーベイの種類として、「パルスサーベイ」と「センサス」があります。それぞれ、以下のような特徴があります。

パルスサーベイ:短期間で頻繁に実施される調査で、従業員のエンゲージメントや意識の変化をタイムリーに把握します。迅速なフィードバックが可能で、改善施策の効果測定に役立ちます。

センサス:年に1〜2回などの定期的かつ大規模な調査で、全社員を対象に行います。詳細なデータを取得し、組織全体の状況や長期的なトレンドを分析するのに適しています。

エンゲージメントサーベイの例|eNPS

エンゲージメントを測る指標の一つに、eNPS(Employee Net Promoter Score)があります。これは、商品やサービスに対する顧客の評価を測るNPS(Net Promoter Score)の従業員版と捉えることができます。

スコアの計算方法はシンプルで、「あなたは現在の職場を親しい友人や知人にどの程度すすめたいと思いますか?」という質問に対して、0〜10の11段階で尋ね、推奨者(9〜10点)の割合から、批判者(0〜6点)の割合を引いた数値がeNPSとなります(なお、7〜8点は中立者に分類されます)。

eNPSにおいては、自らの職場を親しい友人・知人にすすめたいかを考えるため、よりシビアに会社に対してのジャッジが下される傾向にあります。

近年、採用時のミスマッチを防ぐ観点から、自社の社員が人材を紹介する「リファラル採用」に力を入れている企業も増えていますが、eNPSが高い企業ほどリファラル採用の成功率も高まると言えます。

まとめ

この記事では、従業員エンゲージメントを高める施策や具体例、施策を行う際の注意点、さらにエンゲージメントの測定方法を紹介しました。エンゲージメントの高い会社になれば、社員の働きがいが増すだけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。エンゲージメントを高めることにより社内外に良い影響が生まれるため、積極的に向上施策を講じていきましょう。

この記事を担当した人

PeopleX コンテンツグループ

人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。

これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。

株式会社PeopleXについて
エンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork」の開発・運営をはじめとした、新しい時代に適合したHR事業を幅広く展開する総合HRカンパニーです。

PeopleWorkの資料を無料でダウンロードいただけます

PeopleWorkの資料

下記について詳しく解説しています

  • 3分で分かる「PeopleWork」
  • 活躍人材を生み出す仕組み
  • 料金プランについて

PeopleWorkの
導入をお考えの方へ

CONTACT

導入に関するお問い合わせ

導入に関してご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

ESTIMATION

見積もりを依頼する

お客さまのご状況に合わせて、最適なプランを担当者よりご提案します。

DOWNLOADS

お役立ち資料ダウンロード

社内説明等に活用いただける各種製品資料を無料でダウンロードいただけます。