人事労務

2025.04.08

人事考課とは? 人事評価との違いや目的、手法、注意点を解説

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人事考課とは? 人事評価との違いや目的、手法、注意点を解説

社員の実績や態度、能力などを評価する人事考課制度は、社員の処遇の決定に利用されるものであり、公平性や透明性、客観性をもって実施されることが求められます。

この記事では、人事考課の概要を確認し、人事考課で取られる評価基準、効果的な評価手法を解説します。人事考課を行う際に押さえておくべき注意点もお伝えしますので、適切な人事考課の実施にあたり、ぜひ参考にしてください。

人事考課と人事評価の違い

人事考課とは、社員の実績や態度、能力などを会社で定めた基準に基づいて定期的に評価する制度のことです。結果は社員の給与や昇格・昇進を判断するために活用されます。

一方、人事評価は、社員の育成や能力開発、異動などに関する評価も含むものです。そのため、人事評価は人事考課と比べてより広義な言葉といえるでしょう。

このように、人事評価と人事考課には評価の範囲に違いがあるといえます。しかし、実際には人事評価と人事考課を同義として使用しているケースも少なくありません。

人事考課の目的

人事考課は、主に以下の目的で行われます。

  • 公平な人事査定の実施
  • 社員のモチベーション向上
  • 経営方針や事業戦略の共有

それぞれの内容を詳しく解説します。

公平な人事査定の実施

社員の給与や賞与、昇格・昇進といった処遇は、会社が定めた評価基準によって決まります。しかし、不明確・不透明な評価体制の下では、評価者の主観や好みで評価が決まるおそれがあるでしょう。

不透明感や不公平感のある評価は、社員の納得感やモチベーションの低下を招きます。会社の評価基準に基づいた公平な評価を実施するためにも、人事考課は必要です。

社員のモチベーション向上

社員のモチベーション向上も、人事考課の目的のひとつです。定期的に公平な人事考課が実施されることは、社員に以下の効果を生みます。

  • 業務に前向きに取り組めるようになる
  • 積極的にスキルアップに取り組めるようになる

定期的に評価される機会があれば、少しでも良い評価を得られるよう業務に前向きに取り組むことが期待できます。また、資格の取得といったスキルアップに積極的に取り組む社員もいるでしょう。

社員のモチベーションやスキルの向上は、ひいては企業の業績向上にもつながると考えられます。

経営方針や事業戦略の共有

会社は、会社の目標や価値観、経営方針、事業戦略などに基づいて評価基準を定め、これに則って人事考課を実施します。

これにより、経営方針や事業戦略などを共有し、会社と社員が同じ方向を向いて業務に取り組めるようになります。また、社員の意思が統一されることで、業務の効率化による生産性の向上も期待できるでしょう。

人事考課を行う際の3つの評価基準

人事考課では、一般的に以下の3点を軸に評価を実施します。

  • 業績考課
  • 能力考課
  • 情意考課

実施にあたっては、これら3つのポイントをバランスよく評価することが重要です。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

業績考課

業績考課とは、一定期間における目標の達成度合いや成果などによる評価のことです。

業績考課では一般的に、年度の始まりに社員一人ひとりが目標を立て、年度末にその年度の成績や達成度をチェックします。取り組む業務量や業務内容、設定される目標は社員によって異なるため、評価基準が個々に設けられる点が業績考課の特徴といえるでしょう。

業績考課は、実際に成し遂げた成果や達成度合いといったデータをもとに実施されることから、評価者の主観が入りにくく、客観的な評価が可能です。

営業やマーケティングといった数値による評価がしやすい業務がある一方で、経理や人事、総務といったバックオフィス業務は、目標の設定が難しいため、業績考課の実施も難しいとされます。このような部門では、あらかじめ評価者が評価基準を設け、明確にしておくことが重要です。

能力考課

能力考課とは、社員が持っている能力に対する評価のことです。

業績考課は客観的な評価ができる方法の一つですが、業務遂行の過程で突発的・緊急的な事態が発生したときには、適切な評価ができないことがありえます。そのような場合でも、能力考課では社員の能力を評価することが可能で、重要な役割を果たします。

能力考課で評価する能力は、以下の3つです。

  • 保有能力
  • 発揮能力
  • 潜在能力

保有能力とは、社員が持つ能力のことで、その能力を最大限に発揮する力が発揮能力です。

潜在能力とは、現時点では顕在化していないものの、今後発揮される可能性がある能力のことです。潜在能力は、会社の評価対象になる場合と対象から外される場合があります。

情意考課

情意考課とは、積極性や協調性、規律性など業務への向き合い方に対する評価のことです。数値で評価する業績考課とは異なり、評価者の主観が入りやすい点が特徴といえます。

偏った評価にならないためには、以下のポイントを押さえておくことが肝心です。

  • 評価基準を明確にする
  • 行動結果を見る
  • 複数の評価者が査定する

情意考課を実施する際には、あらかじめ評価基準を明確にしておくことで、属人的な評価を防止できます。また、情意考課は数値による判断が難しいとはいえ、たとえば遅刻の回数などの行動結果を見れば、ある程度客観的な評価が可能です。

情意考課を実施するのであれば、特定の上司だけでなく、同僚や部下など複数の関係者から評価を集めることが重要です。これにより、多方面からの総合的な評価を実現できるでしょう。

人事考課に効果的な4つの評価手法

人事考課を実施する際は、以下の4つの評価手法を用いることが効果的です。

  • MBO(目標管理)
  • コンピテンシー評価
  • バリュー評価
  • 360度評価

それぞれの特徴を確認し、自社に合ったものを選びましょう。

MBO(目標管理)

MBO(Management by Objectives:目標管理)とは、経済学者のピーター・ドラッカー氏が1954年に提唱した組織マネジメントの考え方のことです。

上司が一方的に目標を設定するのではなく、社員が自分自身で目標を立て、一定期間が経過した後に達成度を評価します。

MBOは、透明性が高く、わかりやすい点や、自主性が育つといった点が特徴です。一方で、簡単すぎる目標設定や、成果のみを追い求める姿勢には注意が必要です。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、高い成果を上げているハイパフォーマーの行動特性(コンピテンシー)を基準として評価する手法のことです。「評価基準がわかりやすく社員が実践しやすい」「足りていないスキルを明確にしやすい」といった特徴があります。

コンピテンシー評価を導入するには、モデルとなる人物像の分析が必要です。そのため、導入までに時間や労力がかかる点には留意する必要があります。

バリュー評価

バリュー評価とは、企業が求める価値観(バリュー)に沿った行動ができているかを基準とする評価手法のことです。

バリュー評価には、企業の価値観の共有、離職率の低下、自主性の育成が期待できるといった特徴があります。企業の価値観をもとに評価が実施されるため、とくに企業文化の共有を重視したい会社で多く活用されます。

バリュー評価の注意点は、評価基準が不明確になりやすい点です。透明性が高く、社員が納得しやすい評価を行うには、あらかじめ基準を決め、社員に共有しておくことが重要です。

360度評価

360度評価とは、評価者となる上司だけでなく、同僚や部下など複数の人物が評価を実施する手法のことです。1人の意見ではなく複数の意見が反映されるため、納得感を得やすいという特徴があります。

360度評価は、対象者自身が周りからどのように見られているかを知ることができる点もポイントです。周りからの評価を今後の業務に活かすことで、課題の改善が期待できます。

360度評価では、評価スキルが高くない人も評価者となりえます。そのため、主観が入ったり評価がばらついたりする可能性がある点には注意が必要です。

人事考課の実施にあたり押さえておくべき注意点

人事考課を有効なものにするには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。ここでは、人事考課の実施における3つの注意点を解説します。

評価エラーが生じる可能性がある

人事考課を行う際の注意点の1つ目は、評価エラーが生じる可能性がある点です。評価エラーとは、評価者の主観が入ることで評価に偏りが生じることを指します。

想定される主な評価エラーには以下のものがあります。

評価エラーの種類概要
ハロー効果突出した特徴があることで、他の評価項目も影響を受ける
中心化傾向どの対象者にも、平均的な評価を付けてしまう
寛大化傾向どの対象者にも、甘い評価をしてしまう
逆算化傾向すでに決まっている総合評価をもとに、各評価項目の帳尻を合わせる
論理誤差評価者が論理的に考えるあまり、独立した項目について推論で評価してしまう
対比誤差対象者と他の社員や評価者とを比較した評価をしてしまう
期末誤差評価の期末に発生した事象の印象を強く受けて評価してしまう

評価エラーは、誰でも起こす可能性があります。評価エラーの要因を念頭に置くことで、エラーの発生を抑えることが肝心です。

丁寧なフィードバックを心がける

人事考課を行う際は、丁寧なフィードバックを心がけることが必要です。対象者一人ひとりに丁寧なフィードバックをすることで、モチベーションアップや成長につながります。

フィードバックでは、評価者からの一方的な評価ではなく、対象者の意見も聴くことが重要です。また、良くない部分だけでなく成果があった部分も併せて伝えましょう。

評価を有効なものにするには、小まめに面談を実施し日ごろからコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことも重要です。

評価者のスキルも必要

適正な人事考課を実施するには、評価者が評価スキルを有することが求められます。

人事考課は、評価者がいかに主観を持ち込むことなく、客観的で透明性の高い評価を実施できるかが重要です。主観を排除した評価を行うには、評価者のスキルが必要であり、人事考課を実施する社員に対し研修を行うことで、評価体制の強化が図れるでしょう。

まとめ

人事考課は、社員の実績や業務への取り組み方、能力などを評価する制度のことです。人事評価と同義で使われることも多くありますが、厳密にいえば人事考課は給与査定や昇格・昇進などに関する評価のみを指します。

人事考課を実施することで、公平で透明性のある評価が期待できるでしょう。そのほか、社員のモチベーションアップや経営戦略および企業文化の共有も、人事考課を実施する目的として挙げられます。

人事考課には、いくつかの手法があります。それぞれの特徴をしっかり確認した上で自社に合ったものを選択し、効果的な人事評価を実現しましょう。

この記事を担当した人

PeopleX コンテンツグループ

人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。

これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。

株式会社PeopleXについて
エンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork」の開発・運営をはじめとした、新しい時代に適合したHR事業を幅広く展開する総合HRカンパニーです。

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